メディア研究部(番組研究) 亀村朋子
連続テレビ小説『半分、青い。』は今まさに最終回を迎えようとしています(2018/9/29(土)最終回放送)。北川悦吏子さんオリジナルの作品ということで、「物語がどのような結末を迎えるのか?」そこを楽しみに見ていた方も多かったと思います。
そんな今日このごろではありますが、朝ドラ研究プロジェクトでは、『放送研究と調査』9月号に、『半分、青い。』の前作である『わろてんか』の視聴者アンケート調査の結果を報告しました。「いまさら?」と思われたそこのあなた!申し訳ありません。放送終了直後の調査結果を分析しまとめるには、ある程度の時間を要するので、どうしても現在放送されている作品との「時差」が生まれてしまうことになります。
『半分、青い。』は、最終週に至るまでジェットコースターのような展開が度々あり、ハラハラドキドキすることが多かったのに比べて、『わろてんか』はそれほど心揺さぶられ過ぎずに、安心して見られた感が強い作品でした。その大きな理由として考えられるのは、『わろてんか』は実在の人物たちをモチーフとして作られた話だったことです。それを承知して見ていた視聴者は多く、「きっとハッピーエンドになる」と分かっているからこそ安心して見ていた…そんな意見もアンケートに多く見られました。
朝ドラは、半年ごとに作品が入れ替わります。『半分、青い。』のように振幅の大きなドラマは、見ていて「面白い」と同時に「少々疲れる」ところもあるのではないかと思います。『わろてんか』の感想には、「見ていて疲れないのが良い」という意見がありました。また、「わろてんか(=笑ってくれないか)」というタイトルどおりに「笑うことにより幸せになれる、という感じがとても好き」という心温まる感想もありました。そんな『わろてんか』の分析結果は、ぜひ『放送研究と調査』9月号「朝ドラ研究 視聴者は朝ドラ『わろてんか』をどう見たか」でお読みください。

『わろてんか』『半分、青い』に続く今後の朝ドラは、『まんぷく』『夏空』と、「モデルあり」と「オリジナル」とが1作ごとに交互に登場します。朝ドラを長期で楽しんでいる人にとっては、タイプの違う作品を半年ごとに新鮮な気持ちで見ることができるので、「朝ドラという枠は、よく出来ている」と思いますし、そこに朝ドラがヒットしている要因もあると思います。当然、見る人の好みによって好き嫌いは生じますが、例え自分にとってあまり好きではない作品であっても、半年というスパンは、「そのくらいなら頑張って見よう」「次のドラマに期待しよう」と思って見続けられるギリギリの期間なので、離れないお客さんが多いのかもしれない、とも思います。もちろん好きな作品であれば、毎日の15分がささやかな楽しみの時間ともなります。「モデルあり」と「オリジナル」が テレコテレコ(交互)にやってくることも、飽きさせない工夫となっているのではないでしょうか。「朝ドラ・テレコの法則」は成功している、そんな気がするのです。
来年の春、朝ドラ100作を機に、文研の朝ドラ調査は総まとめに入ります。またブログでも報告させて頂きますのでご期待ください。
メディア研究部(メディア動向) 谷 卓生

73年前の今日。1945年9月15日、終戦直後にマーシャル諸島で撮影された日本軍の兵士たち。・・・ニューラルネットワークによる自動色付け+手動補正。
渡邉さんのツイートより(Twitter @hwtnv)
このツイートは、広島原爆の実相を伝えるデジタルアーカイブズ「ヒロシマ・アーカイブ」などの制作で知られる東京大学大学院の渡邉英徳教授が、今月(9月)15日に、ツイッターに投稿したものだ。元の白黒写真を、早稲田大学理工学術院の研究グループが開発したAI(人工知能)を使って自動でカラー化し、さらに画像処理ソフトも使って自然な感じに仕上げている。
渡邉さんは、元の白黒写真も同時に投稿する。

