貝殻(かいがら)

2019年7月1日

作:三浦綾子

「わたし」は、不幸な結婚生活を経て、自分の死に場所を求めていた。生まれ育った町、旭川から稚内行きの汽車に乗り、さらに途中の浜頓別で降りて北見枝幸行きの支線へ。その車内で会ったのが安さんだった。
安さんは不思議な人だった。柔和で澄んだ目をしていた。知的障害のある安さんは、集落の人たちに愛され、打算的な生き方をしない。そういった生き方に触れていく中で、「わたし」の心は徐々に落ち着いていった。戦火が激しくなる中で「わたし」は苦しいながらも幸せな生活を送る。一方で、安さんは不幸な亡くなり方をしていたのだった。
10年ぶりに訪れた安さんのいないオホーツクの海を眺めながら「わたし」は立ちつくす。

語り:山田朋生

(くし)

2019年7月8日

作:曽原紀子

(2018年6月11日のアンコール)

50歳を目前にした会社員の主人公。
子宮筋腫の手術を前に、20年ぶりに、別れた夫に会うため京都に向かう。
待ち合わせたのは、6歳で逝った娘ともども通った思い出の寺。
息苦しいほどに見事な紅葉の中で、主人公が確かめたかったこととは――。

語り:白鳥哲也

「あわいの花火」

2019年7月15日

作:安堂 玲

毎年8月20日に仙台市の広瀬川で開かれる灯籠流しと花火大会。
震災で家族を失った12歳の晴也(はるや)と彼を引き取った伯父の旗瀬勇一(はたせ ゆういち)が花火が始まるまでの時間に織りなす会話に、震災に対するやり場のない複雑な思いが現れる。
二人の家族は、宮城県の沿岸、七ヶ浜町で津波に襲われ、亡くなった。他人からの悪気のない慰めに傷つき、とまどう日々を送ってきた晴也。発生した直後だけでなく、その後も震災と向き合いながら暮らして行かなくてはならない現実があった。

語り:柴田 徹

休止

2019年7月22日

夜半亭有情(やはんていうじょう)

2019年7月29日

作:葉室 麟

(2018年8月13日のアンコール)

夜半亭とは江戸時代の俳諧の一派で、三代続いた。蕪村は二世。
この作品は、与謝蕪村の隠された恋の話。高齢で妻子もいる蕪村だが、若き「小糸」に心を寄せていた。
同じころ、蕪村の家を覗きにくる一人の男がいた。その男の顔は、小糸に似ており、小糸の縁者ではないかと蕪村は推測する。しかし、男は蕪村が若いころに恋の炎を燃やした相手・美和との間にできた息子だった。
息子に会うことで、自身も忘れていた恋の記憶がよみがえり、幸薄い息子の生き方が自身の人生と重なる。

語り:塩田慎二