メディアの動き
2023年09月16日 (土)
【メディアの動き】福島第一原発の処理水,海洋放出開始,中国の猛反発など影響広がる
福島第一原子力発電所にたまる処理水について,東京電力は8月24日,基準を下回る濃度に薄めたうえで,海への放出を開始した。処理水は,原発事故の直後から発生している汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含むもので,その量は134万トンと,1,000基余りのタンクで保管できる容量の98パーセントに達し,12年前の事故発生時からの懸案となっていた。放出に先立って東京電力がトリチウムの濃度を確認したところ,国の基準や自主的に設けた基準を大きく下回っていた。
放出の開始を受けて,福島県内の漁業者などからは風評被害を懸念する声が聞かれた。さらに中国政府が猛反発。放出開始直後に「断固たる反対と強烈な非難を表明する」などとする外務省報道官の談話を発表したあと,税関当局が日本を原産地とする水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表。「福島の核汚染水」という強いことばを使い,「中国の消費者の健康を守り,輸入食品の安全を確保する」と表明した。中国のSNSでは「福島で放射線量が瞬時に上がった」などの根拠のない投稿も拡散した。これに対し,西村環境大臣は記者会見で「事実に反する内容を含む発信には政府として適切に反論を行う(略)科学的根拠に基づいた情報を開示することで,国内外の理解や安心の醸成につながると考えている」などと述べた。
処理水の放出期間は30年程度に及ぶ見込みで,長期的な安全性の確保と国内外の理解を得ることが課題となっている。メディアにも,この問題に関する正確な情報を長期にわたって伝え続けることが求められている。