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メディアの動き

メディアの動き 2023年10月17日 (火)

【メディアの動き】ニュース記事の使用料,著しく低い場合は独禁法違反のおそれと公取が指摘

 インターネット上でニュースをまとめて表示するポータルサイトやアプリの運営事業者に対して,記事を提供している新聞社などのメディアから,使用料をめぐる不満の声があがっている。このため公正取引委員会は,メディア220社と消費者2,000人のアンケート,事業者や有識者への聞き取りなどをもとに取引実態を調査し,9月21日,報告書を公表した。

 それによると,2021年度に支払われた使用料の単価は運営事業者によって5倍程度の開きがあり,一方的に著しく低い単価を設定した場合は,独占禁止法違反のおそれがあると指摘した。特におよそ6割のメディアが,使用料の支払額が最も多い事業者として挙げたヤフーについては,「ニュースメディア事業者との関係で優越的地位にある可能性がある」と言及した。

 これを受けてヤフーは25日,メディア事業者に対して契約内容について丁寧に説明するとともに,配信の実績に応じた契約の見直しなどを検討していくなどと発表した。

 記事使用料をめぐる論争は海外でも広がっており,カナダでは2023年6月,ポータルサイトなどを運営しているプラットフォーム事業者に対して,ニュース記事の掲載で得た利益の一部を報道機関に分配することを事実上義務づける法律が成立した。カナダ政府は,民主主義に不可欠なニュースメディアの存続のために必要だとしているが,Meta社はカナダでの自社サービスではニュースを閲覧させないようにすると発表するなどの動きが出ている。

 メディアとプラットフォームが共存する新たな仕組みが確立されるかが注目される。

メディアの動き 2023年10月17日 (火)

【メディアの動き】"メディア王"マードック会長引退発表

 アメリカのFOX Newsなどの親会社Fox CorporationとWall Street Journalなどを傘下に持つNews Corporationは9月21日,ルパート・マードック氏(92歳)が11月に会長職を退いて名誉会長となり,長男ラックラン氏が会長に就任すると発表した。英米豪3か国にまたがる同氏の事業の行方に関心が集まっている。

 オーストラリア出身のマードック氏は,父親の急死により1952年に南部アデレードの地方紙を引き継いだあと,経営手腕を発揮して新聞事業を拡大し,同国初の全国紙を創設する一方,テレビ事業にも乗り出した。1969年にはイギリスに進出して大衆紙News of the World(NoW)やSUN,さらには高級紙Timesを買収し,衛星放送にも出資して“メディア王”とも呼ばれるようになった。1980年代には映画事業も取得してアメリカに進出し,90年代にかけて地上テレビネットワークのFOX,スポーツのFOX Sports,ケーブルチャンネルのFOX Newsなどを立ち上げた。

 同氏は衆目を集めるビジネス戦略に長け,NoWやSUNでは芸能人の醜聞,性や暴力に関わる話を煽情的な見出しで伝え,スポーツや戦争報道では愛国心をあおる立場を強調して販売数を伸ばし,1つの文化を成したとも評される。取材では手段を選ばず倫理を顧みない姿勢が目立ち,NoWは王族など著名人や犯罪被害者の携帯電話の留守録を盗聴していた違法行為が発覚して,2011年に廃刊に追い込まれた。

 マードック氏は各紙の論調などにも関与し,その世論誘導の力を政治家に恐れられ,オーストラリアの歴代首相,サッチャー,ブレアなどイギリスの歴代首相とも密接な関係を築き,両国政界への影響力を誇った。EU離脱を問う2016年の英国民投票では,最大部数のSUNを中心にEUを批判するキャンペーンを展開し,離脱の世論形成を後押しした。

 アメリカではFOX Newsのトーク番組に,社会の価値観や宗教観の変化,格差の拡大に不安を抱く人たちの恐れや怒りをあおる右派ラジオのビジネスモデルを採用。視聴者数でCNNやMSNBCを超えるチャンネルに成長させた。

 これらのトーク番組は新型コロナウイルスのワクチンや気候変動,銃規制,人種差別,移民の問題などで根拠を欠く主張を展開する保守派に寄り添い,2020年のアメリカ大統領選挙では投票・集計機を使った不正などで結果が変えられたとするトランプ前大統領の陣営の主張を繰り返し放送。投票機器メーカーに名誉毀損で訴えられ,FOX側が7億8,750万ドル(約1,200億円)の和解金を支払った。この裁判ではマードック氏が「選挙不正」の主張は偽りだと知りながら,前大統領寄りの視聴者離れを恐れて虚偽の主張を放送し続けることを認めていたことなどが明らかになり,利益を何よりも優先する同氏の経営姿勢が浮き彫りになった。

