「コロッケ泣いた」

2020年6月1日

作:森 浩美

日頃なかなか交流のない弟からの突然の電話。いぶかる姉におずおずと切り出したのは「悪いんだけど、コロッケ作ってくんない?」。
実はコロッケには。姑にいじめ抜かれて苦労した今は亡き病身の母と姉弟との切ない思い出があった。姉が作るコロッケに寄せる弟の思いとは…。

語り:白鳥哲也

「幸せな人」

2020年6月8日

作:野坂 律子

(2019年5月27日放送のアンコール)

経営する会社の存続を揺るがす不祥事に加え、突然の母の脳梗塞にる言語障害。仕事でも私生活でもトラブル続きの横田幸大(よこた・こうだい)。人生50年を過ぎ、父親から引き継いだ食品メーカーの社長の椅子に座った。これまで特に不自由もなく人生を謳歌した幸大が初めて迎える試練だった。
病気のため話すことができなくなった母・夏子。そんな中、夏子宛てにある奇妙な手紙が届く。手紙の送り主から母の過去を探り始めた幸大。
母親の真実を始めて知った息子は、どん底から再び前向きに人生を歩み始める。

語り:松岡 孝行

「はめ殺し窓」

2020年6月15日

作:向田邦子

異動で閑職となった江口は、くたびれた家の2階をふと見上げると、“はめ殺し窓”から、自分の母親のタカそっくりになった、一人娘の律子がのぞいていたのに気がついた。一番似てほしくない人間にますます似てきた…。江口は娘の姿を見て、5年前に亡くなった生前のタカの姿を思い浮かべてゆく。痩せて貧相な父に対し、母タカは背が高く、美貌の持ち主であった。しかも、父以外の男性とも関係が…。嫉妬に苦しんだ父の人生。父の二の舞にはなりたくない。そう誓った江口であったが、次第に自分でも気づいていなかった母タカへの思いを知るのである。

語り:宮崎大地

「永き水曜日の休息」

2020年6月22日

作:吉田篤弘

額の広さから子供の頃から「デコ」というあだ名のある「わたし」。ただ一人、そのおでこに惚れてくれた夫が2年前に突然亡くなってからは、司書として勤める図書館の休館日である水曜日の休息が、あまりにもながく感じられてきた。そんな私を救ってくれたのは図書館の棚にひっそりと並んでいた『曇り空』という一冊の本。本が語りかける声に耳をすまし、一行一行読み進めるうちに、いつしか凝り固まった気持ちが自然とほぐれていく…。

語り:岩槻里子

「最後の親孝行」

2020年6月29日

作:谷口雅美

(2019年2月18日放送のアンコール)

大阪から東京にでてきて13年、一人暮らしを続ける郁美は、会社の健康診断で、余命1,2年の病気であることを知り、一人淡々と治療を続けていた。しかし住み慣れたアパートの取り壊しが決まると、急に心もとなくなり、大阪・高槻の実家に向かう。父に会えば上京当時の「誰にも頼らず一人でやっていく」という気持ちが蘇ると思ったのだ。
 実家で一ヶ月滞在することを告げた郁美に、父が持ってきたのは、100個の穴が開いた木製の「カウントダウンボード」。郁美は、自分の命のカウントダウンも想起させるそのボードを前にうまく笑うことができない。
郁美は両親に病気のことは伝えないつもりだったが、父が勝手に設けたお見合いをきっかけに口論となり、郁美は自らの病気と余命のことを両親に伝える。そのことをきっかけに父は部屋に閉じこもって何かを切ったり削ったりする作業を始めた。一ヶ月が過ぎ、郁美が東京に戻る日。父が郁美に差し出したそのプレゼントは、郁美の残された時間を優しく支えるものとなるのだった。

語り:北郷三穂子