2枚の写真を見比べて、皆さんはどのような印象を持たれるだろうか。
渡邉さんは、毎日のように「その日」の白黒写真をカラー化して投稿している。このような日付のシンクロとカラー化が生み出した生々しさによって、私には、73年の時空を越えて旧日本軍の兵士たちが語りかけてくるような気がする。同じように、カラー化された写真に触発された人が多くいるのだろう。このツイートは、3100あまりリツイートされ、およそ3800の♥が付いている(9月18日現在)。さらには、自分の身内の戦争体験や自身の戦争に対する考えなどが、コメントとして多数つけられている。コメント同士でやり取りが行われることもあり、渡辺さんのツイートから、いわば“小さな言論空間”が生まれたとも言えるのではないだろうか。
渡邉さんは、このようなプロセスを「記憶の解凍」と呼び、3つのフェーズから成り立っているとする。
まず,白黒写真が持つ“凍った“印象が,カラー化によって“解かされる“。次いで,創発する対話によって,人々の記憶がよみがえり“解凍“される。そして,元の写真への社会の関心が高まり,写しこまれた記憶が未来に継承される。
渡邉さんのツイートより(Twitter @hwtnv)
アーカイブされていた白黒写真がカラー化され、“現在のツイッター空間”に投げ込まれることで、写真は死蔵されるのでなく、息を吹き返すのだ(渡邉さんは、フェイスブックやインスタグラムにも、戦争の時代の写真を中心に、同様の投稿を行っている)。
さらに、現在は、写真だけでなく、白黒の“動画”もカラー化することが可能になった。これまでもカラー化は行われてきたが、かなりの時間とコストが必要で簡単に行うことは難しかった。しかし、NHK放送技術研究所(技研)が開発した「AIによる白黒動画カラー化」技術を使えば、容易にカラー化できるようになり、放送にも利用された(8月に放送されたNHKスペシャル『ノモンハン 責任なき戦い』で、ノモンハン事件の記録フィルムのカラー化に使われた)。
この技術が、一般にも広く使えるようになれば、白黒動画の分野でも、「記憶の解凍」が多数行われ、「記憶の継承」に大いに資することになるだろう。