 ジャーナリストのカーラ・スウィッシャー氏は,マードック氏のメディアが偽情報を意図的に拡散して事実への信頼を損なうなど「英米豪3か国のメディアで最も破壊的な力だった」と評価。FOX Newsの放送はアメリカ社会の分断と民主主義の危機を際立たせた2021年の連邦議会議事堂襲撃事件に影響したとの指摘もあり,70年にわたる同氏の業績には批判的な意見が多い。株主の懸念も伝えられているが,引退発表は長男の後継者としての地位確立がねらいともされ,当面,経営方針は変わらないとの見方が強い。

メディアの動き 2023年10月16日 (月)

【メディアの動き】関東大震災100年,各メディアが特集「災害教訓の誤った語り継ぎ」の事例も

 9月1日で,1923(大正12)年の関東大震災の発生から100年になった。各メディアは1日の前後に特集番組や特集記事を相次いで放送・掲載。関東大震災の被害を振り返り,今後の大地震への備えなどを訴えた。

 このうち4日にNHK総合で放送された『映像の世紀バタフライエフェクト』は,関東大震災で奇跡的に焼け残った東京の神田佐久間町・和泉町を取り上げた。周辺がことごとく焼失する中,この地区の住民はバケツリレーなどで消火にあたり延焼を食い止めた。この2つの地区が焼失を免れたのは,すぐそばに神田川が流れていたことや,火が迫ったタイミングが,はじめは地区の南側,次に西側,東側,最後に北側と時間差があり,消火活動を1方向に集中できたことなどが大きな要因だった。しかし,「住民の団結によるバケツリレー」ばかりが強調され,美談として語り継がれた。番組では,このエピソードが戦争遂行のために次第に都合よくすり替えられ,「住民は空襲から逃げず立ち向かう」「焼夷弾が落ちたら1秒でも早く駆けつけ消火にあたる」などの無謀かつ危険な行動の手本として利用されたことを紹介。そして1945(昭和20)年3月10日の東京大空襲では,神田佐久間町・和泉町も焼け野原となり多くの人が逃げ遅れて亡くなったことを伝えた。

 災害時の教訓は,ときに一部だけが強調されて美談となり,誤った内容で語り継がれる危険性があることを,この事例は示している。情報の途絶によって拡散し,朝鮮人の虐殺などを引き起こした「流言飛語」とともに,100年前の震災が今に伝える教訓である。

メディアの動き 2023年10月16日 (月)

【メディアの動き】ニュージーランド,TVNZが広告収入減で事業の大幅な見直しを迫られる

 ニュージーランド最大の放送局TVNZが,広告収入の大幅減に直面し,大規模なコスト削減を迫られている。9月18日に経営側からスタッフに送られた文書で明らかになった。

 文書で経営側は,「現在,テレビ広告市場は厳しい状況にあり,最大のプレーヤーとして影響を受けている」と危機感を訴えた。幹部らは,「すべての可能なコスト削減の機会」を特定したとして,あらゆるプロジェクトの見直し,幹部や高収入スタッフの昇給の停止,出張回数の大幅減,マーケティング調査やインフラ整備の大規模な縮小など,多方面にわたるコスト削減の具体策を示した。

 TVNZは,これまでたびたび運営形態を変えてきた。1943年に設立された国営放送局が前身で,長年にわたり受信料と広告収入に支えられていたが,2000年に受信料制度が廃止された。2003年には政府全額出資の株式会社になり,広告収入や商業収入を財源としている。

 株式会社になってからも,他局があまり取り上げないテーマや少数派の意見に配慮した番組を放送することなどを使命とする「TVNZ憲章」を掲げていたが,2011年に廃止された。憲章が柔軟な企業活動を妨げるなどとして議会が廃止を決めたが,公共放送サービスの存在意義を軽んじるものだとの批判もあった。

 広告・商業収入のみで運営してきたTVNZは,2020年以降,新型コロナウイルスの影響による景況の悪化などから広告収入を大幅に減らしており,2023?24年の会計年度には1,560万ニュージーランドドル(約14億円)の赤字が見込まれている。

メディアの動き 2023年10月16日 (月)

【メディアの動き】韓国KBS 理事会,社長を解任し後継選びを開始

 韓国の公共放送KBSは9月12日午前,臨時の理事会を開き,キム・ウィチョル(金儀喆)社長の解任案について審議し,理事11人のうち与党系の理事6人が賛成して可決した。ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が同日午後にこれを承認し,キム氏は社長職を解任された。

