一球譚(いっきゅうたん)

2019年8月5日

作:赤瀬川 隼

(2018年5月7日放送のアンコール)

「我輩はタマである。」の書き出しから始まり、野球の球を主人公に見立てた短編小説。彼の幸せは野球の試合で躍動することだった。昭和16年の横浜で、「タマ」は家族に愛され大切にされていたが、やがて戦争の色が濃くなり、"お守り"として戦地であるマレー半島へと赴くことになる。戦場の束の間、兵士たちが野球を始めるのだが、そこへ敵機の爆音が近づいていた…。

語り:小川浩司

「TKGホワイトオムライス」

2019年8月12日

作:辻 仁成

元料理人のサトジが居酒屋で一目惚れした女性と14年ぶりに再会する。彼女の名はマヨ。いまは離婚を経験し、一人娘のウフとふたりで静かに暮らしていた。別れの理由は夫の横暴なふるまい。そのことがウフのこころの傷にもなっている。決して豊かとはいえない母娘の暮らしだが、ともに卵が好物で…。

語り:廣瀬智美

「姥捨」

2019年8月19日

作:太宰 治

2018年6月18日放送のアンコール

太宰治が、不倫した妻・初代と起こした心中事件をモデルに書いた私小説的な短編。あやまった人を愛撫した妻「かず枝」と、妻をそのような行為にまで追いやるほど日常の生活を荒廃させてしまった夫「嘉七」は、お互い身の結末を死ぬことによってつけようと、かつて2人でひと夏を過ごした谷川温泉を訪れる。嘉七は妻への思いから「死ぬのは自分だけでいい」と迷い始めるが、かず枝は常のようにふるまいながら決意を変えない。
林で大量の催眠剤を飲んで横たわった二人の迎えた結末は…?

語り:丹沢 研二

「母帰る」

2019年8月26日

作:重松 清

家を出た母に、戻ってきてほしいと願う父。それに反対する姉の和恵が弟の拓己に電話をかける。主人公の拓己は、37歳。 10年前に、33年連れ添っていた母が父に離婚をつきつけ、拓己は母への憎しみも感じていた。 離婚の理由は、和恵の産んだ孫を抱き、拓己の結婚を見届けた今、後は自分の好きなように生きたいという思いからだった。 父は理由を問い詰めたり、反対したりすることなく、離婚を受け入れた。 そして、10年後。母が新たに連れ添った相手が亡くなり、そのことを知った父が母に家に帰ってこないかと提案する。 拓己も和恵も反発し、なぜ父がもう一度母と暮らしたいと言い出すのかと戸惑いやいらだちを感じていた。 拓己と和恵は一人で暮らす父のもとへ出向き、その真意を確かめる。

語り:杉嶋 亮作