文研ブログ

2019年7月23日

調査あれこれ 2019年07月23日 (火)

#198 小学校でのタブレット端末の利用は進むのか?

メディア研究部(番組研究)宇治橋祐之


令和元年6月は、学校教育の情報化に関する大きな動きが続きました。

まず6月25日に 文部科学省から「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」 1) が公表されました。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続くSociety5.0の時代に向けて、学校教育の現場でもAIやAR・VRなどの先端技術と教育ビッグデータの活用を進めること、そのために学校ICT環境を整備するという方針を示しています。具体的にはデジタルテレビなどの大型提示装置やタブレット型などの学習者用端末の整備、そして通信ネットワークの充実・強化が示されています。

さらに経済産業省からも同じ6月25日に「未来の教室ビジョン」 2) が公表されています。Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)にArt(芸術)を加え、現実社会の問題を解決するために統合的に学習する「学びのSTEAM化」、そして「学びの自立化・個別最適化」、「新しい学習基盤の整備」を3本柱としています。

教育に関わるビジョンをなぜ経済産業省が?と思われるかもしれませんが、学校教育の情報化にはAIや動画、オンライン会話等のデジタル技術を活用した教育技法であるEdTech(エドテック)が関わるので、経済産業省もこうした提言をしているのです。

経済産業省だけではありません。情報通信に関わる施策を担当する総務省でも「教育の情報化の推進」 3) を進めています。教育の内容については文部科学省が担当しますが、教育の情報化になると、文部科学省、経済産業省、総務省が関わってくるのです。

そして6月28日にはこうした施策を進めることが「学校教育の情報化の推進に関する法律」 4) として公布・施行されました。学校教育の情報化は大きな節目を迎えているといえます。


さて、こうしたビジョンが示され、施策が進められる中、学校現場の実態や先生たちの意識はどうなっているのでしょうか?

放送文化研究所では、教室のメディア環境や学校放送番組などのさまざまなメディアがどのように授業で利用されているのかを継続して調査しています。昨年10月から12月にかけては、「NHK小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」を実施しました。調査をお願いした全国の小学校の先生の7割近くの方からご回答いただきました。本当にありがとうございます。

小学校の教室にはデジタルテレビやタブレット端末がどのくらい整備されているのか、そして実際の授業ではどの程度使われているのか、そうした機器ではどんな映像が利用されているのか、子どもたちはどの程度タブレット端末を使っているのか。こうした教室でのメディア利用の実態を、「放送研究と調査」6月号『進むタブレット端末の利用と学習におけるメディア利用の可能性~2018年度「NHK小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」から~』としてまとめました。

イラストに示したような、教師が大型モニターを使って授業するだけでなく、子どもたちが1人1台のタブレット端末で学習する時代にはどんなメディアが必要なのでしょうか。教育や子どもに関わる方以外にもぜひ読んでいただければと思います。


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1) 文部科学省「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」     http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm

2) 経済産業省「未来の教室ビジョン」
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190625002/20190625002.html

3) 総務省「教育の情報化の推進」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/index.html

4) 学校教育の情報化の推進に関する法律
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1418577.htm