技研公開2018
※技研が開発した「AIによる白黒動画カラー化」技術については、『放送研究と調査』2018年8月号「人工知能で白黒フィルムの映像を自動でカラー化」をご覧ください。
メディア研究部(メディア動向) 越智慎司
漫画やアニメなどを無断で掲載している海賊版サイトへの対策として政府が行うとした「ブロッキング」についての論考を、『放送研究と調査』9月号に書きました。ブロッキングとは、ユーザーがインターネットでウェブサイトにアクセスしようとした際、プロバイダーなどの判断で閲覧を遮断することです。国内では児童ポルノについてブロッキングの先例があり、どのような経緯でブロッキングの実施に至ったか、さらにどのように運用されているかを、関係者への取材などで探りました。取材を通じて、「まずブロッキング」ではなく、ほかのさまざまな策とともに考えていくほうが、海賊版サイトへの有効な対策になるのではないかという思いを強くしています。
政府は海賊版サイト対策の実現に向け、ことし6月から出版・動画の業界、通信事業者、法律の専門家などの有識者を集め、検討会議を開いています。9月中旬をめどに中間取りまとめの予定で、8月30日の会議でその骨子案が示されました。案は政府の知的財産戦略本部のウェブサイトで見ることができ、総合対策の案も示されています。この総合対策の中で、ブロッキングについては「ブロッキングに係る法制度整備について(P)」とだけ書かれています。記述の後ろの「P」とは?
シンポジウムの様子
9月2日、プライバシーや情報法などの研究者で作る情報法制研究所が海賊版サイト対策についてのシンポジウムを開きました。この中で、「P」とは“霞が関用語”で「ペンディング=保留」の意味という説明がありました。つまり、ブロッキングについて検討会議が現時点で示せることは何もないということになります。
シンポジウムには検討会議のメンバーの方々も何人か出席し、ブロッキングも含めた議論が行われましたが、議論を聞くかぎりでは、検討会議での意見集約などがまだ十分でないという印象を受けました。このため、仮にブロッキングを行った場合に誰がイニシアチブをとり、どのようにコストを負担するのかといった議論には行きつきませんでした。
今回執筆した論考のまとめの中で、「インターネットに関わる多くの人たちの知恵を集めなければならない」と書きました。政府は海賊版サイト対策の実現に向けて進んでいますが、これまでほとんど接点のなかった関係者の知恵を集められているのでしょうか。中間取りまとめにある総合対策が決まったとしても、本当に現場でうまく機能するのか、それが心配になりました。
『放送研究と調査』9月号
「調査研究ノート 海賊版サイトは “ブロッキングすべき” か ~著作権侵害コンテンツ対策の課題を考える~」
メディア研究部(メディア動向) 大髙 崇
ある日、テレビ局の者だと名乗る男から電話がかかってきた。
「あなたのひいおじい様の番組を再放送したいので許可をいただきたい。怪しい者ではありません」
いやいや怪しい! なんで俺の連絡先知ってるの? テレビ局を名乗る男は、なんとかという出版社やら、なんとかという骨董屋に聞き回った結果、教えてもらったという。怖えーーーし。怪しすぎだろ!!
怪しい男によると、ひいじいちゃんは亡くなる直前の昭和43年、インタビューを受け、ひいじいちゃんの描いた絵を何枚か紹介する番組に出演していたという。
昭和43年は俺の生まれるずっと前。だからひいじいちゃんとの思い出は何もない。ひいじいちゃんがどんな人で、何をしてたか興味もなかったし、親父やおふくろはもとより、親戚のおじさんたちから話を聞いたこともない。あったけど忘れているだけかもしれないが。ただ、100歳近くまで長生きしたことは知っている。
怪しい男の電話をいったん保留にし、急いで検索。……おお、けっこういろいろ出てる。
明治初期に生まれ、明治・大正期に活躍したとか、俺でさえ知ってる有名芸術家とも仲が良かったとか。男の言っていた番組が放送されたのもどうやら本当だ。え!? 俺って「画伯の子孫」!? ……でも、昭和以降はほとんど描いてないらしく、正直、忘れられた人扱いになってる。飽きっぽいのか、俺みたく。
ともかく、男との通話再開。「再放送、全然オッケーです。俺も観てみたいし」
男「ありがとうございます! 探した甲斐がありました」
俺「しかし、わざわざ連絡していただかなくともよかったのに。俺、ひいじいちゃん全然知らないし」
男「いえいえ、そうはいきません。ひいおじい様がお亡くなりになってから50年間は、著作権を継承しているあなた様の許諾が必要です。法律ですから」
俺「死んだあと50年も許可必要なんすか!? 明治時代の絵とかも?」
男「そうなんです。いつ描いたかじゃなく、いつお亡くなりになったか、です。昭和43年にお亡くなりですので、今の時点で死後49年。今年の大晦日まで、あなた様は権利者です」
俺「へえ~。じゃ、俺的にはギリギリセーフっていうか、来年になったらもう関係ないんですね」
男「あ、一応そうですが、このたび法律が変わって死後70年まで伸びそうなんですよ。今年中に改正法が施行されれば、さらに20年間、あなた様は権利者です」

まじ!? あと20年も『権利者』! なんか急に肩書きできちゃって嬉しいような、でも、こういう連絡がまた来るのかとビクビクするような……とか考えてたら、
男「では、使用料などをお振込みいたしますので、銀行の口座番号を教えてください」
ちょっと待て! 口座番号って簡単に教えちゃっていいんだっけ? やっぱ、この男……怪しくね!?
TPP関連法成立で著作権保護期間延長へ。放送番組の再利用に大きな影響をもたらします。
詳細は『放送研究と調査』8月号掲載の「“著作権70年時代”と放送アーカイブ活用(前編)~深刻化する「権利者不明問題」~」にて! ぜひご一読ください。
メディア研究部(海外メディア研究) 田中孝宜
「公共放送から公共メディアへ」。
2016年2月、イギリスの公共放送BBCは、決断をしました。若者向けチャンネルBBC Threeのテレビ放送をやめて、インターネットやソーシャルメディアだけの提供にしたのです。BBCがテレビチャンネルを閉じるのは初めてで、30万人にのぼる反対署名が集まる中での決断でした。
2年たっての状況を見てみようと、ロンドンに行ってきました。
写真は、ロンドンのウッドレイン駅前にあるBBCのテレビジョンセンターです。ここにBBC Threeのオフィスが入っています。

放送をやめた一番の理由は予算削減です。
ネットのみでの提供にしたことで、番組編成はなくなり、制作する番組数のノルマもなくなりました。年間予算は、ネット化する前年の8,200万ポンドから、3,000万ポンド(約45億円)に削減されました。そのうち8割は従来と同様の長尺番組の制作に、算の残りの2割は、SNS向けに作られる短いコンテンツに充てられることになりました。
では、BBC Threeはこの2年間、どんな番組を制作してきたのでしょうか。

