#199 投票率を上げるには? 世論調査からヒントを探ります
世論調査部(視聴者調査)渡辺洋子
7月21日は、参議院選挙の投票日でした。
投票率は48.80%と50%を下回り、
戦後最低を記録した1995年(44.52%)に続く低さでした。
各社の報道では、政治不信の表れや台風による大雨の影響などが指摘されています。
今回、投票率の低さが話題になりましたが、
50%を下回ったのは久しぶりではあるものの、
実際のところは、1992年以降30年近くにわたって、60%に届かないという状況が続いています。
「なぜ、人々は投票に行かないのか?」
そのヒントを得られるかもしれないと、
2018年12月に行った「ニュースメディア接触と政治意識調査」の結果をみてみました。
この調査では、「あなたは、選挙のとき投票に行きますか」という
ふだんの投票姿勢についての質問をしています。
世論調査に回答してくださる方は投票にも積極的なのか、
「どんな選挙でも必ず投票に行く」「だいたい投票に行くようにしている」人をあわせると8割近くになり、
最近の投票率の傾向より、かなり高くなっています。
この結果が直接、今回の投票結果に結びつくわけではありませんが、
ふだんの投票姿勢が、政治に対する考え方とどのような関係があるのか、
投票姿勢と政治観の関連をみてみたいと思います。
〔政治家〕
まずは、政治家に対する考え方です。
下のグラフは、
「国民の生活や国の将来を真剣に考えている政治家が少ない」について、
「そう思う」※と答えた人の割合を示したものです。
先ほどの「あなたは、選挙のとき投票に行きますか」という質問への
回答別に比べてみました。
投票姿勢に関わらず、大多数が
「国民の生活や国の将来を真剣に考えている政治家が少ない」と、
思っていることがわかります。
政治家に不満があるから投票へ行かない、ということではないようです。
〔政治と自分の生活〕
つづいて、政治が自分の生活と関係していると思っているか、について尋ねた結果です。
「政治は自分の生活に関係ない」と思う人は、
「どんな選挙でも必ず投票に行く」「だいたい投票に行くようにしている」人では、
1割台にとどまっています。
ところが、「特に必要があると思ったときだけ投票に行く」人では3割弱、
「投票には行かない」人では4割と、
投票に行かない人の方が、「政治が自分の生活に関係ない」と思っており、
政治と自分の生活との距離感が、投票への姿勢と関連していることがわかります。
〔選挙への効用感〕
さらに、「自分ひとりぐらい投票しなくても、選挙の結果に大きな影響はない」という、
自分の1票が選挙結果に与える影響力に対する感覚についての質問です。
「自分ひとりぐらい投票しなくても、選挙の結果に大きな影響はない」と思う人は、
「どんな選挙でも必ず投票に行く」人では2割でした。
それに対して、「投票には行かない」という人ではなんと9割!
自分の投票行動が、選挙結果に対して影響を持つ、と考えている人は投票へ行き、
自分が投票してもしなくても影響はない、と考えている人は投票へ行かない、
ということがくっきりと見えました。
若い人たちの投票率が低いことが取り沙汰されますが、
この投票への感覚を年層別にみると、
「自分ひとりぐらい投票しなくても、選挙の結果に大きな影響はない」と考える人は、
やはり若いほど多くなっています。
こうした投票への意識が、若い人を投票から遠ざける一因になっていると考えられます。
自分の投じた1票が、選挙結果を左右する
このように多くの人が感じるためには、どのようにすればよいでしょうか。
調査では、ふだん利用しているメディアやどんなニュースを見ているのかなど、
ほかにも多くの事がらを尋ねています。
様々な角度から分析を進め、投票を呼び掛ける上でのヒントをさらに探りたいと思います。
今回ご紹介した「ニュースメディア接触と政治意識調査」については、
『放送研究と調査』(2019年6月号)で、「ニュースメディアの多様化は政治的態度に違いをもたらすのか」と題し、選挙に限らず、広く政治意識とニュース接触との関連を分析した結果を報告しています。
ご関心がありましたら、是非ごらんください。