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ゼロから見直す防災 自宅は安全な場所?ハザードマップ・耐震性

2024年4月26日

入学・入社から転勤、転居など新たな環境へと暮らしが変わる季節。見直したいのが防災対策です。あなたの家にどんな地震や水害のリスクがあるか知っていますか? ハザードマップのチェックの仕方や、住宅の耐震性について紹介します。

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ハザードマップで自宅の災害リスクをチェック!

引っ越しのとき、自宅の災害リスクを知るために、まずするべきことは何でしょうか?
まず最初は、ハザードマップを見ることです。

ハザードマップは各市区町村が作成・公表しています。いくつかの種類があり、住んでいる地域の自然災害のリスクがひと目でわかります。

洪水ハザードマップ、高潮ハザードマップ、津波ハザードマップ、土砂災害ハザードマップ、ため池ハザードマップ、揺れやすさマップ

こちらは水害の危険度がわかる「洪水ハザードマップ」。

洪水ハザードマップ

色のついているのが、浸水が想定される区域。過去には想定とほぼ同じ被害が発生したケースが多くあります。

浸水想定区域

2018年の西日本豪雨で大きな被害が出た岡山県倉敷市真備町。ハザードマップでは赤いエリアに浸水が想定されていましたが、それに実際の浸水範囲を重ねると、ほぼ一致していました。

ハザードマップの浸水範囲と西日本豪雨での浸水範囲がほぼ一致

2019年の台風19号。長野県では千曲川が決壊し、広い地域で浸水被害が出ました。ピンクで示されたハザードマップの浸水が想定される範囲に、青の浸水したエリアが含まれているのがわかります。

「最近は、不動産取引の際に不動産の仲介業者は水害のハザードマップを説明する義務があります。水害のリスクの有無は重要になっています」(危機管理教育研究所代表・国崎信江さん)

ハザードマップの浸水範囲に、千曲川の決壊によって浸水したエリアが含まれていることがわかる

土砂災害ハザードマップ」では、土砂災害の危険がある場所もわかります。色の付いているのが「土砂災害警戒区域」など、リスクがある場所です。

土砂災害警戒区域

西日本豪雨では、土砂災害による死者・行方不明者のおよそ9割が、ハザードマップで危険性が指摘されている場所で被災しました。

地震のリスクを示すハザードマップには、「津波ハザードマップ」「揺れやすさマップ」「液状化マップ」があります。

津波の浸水域、揺れやすい場所、液状化の危険がある場所

「津波ハザードマップ」では、想定された最大規模の地震での津波の浸水範囲と深さが色分けされています。

津波ハザードマップ

「揺れやすさマップ」は、首都直下地震を想定したマグニチュード7.3の地震が起きた場合に、どこが揺れやすいかが色分けで示されています。家屋の倒壊などのリスクはこのマップで確認できます。

揺れやすさマップ

地盤沈下や傾斜などの被害が起きる液状化は、海岸や川沿い以外でも起きる場所はありますので、「液状化マップ」で確認しましょう。

液状化マップ

ハザードマップは自治体の窓口などで入手できます。

ハザードマップは自治体窓口で入手が可能

インターネットでは、国土交通省の「重ねるハザードマップ」「わがまちハザードマップ」「NHK全国ハザードマップ」が便利です。災害時にはインターネットがつながらないことがありますので、事前の確認が大切です。

【参考】
ハザードマップポータルサイト(国土交通省/国土地理院)
重ねるハザードマップ
わがまちハザードマップ
 ※NHKサイトを離れます

ハザードマップポータルサイト


NHK全国ハザードマップ

NHK全国ハザードマップ

Q.水害リスクのある場所に住んでいる場合はどうしたらいい?

A.ハザードマップで避難情報を確認しましょう。
「逃げ遅れないように避難するタイミング、避難する場所、さらに、そこまでの安全な経路もチェックしましょう」(国崎さん)


地盤リスクを地盤マップで知る

自分の住んでいる場所の地震災害のリスクを知るには、軟弱な地盤がどこにあるかを知ることが重要です。

最新のデータを利用した“地震診断マップ”を使えば簡単に地盤を知ることができます。

地盤サポートマップ

WEBサイトにアクセスして、住所を入力すると、地盤情報が出てきます。
地盤の強さが細かく色分けされて示されています。黒い点が強い地盤、ピンクは弱い地盤を示しています。

住所を入力して、地盤情報を表示

【参考】
地盤サポートマップ
※NHKサイトを離れます

Q.ハザードマップを活用する上でポイントは?

「ハザードマップは、科学的な知見で考えうる最悪の想定で作られていますが、想定以上の災害が起こる可能性もあります。想定外のことを常にシミュレーションしながら、安全な行動、備えを考えてください。また、民間の提供するサポートマップには注意事項が必ずありますので、よく読んで活用してください」(国崎さん)


自宅の耐震性を確認するには?

