文研ブログ

2019年4月24日

おススメの1本 2019年04月24日 (水)

#183 平成時代の「放送研究」あれこれ ~放送文化研究所・30年間の論文・リポートから~ ②「平成の皇室観~『即位20年 皇室に関する意識調査』から~」(平成21年)

メディア研究部(メディア動向) 柳澤伊佐男

NHK放送文化研究所(文研)が手掛けた平成30年間の調査研究について振り返るシリーズ、2回目は、平成21年(2009年)に行われた「即位20年 皇室に関する意識調査」についてご紹介します。

この世論調査は、天皇の即位20年というタイミングをとらえ、平成21年10月30日からの3日間、全国の20歳以上の男女を対象に、電話法(RDD追跡法)で行われました。NHK社会部との共同調査で、調査対象は3,313人。このうちの62%にあたる2,043人から回答を得ています。調査の目的は、「皇室への関心・感情や、皇室との距離、皇位継承のあり方などについての意識を探ること」で、その結果が、「即位の礼」20年にあたる同年11月12日のニュースで報道されました。詳細は、翌年(2010年)の『放送研究と調査』2月号に掲載されています。

調査結果の一部をご紹介します。天皇が憲法で定められた象徴としての役割を果たしていると思うかを尋ねたところ、▼「十分に果たしている」と答えた人が全体の48%、▼「ある程度果たしている」37%、▼「あまり果たしていない」8%、▼「全く果たしていない」2%で、「果たしている」と答えた人の割合は85%に上りました。象徴としての役割を「十分に果たしている」と評価した人は、男性・女性ともに年齢が高くなるほど多くなっていました。

また、皇室に親しみを感じるかとの問いに対して▼「とても親しみを感じている」と答えた人が16%、▼「ある程度親しみを感じている」46%、▼「あまり親しみを感じていない」29%、▼「全く親しみを感じていない」9%でした。

調査は10年前に行われたものですが、当時から、多くの国民が、今の天皇は憲法が定める象徴としての役割を果たしていると考えていたことや皇室に親しみの感情を抱いていたことがわかり、大いに興味を持ちました。


「天皇に対する感情」は、文研が行っている「日本人の意識」調査の中でも尋ねています。平成30年(2018年)の調査では、▼「尊敬の念を持っている《尊敬》」と答えた人が全体の41%、▼「好感を持っている《好感》」36%、▼「特に何とも感じていない《無感情》」22%で、▼「反感を持っている《反感》」0%(0.2%)でした。

こちらの世論調査は、昭和48年(1973年)から5年ごとに実施されていますが、昭和の時代は、《無感情》と答えた人が常に40%を超え、最も多い回答でした。それが、平成になると、《好感》が大幅に増え、平成25年(2013年)の調査から、《尊敬》や《好感》が《無感情》を上回るようになっています。

私は平成の「国体」や「植樹祭」に出席された両陛下の取材を担当したことがあります。そうした「三大行幸啓」(もうひとつは「全国豊かな海づくり大会」)だけでなく、災害の被災地を訪問された際も何回か取材しました。画面を通してですが、南太平洋の島々で戦没者を慰霊するお姿も強く印象に残っています。こうした象徴としてのお務めを伝えてきたことが、平成の「皇室観」につながっているのでしょうか。

では、新しい時代の「皇室観」は、どうなるのでしょう。「令和」の時代に行われる世論調査を通して考えてみたいと思います。

※紹介した論文は、放送文化研究所のホームページに掲載されています(「日本人の意識」の論文は2003年の調査以降)。
冊子でご覧になりたい場合は、国会図書館やお住まいの都道府県立図書館のサイト等で検索・確認していただくか、NHK放送博物館(東京都港区愛宕2-1-1)でも、ご覧いただけます。