ホームページには番組ジャンルの一覧が記されています。コメディ、ドキュメンタリーなど、通常のジャンルのほか、セックスと男女関係、犯罪、ドラッグ、LGBTQなど、テレビとは違ったインパクトがある分け方がされています。
この2年間でいくつも話題になった番組があります。
例えば、ドラマ「Thirteen」。13歳の時に誘拐され、誘拐犯の自宅に閉じ込められた女性が、脱出後、人生を立て直しながら犯人を捜す物語ですが、BBC Threeでは、放送に合わせて、実際に行方不明になっている少女らを紹介し、「娘を探し出そう」キャンペーンを行い、話題を呼びました。
また、SNS向けコンテンツとして開発された「Things Not to Say(言ってはいけないこと)」は、当事者に言われて嫌だったことを本音で語ってもらう番組です。「HIVの人に言ってはいけないこと」、「自閉症の人に言ってはいけないこと」など、議論を呼ぶテーマが多く、視聴後にSNS上で様々なやり取りがされます。BBC Threeでは視聴率では計れないインパクトがあると見ています。
視聴リーチはどうなのでしょうか。
かつて約20%あったリーチは、テレビ放送をやめた直後に1.8%にまで落ち込みました。現在はほぼ9%で着実に伸びています。BBCでは、BBC Threeのネット化は「成功だった」と評価しています。
BBC Threeのネット化は、当初は予算削減の目的が強かったのですが、2年たって、別の目的へと比重が移ってきているようです。
BBC3の責任者ダミアン・カバナ―氏に話を聞きました。
「私たちはパスファインダー(先駆者)です。これまでと違った方法を試行しています。BBC Threeは若い視聴者に合わせて、番組の幅や境界を広げているのです。BBCブランドを守りながら番組づくりの現状を変えるため挑戦しているのです。」
今の若い視聴者は、将来の中心的な視聴者です。
ネット化から3年目。BBC Threeの予算は1000万ポンド(約15億円)増額されました。次世代の公共メディアBBCの姿を切り開く先遣隊として、さらに挑戦的な試行錯誤を繰り返していくようです。
詳細は、『放送研究と調査』7月号「公共メディアBBCのマルチプラットフォーム戦略」をごらんください。
メディア研究部(メディア動向) 大野敏明
今年3月、NHK文研フォーラム2018のシンポジウム「『きょうの料理』60年の歴史とこれから」の本番前。最終打ち合わせが終わると、登壇者の一人、料理研究家の土井善晴さんはこう言いました。
「台本を読めば読むほど、本番は台本に書いてないことを言わなくてはと思うんですわ~ハハハ」
続けてもう一人の登壇者、関西学院大学准教授の鈴木謙介さんがこう言いました。
「あ~分かります、分かります。今日も任せておいてくれれば何とかしますから。アドリブで行きましょう!ワハハハハ」
私は
「皆さん、何のために打ち合わせを重ねてきたのですか!私が書いた台本通りに進行させていただきます!!」と毅然とした態度で言い放ちました。もちろん、心の中で。
すると、私の心中を察したかのように、もう一人の登壇者『きょうの料理』ディレクター歴40年の河村明子さんが言いました。
「台本通りに話してあげるわよ~フフフ」
いざシンポジウムが始まると、登壇者の皆さんは最初からエンジン全開。一方でアドリブに滅法弱い司会者(私)は終始オドオド。拙い司会進行のせいで予定時間は大幅オーバーし、個人的には反省しきりでした。
しかしながら、土井さんが語る「家庭料理を手作りすることの意味」、鈴木さんの「インターネットのレシピ提供サービスの動向と課題」の話、そして河村さんが語る「受け継がれた料理番組の制作者マインド」などなど、どの話も非常に興味深く、これからの時代の料理コンテンツのあり方を考える上で、大きな示唆に富んだものばかりでした。