 キム前社長はムン・ジェイン(文在寅)政権時代に任命された。解任案は8月末の定例理事会で与党系の理事によって提出され,経営の悪化や偏向報道などが解任理由に挙げられた。今回の臨時理事会では,キム前社長に弁明の機会を与え,解任案の決議を行う予定だったが出席せず,書面で意見を提出していた。野党系の理事5人は「解任は不当だ」として採決前に退席する中で可決された。

 キム前社長は「解任されるほど大きな過ちを犯したとは思わない」として,9月13日に解任取り消しを求め提訴した。KBSの社長をめぐっては,ムン・ジェイン政権下の2018年にコ・デヨン(高大栄)社長が解任されたほか,イ・ミョンバク(李明博)政権下の2008年にもチョン・ヨンジュ(鄭淵珠)社長が,政権交代後に任期途中で解任されている。解任された2人は行政訴訟を起こし,その後,勝訴している。

 KBSの理事会は後任の社長選びを開始し,9月25日に募集を締め切った。12人が応募し,同月27日の書類選考の結果,ユン大統領と親交のある夕刊紙,文化日報の論説委員を務めていたパク・ミン氏を含む3人に絞られた。10月に理事会が面接を行って最終候補者を決める予定で,国会での聴聞会を経て,大統領が新社長を任命する。

メディアの動き 2023年09月16日 (土)

【メディアの動き】"ゆっくり北上"台風7号で特別警報,通過後はお盆の新幹線に影響

 台風7号が,8月15日午前5時前に和歌山県潮岬付近に上陸し北上。近畿や東海,中国地方などに大雨をもたらした。特に台風の発達した雨雲がかかり続けた鳥取県では,線状降水帯が発生。気象庁は15日午後4時40分,鳥取県に大雨の特別警報を発表し,最大級の警戒を呼びかけた。

 さらにこの台風は,新型コロナが5類に移行してから初めて迎えたお盆の交通機関に大きな影響を与えた。このうちJR東海は,12日に東海道新幹線の計画運休の可能性に言及。13日には「15日は終日,名古屋駅と新大阪駅の間で運転をとりやめる」と計画運休の実施を発表した。そして,台風通過後の16日は「始発から通常どおり運転する予定」だった。しかし,台風が日本海に抜けたあとも湿った空気が流入し続けた影響で,16日は東海などで雨雲が発達。沿線の大雨の影響で午前8時半ごろから静岡県内で運転を見合わせた。その後,見合わせ区間は広がり,一時は,直通する山陽新幹線を含めた東京駅と博多駅の間にまで拡大。16日の東海道新幹線は,185本以上が運休,240本以上で遅れが発生し,約30万5,000人に影響が出た。ダイヤの乱れは17日の夕方ごろまで続いた。

 専門家によると,今回の台風は進行速度が比較的ゆっくりだった。また,日本海に抜けたあとも湿った空気が台風に向かって流入し雨雲が発達したことなどが特徴といえる。台風通過後も大雨が降り続くという事態はこれまでもあったが,それを的確に予測し交通機関の運行などにどう生かすか,大きな課題を残した。

メディアの動き 2023年09月16日 (土)

【メディアの動き】福島第一原発の処理水,海洋放出開始,中国の猛反発など影響広がる

 福島第一原子力発電所にたまる処理水について,東京電力は8月24日,基準を下回る濃度に薄めたうえで,海への放出を開始した。処理水は,原発事故の直後から発生している汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含むもので,その量は134万トンと,1,000基余りのタンクで保管できる容量の98パーセントに達し,12年前の事故発生時からの懸案となっていた。放出に先立って東京電力がトリチウムの濃度を確認したところ,国の基準や自主的に設けた基準を大きく下回っていた。

 放出の開始を受けて,福島県内の漁業者などからは風評被害を懸念する声が聞かれた。さらに中国政府が猛反発。放出開始直後に「断固たる反対と強烈な非難を表明する」などとする外務省報道官の談話を発表したあと,税関当局が日本を原産地とする水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表。「福島の核汚染水」という強いことばを使い,「中国の消費者の健康を守り,輸入食品の安全を確保する」と表明した。中国のSNSでは「福島で放射線量が瞬時に上がった」などの根拠のない投稿も拡散した。これに対し,西村環境大臣は記者会見で「事実に反する内容を含む発信には政府として適切に反論を行う(略)科学的根拠に基づいた情報を開示することで,国内外の理解や安心の醸成につながると考えている」などと述べた。

 処理水の放出期間は30年程度に及ぶ見込みで,長期的な安全性の確保と国内外の理解を得ることが課題となっている。メディアにも,この問題に関する正確な情報を長期にわたって伝え続けることが求められている。

メディアの動き 2023年09月16日 (土)

【メディアの動き】NHKのネット活用業務「必須業務化」へ,公共放送WG取りまとめ案まとまる

 8月31日,総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」で,「公共放送ワーキンググループ(WG)」の取りまとめ案が示された。案では,現在は任意業務として行っているNHKのネット活用業務を必須業務とすべきとの方向性が示された。

