「わか葉の恋」

2019年6月3日

作:角田光代

(2018年4月16日放送のアンコール)

沢渡友佳は、バツイチの41歳独身女性。恋愛の酸いも甘いも知った彼女が「大人になったんだなあ」と思うのは、仕事帰りに近所の飾り気のない定食屋「わか葉」で、一人、おろしカツ定食を食べる時だ。その定食屋で、大学生位の齢の男性と顔馴染みになる。そしていつしか、その若者に、恋にとてもよく似た気持ちを抱くようになる。どこにも発展しない、小さなオトナの片想いを描く。

語り:高橋さとみ

「群青」

2019年6月10日

作:原田 マハ

美術館が自分の家ならいいのに、と思うほど、幼いころから美術に熱中してきた美青。ニューヨークの名門メトロポリタン美術館、通称メトで働き始めて5年が経つある日、緑内障で近い将来視力を失うことを告げられる。絶望する美青は、病院で出会った極度の弱視の女の子のことを思い出す。顔を美術絵本にこすりつけるようにして絵に見入っていた少女に、キャリアを重ねるうち、純粋でひたむきな美術への愛情を忘れかけていたことを気づかされる。

語り:鹿島綾乃

「首吊りご本尊」

2019年6月17日

作:宮部みゆき

舞台は江戸の呉服問屋。丁稚奉公のつらさから家に逃げ帰った11才の男の子に、年老いた大旦那はある掛け軸を見せる。描かれていたのは、笑顔で首を吊る男、「首吊り御本尊」だった。
一代で大店を築いた大旦那は、幼い頃、丁稚としてやはり家に逃げ帰った経験を持っていた。そして、当時の番頭さんに「神様」だという首吊り御本尊の話を聞いたと明かす。少年が苦難を、そして親に見捨てられたとの思いを周囲の優しさを支えに乗り越えるストーリー。

語り:入江憲一

「足引山異聞」

2019年6月24日

作:阿刀田 高

夫の研二は、左右非対称の「足引山」に強い関心を示し、同じような形の石を拾って部屋に飾っていた。足引山は中高生のころ夫が自分の部屋から眺めていた山である。妻の修子は、何かにつけてその山に強いこだわりを見せる夫に興味の一つとして理解を示していた。ところが、研二が急逝した後、夫が中学時代、足引山で事件を起こしていたことを親友から告げられる。しかも実直な夫からは想像もできない女子生徒との心中未遂事件だった。裏切られた思いから妻は、夫が大切にしていた足引山の形をした石を捨てずに、意外なものに活用する。

語り:山下俊文