文研フォーラム2018 シンポジウムの様子
(左から河村明子さん、鈴木謙介さん、土井善晴さん)
ということで、そのシンポジウムの内容をまとめたものを『放送研究と調査』7月号に掲載しました。当日は時間オーバーで割愛することになってしまった話も、最後に少しだけ盛り込んであります。
さらに、シンポジウムのダイジェスト動画の配信も始めました。60年の歴史を誇る『きょうの料理』の未来を考えることがテーマではありますが、皆さんの毎日の食生活、料理番組やレシピ検索サイトなどとの付き合い方を考えるきっかけにもなると思います。こちらも合わせて、是非ご覧くださいませ。
シンポジウムが終わったあと、河村明子さんは言いました。
「眼鏡を控室に忘れちゃって、台本見えなかったのよ~ごめんなさいね~アッハッハ」
いいんです。皆さんに喜んでもらえればそれで…
動画を見ると確かに河村さん、眼鏡忘れてます。
メディア研究部(番組研究) 宇治橋祐之

アクティブ・ラーニングという言葉、ご存知でしょうか? 最近の教育界のキーワードの一つです。
教師が一方的に説明をして生徒が聞くだけの講義型の授業ではなく、子どもたちがグループで話し合ったり、調べたことをまとめたり、プレゼンしたりする、アクティブな要素のある授業です。
授業の中で、生徒が進んで学んでいくこと、仲間と話し合いながら学んでいくこと、学んだことをより深く理解していくことは、小学校を中心にこれまでも進められてきましたが、特に高校の授業で取り入れる動きが盛んです。
新たな学習指導要領(小中高校などで教える内容や目標を示した国の基準)に基づく授業が、小学校で2020年度から、中学校で21年度から、高校で22年度から全面実施されます。そこでは「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」という言葉がアクティブ・ラーニングと同様の意味で使われ、重視されています。
『放送研究と調査』6月号の「アクティブ・ラーニング時代のメディア利用の可能性 ~2017年度「高校教師のメディア利用と意識に関する調査」から①~」では、高校の授業でのメディア利用の様子とあわせて、「アクティブ・ラーニングの視点にたった授業」での、メディア利用について分析しています。
全日制高校で、「アクティブ・ラーニングの視点にたった授業」をしているという先生は、理科82%、社会83%、国語91%、外国語89%と、調査した教科すべてで8割を超えていました。
しかし、その際にメディアを利用しているかというと、「パソコン」や「プロジェクター」などの機器について、「いずれのメディア環境も利用していない」という先生の割合は、担当教科によって3割から5割。そして、「インターネット上のコンテンツや動画、静止画」「NHKの放送番組」などのメディア教材について「いずれのメディア教材も利用していない」いう先生も3割から5割という結果でした。
イラストにあるような、先生が「電子黒板」などで課題を動画や静止画で提示して、生徒が「タブレット端末」などで調べたりまとめたり発表したりする授業は、あまり多くはないようです。
そこで、アクティブ・ラーニングの視点にたった授業を「よく実施している」先生と「時々実施している」先生、「何度か実施したことがある先生」で比べてみました。教科によって結果はやや異なりますが、「よく実施している」先生のほうが、「パソコン」や「プロジェクター」などの機器についても、「インターネット上のコンテンツや動画、静止画」「NHKの放送番組」などのメディア教材についても、利用が多い傾向があるという結果を得ました。
アクティブ・ラーニングはメディアを利用しなくてもできるものですが、メディアを使うことで可能性が広がりそうです。
『放送研究と調査』6月号の報告では、他にも授業での「NHK高校講座」、NHK for Schoolなどの利用の様子についても調査結果をまとめています。高校の教室でどのようにメディアが利用されているか、興味のある方はぜひご覧ください。
メディア研究部(番組研究) 亀村朋子
春の訪れを感じる今日このごろ。あと2週間もすれば新学期ですね。
とある「朝ドラウォッチャーさん(仮名)」が以前Twitterでこんなことを言ってました。