住宅の耐震性の目安には3つの基準があります。
1981年5月以前が「旧耐震基準」。
そしてそれ以降から2000年5月までは「新耐震基準」。
2000年には、さらに厳格化された「現行の耐震基準」になっています。

1981年5月以前「旧耐震基準」、1981年6月から2000年5月まで「新耐震基準」、2000年6月以降「現行の耐震基準」

「1995年の阪神淡路大震災で倒壊した建物のほとんどが、1981年の5月以前の旧耐震基準で建てられた家屋でした。それを受けて2000年には、新耐震基準からさらに厳格化した基準ができました」(国崎さん)

耐震性が気になる家に住んでいる、また住むことになった場合には、家の耐震診断耐震補強をする手段があります。国や自治体も後押しをして、住宅の耐震化を進めています。

■自治体による耐震化の取り組み

静岡県ではすべての自治体で住宅の耐震診断を行っています。診断の対象は、1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅で、費用は無料です。

静岡市では、2022年度(令和4年度)に230件だった耐震診断の申し込みが、能登半島地震の発生から1か月で129件に上りました。

耐震診断の申し込み(静岡市)令和4年度230件→能登半島地震から1か月で129件

「能登半島の地震があったのを見て、ちょっと怖いと感じた。説明をしてもらったら、住んでいるのが怖い。(補強工事を)やったほうがいいとひしひしと感じました」(耐震診断を受けた住民)

静岡県は、南海トラフ巨大地震による被害想定で、住宅建物の倒壊による死者数は最悪の場合7800人に上ると推計しています。

静岡県 住宅建物の倒壊による死者数、最悪の場合7800人にのぼると推計

県は23年前に「TOUKAI-O(東海・倒壊)(とうかいゼロ)」プロジェクトを立ち上げ、耐震診断のほか、補強工事を行う場合には一般世帯へ最大100万円の補助などを行っています。
その結果、開始当初2003年に73パーセントだった住宅耐震化率は、2018年には89パーセントまで上昇しました。

静岡県の住宅耐震化率 73パーセント(2003年)→89パーセント(2018年)

一方、高知県では、必要な箇所に絞った低コストの工事を進めることで耐震化工事を増やしています。静岡県と同じように南海トラフ巨大地震への危機感があるためです。

1969年(昭和44年)に建てられた住宅の工事では、費用のかかる基礎のつくり直しをせず、外側に新たな基礎を作って、金具で固定しました。

基礎をつくり直さず、新たに作って金具で固定

天井や床を壊すこともしません。硬い板を柱に打ち付けて補強します。

天井・床も壊さず、板を柱に打ちつけ補強

高知県では耐震工事への補助金も増やしました。この改修工事の持ち主負担は15万円だったと言います。

こうした取り組みの成果は確実に出てきています。
高知県の黒潮町出口(いでぐち)地区では、79軒ある古い住宅の耐震化率が8パーセント(2020年)から、2024年には81パーセントになりました

さらに、耐震化と合わせて、津波から確実に逃げるための備えを進める人も出てきたといいます。高台への避難路にすぐに出られるように、自宅に新たな裏口を設置した住民もいます。

「耐震化が進んでいく中で、もうひとつ頑張って、『揺れが収まったあとには、津波から逃げてみよう』ということで、ずいぶん意識が変わったと思いますし、希望が芽生えているのではないかと思いますね」(出口地区の元区長 山沖幸喜さん)

Q.新耐震基準の住宅は耐震診断を受けなくてもいい?

A.地震のダメージが見られる場合、診断が必要です。

「昨今、地震がたくさん起きています。能登半島でも2022年から3年連続で大きな揺れに見舞われて、建物もダメージを受けていました。新しい家であっても、外壁や基礎などにひびが入ってないかなど、しっかりと耐震診断をしていただきたいと思います」(国崎さん)

■各自治体の助成制度

自治体によっては、住宅の耐震化以外での対策にも補助金が出る制度があります。

静岡県の場合、建て替え・補強工事の耐震化以外の対策として、例えば住み替えや防災ベッドや耐震シェルターの設置の補助があります。(市町によって異なります)

静岡県の助成制度
静岡県の助成制度

防災ベッドと耐震シェルターは、室内に設置して家屋の倒壊から命を守るものです。

耐震シェルター、防災ベッド

室内に設置した耐震シェルター
室内に設置した耐震シェルター

静岡県以外にもこういった助成制度を設けている自治体があります。ホームページなどで調べてみることをおすすめします。

この記事は、明日をまもるナビ「新生活スタート ゼロから見直す防災」(2024年4月28日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

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