文研ブログ

2016年9月 9日

ことばのはなし 2016年09月09日 (金)

#43 反響、続々!『NHK日本語発音アクセント新辞典』

メディア研究部(放送用語・表現) 滝島雅子

18年ぶりに大改訂されたアクセント辞典『NHK日本語発音アクセント新辞典』(以降、『SJT』)が刊行されてから4か月がたとうとしています。
お使いいただいていますでしょうか?

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いろんなことが新しくなったこのピンクの辞書が世の中でどんなふうに受け入れられるのか、子どもを一人立ちさせたあとの親のような気持ちで、ドキドキしながら見守ってきましたが、おかげさまでユーザーの皆さんからたくさんの反響がありました。
ありがとうございます!
ツイッターのメッセージからいくつか拾ってみますと・・・
 「アクセント記号が変わったんですね!」
 「前の棒カギ式のほうが良かった~」
混乱させてしまってごめんなさい!アクセント記号が変わり驚かれた方も多いようですね。そうなんです。今回の大改訂の最大のポイントは、何といっても「アクセント記号の刷新」なんです。これまでの棒カギ式から、赤色で音の下がり目を示す方式に変わりました。
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慣れ親しんだ表記から新しい表記に変わることに、抵抗感がある方も多いと思います。しかし、自然な音調で発音しようとするときは、「どこが低い部分でどこが高い部分か」ということよりも、「どこで大きく下がるか(あるいは大きく下がるところがないのか)」ということに注意を払うのがいちばん大切だという考えから、この方式を採用しました。詳しくは、『SJT』の巻末付録に掲載されている「解説・資料編」(付録p.7)をご覧ください。また、『放送研究と調査』(2016年7月号)の論文「18年ぶりの改訂で誕生『NHK日本語発音アクセント新辞典』~アクセント記号や見出しの立て方も一新~」もぜひお読みください。

 「色がスタイリッシュすぎる!」
 「ピンクのきらめきがすてき!」

これまでにない「表紙の色」への反応も多数ありました!ありがとうございます。今回の『SJT』の表紙の色は、まさかの「ピンク」で、しかも「ラメ」! 編集スタッフに若い女性が多いからでは? とも一部でささやかれましたが、決してそういうことではなく、一応理由があります。
放送現場で、放送に使うことばの問題を考えるときの必須資料としては、以下の3つがあります(ニュースの部署には必ず置いてあります)。
 ①『NHK漢字表記辞典』…放送上、漢字などの表記をどうするかのルールを示した辞書
 ②『NHKことばのハンドブック第2版』…放送上のことばのルールを解説した参考書
 ③『NHK日本語発音アクセント辞典』…発音・アクセントを調べる辞典
それぞれの表紙の色は?というと、①は「水色」、②は「オレンジ色」、そして③、これまでの1998年版では「緑色」でした。そこに新しく加わる『SJT』は、緊急報道など時間がない放送現場では、誰にでもすぐわかるインパクトのある色である必要がありました。つまり「あの○○色の辞書」と言ったとき共通認識が得られる色…ということで、さまざまな辞書をあたり、どの辞書とも、かぶらない色ということで「ラメピンク」になったというわけなんです。並べてみると、手前みそですが、独自の存在感があってなかなかいいでしょう?

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放送現場以外の皆さんにも、「ピンクの辞典」として親しんでもらえたらうれしいです(よからぬ誤解を与えない言い方としては、なるべく「ピンク辞典」とは言わずに、間に「の」を入れるのがお薦めですが…)。

そして反響の中には、以下のような声も…。
 「巻末の数字のアクセントはすばらしい!」
 「数詞のアクセントは細かく載っていて大変よい」
よくぞ気づいてくださいました! 今回の『SJT』は、ページ数が大幅に増えましたが、その理由としては、収録語数(本編)が1998年版のおよそ6万9,000語から7万5,000語に増えたのに加え、巻末付録の解説・資料も充実させたということがあります。その付録の多くを占めるのが「数詞+助数詞」の発音・アクセントのページです。

「3羽」や「15分」など、数詞に「ものや事柄を数えることば」(助数詞や単位など)が付いた場合にどのように読むかは、特にアナウンサーにとっては切実な問題ですが、今回、現場からの熱い要望に応えて、20までの数詞の発音・アクセントを個別に示したほか、よく使う「助数詞や単位」については、「21~99、100、1000、10000」に関しても掲載しました。ぜひご活用いただければと思います。

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『SJT』版 巻末付録P198

ところで皆さんは「1円」をどのように言いますか。アクセントは①[イチエン ̄](平板型)? ②[イチ\エン](中高型)? 伝統的には①ですが、今このアクセントが②にシフトしつつあります。2013年5月に、アナウンサーを対象に行った調査では、[イチエン ̄]のように平板型を支持する人が9割近くを占める一方で、[イチ\エン]のように中高型を支持する人も6割を超えていました。

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今回の『SJT』では、こうした変化も考慮し、「数詞+円」のアクセントに、第2アクセントとして初めて[イチ\エン]などの中高型アクセントを加えました。『SJT』の「数詞+助数詞」の発音・アクセントについて詳しくは、『放送研究と調査』(2016年9月号)の論文「NHKアクセント辞典 “新辞典”への大改訂③ 「数詞+助数詞」の発音とアクセント~変化の動向と新辞典への反映~」をご覧ください。

今回は、『SJT』のユーザーのみなさんの反響の中から、その一端をご紹介しました。これから『SJT』をさらにお使いいただく中で、またどんな反響があるか、編集部一同、楽しみにしております。今後とも「ピンク辞典」をどうぞよろしくお願いいたします。