そうかーなるほどね…「新しいクラスは?」「担任は?」「毎日楽しく過ごせるといいなぁ」「面白い先生がいい」…そんなワクワクするような期待が、新しい朝ドラを見る時にはあるのかもしれない…
朝ドラ常連のこの方は、4月と10月になると「新学期気分」を味わいながら見続けているんですね。有り難いことです。新しく作品が入れ替わっても、次を楽しみにしながら見続けてくれている方が大勢いる。朝ドラは、まさにそんな「味方」に支えられている番組だと思います。
朝ドラには、ご存じの通り、二つのタイプがあります。
「実在モデルありの一代記もの」と、「モデルのいないオリジナルもの」です。
昨年4月から放送された『ひよっこ』は、それまで3作連続で(『あさが来た』『とと姉ちゃん』『べっぴんさん』)「モデルあり」が続いたあとに放送された、久しぶりの「オリジナルもの」でした。
主人公は、何かを成し遂げる偉人ではなく、茨城に住む普通の庶民の女の子。昭和への懐古や、庶民の生活への賛歌を感じ取れる『ひよっこ』は、放送中盤のアンケート結果では、「明るくて」「健全で」「前向きで」「さわやかな」イメージを呼び、8割近くの回答者から「満足」と支持されました。しかし、同じアンケートの中で「(モデルがいない話なので)物語がどこに向かっているのか分からない」と答えた人が6割以上いました。
「見て満足」なのに「分からない」とは、これいかに?…ちょっと矛盾していますよね。
そこで、朝ドラを見るときに皆さんがどのような「見方」をしているのかを探ってみれば、「何かヒントになるかもしれない」と思いつきました。「見方」とは、言い換えれば、「どういう心構え(目線)で朝ドラを見ようとしているのか」ということです。2年半にわたって朝ドラ調査を継続していますが、今回初めて「見方」に注目して、アンケートや聞き取り調査で聞いてみることにしました。
そもそも「朝ドラの見方」なんてものが存在するのでしょうか?
そしてその調査結果は…?
『放送研究と調査』3月号 に掲載した「朝ドラ研究 視聴者は朝ドラ『ひよっこ』をどう見たか ~柔軟に見方を変えて楽しむ視聴者~」で報告しています。ぜひご一読ください。

現在放送中の『わろてんか』に続く今後の朝ドラは、『半分、青い』『まんぷく』『夏空』と、「モデルあり」と「オリジナル」とが1作ごとに交互に続いていくことになっていて、なかなか目が離せません。これからも、「視聴者はどのように朝ドラをミタカ?」=「朝ドラのミカタ」を探っていきたいと思います。
メディア研究部(メディア動向) 大野敏明
夜も8時を過ぎお腹が空きました。しかも外は凍える寒さです。「人間、空腹と寒さが重なるとろくなことは考えないものだ」と、高校時代に読んだ漫画『じゃりン子チエ』に書いてありました。確かにその通りだと今もこの時季になるとよく思い出します。
こんな冬の日の晩ごはんは、熱々のシチューかスープがいいですね。しかも簡単なものがいい。思い浮かんだのは買い置きのあさり水煮缶で作る、熱々の「簡単クラムチャウダー」。作り方は・・・
というような感じで、半年前までブログ的なものを毎週書いていました。去年の夏にここ「文研」に異動してくるまでは『きょうの料理』のプロデューサーをしていまして、おすすめの簡単レシピや “食リポ” などを『きょうの料理』公式LINEなどで配信していたのです。
LINEでは他にも番組で紹介する料理のレシピやショート動画の配信、司会の後藤繁榮アナウンサーによる「料理ダジャレ」の画像配信サービスなどもしています。Eテレの長寿番組が、新たなサービスの一環として始めた公式LINEは想像以上の反響で、登録者数は現在56万8000人。後藤アナのダジャレはほんのお遊びですが、こちらも結構人気なんです。

ということで、クラムチャウダーの作り方に行きたいところではありますが、ここからは「文研ブログ」らしく、まじめに参ります。
皆さん、NHKで最も長く続いている番組って、何かご存じですか?
『きょうの料理』・・・ではなく、正解は『NHKのど自慢』。テレビ放送が始まった1953(昭和28)年から続いているのだそうです。『きょうの料理』は何位かというと・・・
2位 『大相撲中継』
3位 『高校野球』
4位 『紅白歌合戦』
5位 『NHKニュース』
6位 『ゆく年くる年』
7位 『テレビ体操』
8位 『日曜討論』
そして・・・
9位 『きょうの料理』
あの『おかあさんといっしょ』(13位)、連続テレビ小説(14位)、大河ドラマ(17位)を抑えての堂々のベスト10入りです。