 また,ネットのみで同時・見逃し配信を視聴する人にも相応の負担を求めることが適当だとした。ただ,パソコンやスマートフォンを保持しただけで対象とするのではなく,ID取得等,視聴意思が明確な行為を前提としている。

 必須業務の範囲は「放送番組と同一のもの」を基本とし,放送番組以外については,1)災害情報等の国民の生命・安全に関わる情報,2)放送番組の密接関連情報・補完情報,に限定。提供の対象は費用負担者を前提としつつ,1)については例外的に非負担者への提供も必要な場合があることに配慮すべきとした。NHKがこれまで無償で提供してきた番組周知のための情報や取材を深掘りしたテキスト配信等の「理解増進情報」は廃止の方向性が示された。

 また,放送番組以外の具体的な範囲や提供条件については,NHKが原案を策定し,評価・検証を第三者機関が実施して,総務相がNHK予算に意見を付し,国会審議で判断されるとした。

 案では,日本のコンテンツ産業が海外事業者との競争に直面する中,NHKには放送全体のプラットフォームの役割が期待されているとしている。今後NHKはどのような姿で,個人の自律的な判断や民主主義社会の発展,日本のコンテンツ産業に貢献していくのか。改めてその役割が問い直されている。

メディアの動き 2023年09月16日 (土)

【メディアの動き】調査報道大賞で『週刊文春』のジャニーズ報道などが大賞に

 8月9日,優れた調査報道を顕彰する「調査報道大賞」が決定した。90の応募作から2つの大賞を含む7つの作品が選ばれた。

 大賞の1つは『週刊文春』の「ジャニーズ事務所・ジャニー喜多川 少年たちへの性加害の一連の報道」だった。この報道は1999年の初報から24年を経ている。調査報道大賞の特徴は,時間がかかっても成果が顕著になった報道を対象としていることで,その典型だといえる。

 授賞理由には「他メディアの沈黙も映し出すこととなり,ジャーナリズムの在り方を考えることにもなった」との記述もあり,大手メディアがこの問題について,最近まで触れてこなかったことに疑問を投じた形となった。

 もう1つの大賞は神戸新聞の「神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道」だった。「遺族との関係を長く結んでいた地方メディアならではの役割を示していることにも注目したい」と評価された。

 映像部門ではNHKの『ETV特集』「ルポ死亡退院~精神医療・闇の実態~」が優秀賞を受けた。精神科病院で患者が不当な扱いをされている実情を描いたもので,映像や音声という内部状況を直接示すものが報道されたことが「格段の意義がある」と評価された。

 また,「データジャーナリズム賞」に,朝日新聞の「みえない交差点」が選ばれた。警察が公開している60万件余りの人身事故に関するデータを分析した結果,「警察も把握していなかった事故多発交差点」を全国各地で発見し,改善へつなげたことが評価された。

メディアの動き 2023年09月15日 (金)

【メディアの動き】バングラデシュ,国際的批判を受け,「デジタル・セキュリティー法」改正へ

 バングラデシュ政府は8月7日,政府批判の取り締まりに乱用されているなどと批判を受けていた「デジタル・セキュリティー法(DSA)」について,「サイバー・セキュリティー法」と名称を変更し,刑罰を一部軽減した内容に改正する方針を明らかにした。

 DSAは,インターネット上で「名誉毀損を行った」者などに厳しい刑罰を科す内容で知られ,施行から2023年1月までに7,001件が適用された。ジャーナリストや人権活動家など,政府に批判的な人たちの抑え込みや逮捕などに用いられてきた。これに対し,国内外のジャーナリスト団体や人権団体が同法の停止や廃止を繰り返し訴えている。今回の改正方針の発表は,2024年1月予定の総選挙を前に,強権的な姿勢が批判されてきたハシナ政権が国際的な圧力に押される形で行われた。

 改正の内容は,?「名誉毀損」に対する禁固刑を廃止し,罰金刑のみとする,?「政府の機密を侵害した」罪に対する禁錮刑の上限を14年から7年に短縮する,などで,9月に議会で可決される見通し。ただし,こうした刑罰の軽減は一部にとどまり,ハッキングを行った者に対し最長14年の禁錮刑を科すなど,新たな内容の追加が予定されている。

 ジャーナリスト保護委員会(CPJ)は声明を発表し,今回の改正方針について,「正しい方向への第一歩だ」としながらも,「政府は,サイバー・セキュリティー法の起草にあたり,ジャーナリストと十分に協議し,国際人権法に適合することを保障しなければならない」と警戒感を示した。