文研ブログ

2016年4月 8日

調査あれこれ 2016年04月08日 (金)

#21 『あさが来た』が今世紀最高! ところで視聴率って?

メディア研究部(番組研究)齋藤建作

やりました!先日終了した“朝ドラ”『あさが来た』がついに、平均世帯視聴率で今世紀最高を記録しました(ビデオ・リサーチ 関東)。これまで今世紀最高の朝ドラは『さくら』(2002年度上半期)の23.3%、それを14年ぶりに更新です。
グラフを見てください。よーく見てください。よく見えない人は拡大して見てください。

0408-1.jpg

見えましたね? そうです、0.2%、しっかり上回っています。

ということで、今回は視聴率のお話です。
さてみなさん、子供に「視聴率ってなあに?」と聞かれたきちんと答えられる自信はありますか?
「その番組を見た人の割合だよ。視聴者100人を調べて20人が見ていれば視聴率20%ってことだな」
う~ん、まあ子供相手ならよしとしましょうか。
ちなみに辞書で調べたことはありますか?広辞苑にはこうあります。
「テレビの番組が視聴されている程度。その地域の全受信機台数に対するその番組を受信した台数の比率を種々の方法によって推計する。ラジオの場合は聴取率という。」
なるほど、さすがに無難な説明になっていますね。ですが現在日本で行われている視聴率の実態からいうといくつかの問題があります。お分かりになりますか?
そうです。「受信機台数の比率」というのが実態と違います。実際に調べられている視聴率は、ビデオ・リサーチの場合は世帯を単位にしています。1世帯に何台もの受信機があった場合、どれか一つでもその番組を受信していれば、その世帯が見た、とカウントします。逆に、1世帯で2台、3台の受信機で受信してもカウントは1世帯です。では、2台が別々の番組を見ていたらどうなるでしょう?これはちょっと上級問題ですね。その場合はどちらもカウントします。つまり1世帯が2世帯分にダブルカウントされるわけです。ご存知でしたか?(なお、わが文研で調べている視聴率は「人」を単位にしています。ですからダブルカウントの問題は起こりません。)

さて、「受信機」を「世帯」に置き換えるとして、もう一つ気になることがあります。この定義に従うと、番組の視聴率は「全世帯のうちその番組を受信した(見た)世帯の比率」ということになります。だとするとちょっと厄介な問題が生まれます。

例えばみなさんの家では昨年の「紅白歌合戦」をご覧になったでしょうか。
で、「見た見た、メガ幸子はびっくりぽんだった!」などとおっしゃるとする。それでお宅が視聴率調査対象世帯100軒のうちの1軒だったとしたら、それで1%分ということになるのでしょうか。
「いやいや、見たのは幸子とAKB48とV6と…くらいかな。全部見たわけではないし…」
問題はそこです。上の定義でいくと「見た世帯」を全世帯で割り算することになりますから、「見た世帯」と「見なかった世帯」に分類しなければなりません。それでは分類の線引きはどうやってするのでしょうか。線引きのやり方次第で視聴率自体が変わってしまうことになります。

正解を申し上げます。この定義で抜け落ちているのは「時間」の要素です。実際の視聴率は「世帯」の比率ではなく、視聴された「時間」の比率を計算しているのです。
詳しく言うとこういうことになります。例として、調査対象世帯が100軒で対象番組が30分だったとします。その場合、視聴されうる最大延べ時間は30×100=3000分となります。そのうち実際に各世帯で視聴された時間をすべて足し上げて300分になったとすると、これで視聴率が10%ということになります。実は、このような結構面倒な計算の結果、視聴率が測定されているのです。日ごろ見慣れている視聴率ですが、案外奥が深いと思いませんか? こうなると子供に正確に説明するのはちょっと難しいですね。

さて、「放送研究と調査」今月号の
『最近好調な朝ドラを、視聴者はどのように見ているか? 続編では、朝ドラの視聴率が近年、なぜ、どのように好調なのか、詳しく分析しています。是非お読みください。