1963年5月13日放送「おべんとう」 講師:堀江泰子(右)
♪タンタカタカタカタンタンタン でおなじみのテーマ曲とともに、1957(昭和32)年の放送開始以来、今年度でちょうど60年。
かつて母親や祖母が教えた料理をテレビが教える時代になったと思ったら、今や毎日の献立はスマホで決めるご時勢に。高度成長、核家族化、飽食の時代、インターネットにSNSと目まぐるしく移り変わる時代の中で、『きょうの料理』はいかにして家庭の食卓のニーズに応えようとしてきたのか・・・。
『放送研究と調査』2018年1月号では、番組草創期の試行錯誤、料理離れに対する挑戦、さらには近年のLINEやTwitterなどのネット展開まで『きょうの料理』が行ってきた様々な取り組みを、それぞれの時代背景とともにひもときます。
さらに、今年度50周年を迎えた『きょうの健康』『趣味の園芸』の歴史や取り組みも合わせてプレイバック。ちなみに『きょうの健康』は長寿ランキング10位、『趣味の園芸』は11位と、こちらも大健闘です。
おかげさまで長く愛され続ける3つの番組。そこに共通する「制作者マインド」とは? …是非ご一読くださいませ。
計画管理部(計画) 大森龍一郎
11月27日(月)から武蔵野美術大学美術館にて、 元NHKディレクター・吉田直哉(1931-2008)が歩んだ足跡、映像表現へのまなざしを紹介する展覧会「吉田直哉 映像とは何だろうか ----テレビ番組開拓者の思索と実践」が開催されます。NHK放送博物館では、吉田直哉の番組制作の元となった台本、原稿、写真などの貴重な資料を保存することになり、この展覧会を武蔵野美術大学 美術館・図書館と共催することになりました。

武蔵野美術大学特別講義での吉田直哉
【テレビ番組の開拓者 元NHKディレクター・吉田直哉】
吉田直哉は、NHKがテレビ局の本放送を開始した1953年にNHK入局。以来、映像表現への妥協のない姿勢を貫き、その後のテレビ番組形式の先駆けとなる多くの作品を制作しました。吉田は文章のすぐれた書き手でもあり、映像メディアについての論考をはじめ、番組制作での経験談、生い立ちを綴ったエッセイなど、多くの著作を残しました。NHK退職後、武蔵野美術大学に新設された 映像学科の初代主任教授として、映像の高等教育機関設立に尽力しました。

吉田直哉制作番組台本
【展示予定の吉田直哉制作のNHK番組】
・NHK特集「ポロロッカ・アマゾンの大逆流」
・大河ドラマ「太閤記」
・NHK特集「ミツコ 二つの世紀末」 等
【展覧会のみどころ① 代表的な制作番組、著作に綴られた言葉】
展示会場の外周ゾーンでは、吉田が制作した全番組のなかから特徴的な30番組を取り上げ、外周全体に液晶ディスプレイを配置。象徴的なシーンを映し出すとともに、各番組のために執筆された吉田の論考、番組制作のエピソードを紹介します。
【展覧会のみどころ② 吉田作品の魅力を造形的視点から解明】
本展覧会では、美術・デザインを専門とする武蔵野美術大学ならではの造形的な展示手法を展開。会場には島のように点在する展示ブースがキーワードごとに設置され、作品の魅力をグラフィカルに解説します。各制作番組の奥に通底する吉田の知られざるまなざしにスポットを当てます。
テレビ番組の開拓者、吉田直哉の世界をぜひご堪能ください。
展覧会情報
「吉田直哉 映像とは何だろうか -テレビ番組開拓者の思索と実践」
会 期|2017年11月27日(月)-12月22日(金)※本展は終了しました
休館日|日曜日
開館時間|10:00~18:00(土曜日は17:00閉館)
会 場|武蔵野美術大学美術館 展示室3
(東京都小平市小川町1-736)
入館料|無料
展覧会関連イベント
研究発表「吉田直哉の思索と実践 ムサビで映像を学ぶことのヒント」
日 時|2017年12月11日(月)16:30-18:00(16:00開場)※イベントは終了しました
会 場|武蔵野美術大学 美術館ホール
参加方法|入場無料/先着順(予約不要、定員約150名)/直接会場へお越しください
登壇者|篠原規行(武蔵野美術大学 映像学科教授)、黒澤誠人(武蔵野美術大学 美術館・図書館)、稲口俊太(本展研究スタッフ)