NHK防災 メニューへ移動 メインコンテンツへ移動

車中泊避難を快適にするには?災害時の車の使い方(2)

2021年11月25日

コロナ禍で密を避けるために、全国の自治体が避難所の収容人数を減らさざるをえなくなっています。そこで注目されているのが「車中泊避難」。しかし狭い空間で長時間過ごすと起こるエコノミークラス症候群が問題となっています。また車中泊ならではの夏場や冬場の対策も必要です。被災地での経験も豊かなキャンプの専門家から、誰でもできる車中泊避難を快適にする方法を学びます。

この記事は、明日をまもるナビ「災害時 車をどう使うべきか」(2021年11月21日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、車中泊避難で気をつけること
▼車中泊避難で心配なエコノミークラス症候群は、頭と足を水平に伸ばせる段ボールベッドで防ぐ
▼真夏の車中泊避難は熱中症対策が肝心。フロントガラスを外側から覆って車中温度を上げない
▼家にあるキャンプ用品を車に積み込むといざというときの防災グッズになる


車中泊避難のリスク エコノミークラス症候群

車中泊をするとき、深刻な問題になるのが「エコノミークラス症候群」です。
長い時間、同じ姿勢で足などを低い位置に曲げた状態で寝ていると、ふくらはぎなどの血行が悪くなり、血栓ができます。その血の塊が肺の血管に移動して詰まると、激しい胸の痛みに襲われ、最悪、死に至ることもあるのです。

エコノミークラス症候群 長い時間同じ姿勢で脚などを低い位置に曲げた状態で寝ていると

ふくらはぎなどの血行が悪くなり血栓ができる

血栓が肺の血管に移動して詰まると激しい胸の痛みに襲われ、最悪、死にいたることも

2016年の熊本地震の時、地震が起きた4月14日から6月13日までの2か月間で、熊本県内でエコノミークラス症候群により入院を必要とした人は、51人。そのうち42人が車中泊避難者でした。
症状の出たタイミングは一緒で、車から降りた瞬間に胸が苦しくなったということです。

基本的な対策は次の3つになります。

  1. こまめに水分を補給する
  2. 車外で適度な運動をする
  3. 頭と脚を水平に伸ばして寝る

エコノミークラス症候群の予防法
エコノミークラス症候群の予防法

これは便利!車内に「段ボールベッド」を作る

カーキャンプ歴40年以上という日本RV協会の高森裕士さんは、段ボールを使ってエコノミークラス症候群を解消する方法を被災地で教えています。
「支援物資の入っていた段ボールであれば、容易に調達できるのではないかなと考えました」(高森さん)

用意するもの:段ボール箱・新聞紙・ビニール袋・テープ・カッター・マジックペン・定規
用意するもの:段ボール箱・新聞紙・ビニール袋・テープ・カッター・マジックペン・定規

ポイントはシートの座面の傾斜を解消することです。

段ボールベッドの作り方
①ヘッドレストを外して、シートをできるだけ倒す。
(>ボタンで画像をスライドできます)
段ボールベッドの作り方
②段ボールを組み立て、テープで仮止めする。
段ボールベッドの作り方
③後部シートのへこんでいる所に段ボールを置く。
段ボールベッドの作り方
④背もたれの一番高い部分と段ボールの上の面が水平になるようペンで印をつける。
段ボールベッドの作り方
⑤印をつけた横のラインまで縦に4か所切り込みを入れる。
段ボールベッドの作り方
⑥カッターの刃を出さず、横のラインに沿って段ボールの表面に傷をつける。(切断しない)
段ボールベッドの作り方
⑦カッターで作った折り目で折り曲げて形を作る。
段ボールベッドの作り方
⑧テープで仮止めして、シートに置いてみる。
段ボールベッドの作り方
⑨強度を増すため、箱の形に合わせて縦横数枚ずつカットした段ボールを、格子状に組み合わせて箱の中に詰める。
段ボールベッドの作り方
段ボールベッドの作り方
⑩再び蓋をして、テープでしっかり本止めする。体全体を支えるのに十分な硬さになる。
段ボールベッドの作り方
⑪前後部シートの座面、背もたれ、足元の隙間などを、同じように作った段ボールで埋めていく。
※番組中で用意したのは前部シート座面用×台形2個、後部シート座面用×台形2個、背もたれ用×長方形4個、前部足元隙間用×長方形2個
※番組中で用意したのは、前部シート座面用×台形2個・後部シート座面用×台形2個・背もたれ用×長方形4個・前部足元隙間用×長方形2個
段ボールベッドの作り方
⑫最後に厚手の段ボールをマットのように敷き詰めれば完成!

足を伸ばして寝られるので、エコノミークラス症候群の予防になります。


夏場は「熱中症対策」が必要!

車中泊避難は季節によっても注意が必要です。
夏の気温の高い中での車中泊避難では、熱中症対策が大切です。熱対策のために、ガラスを覆うことが必要になってきます。

熱中症

●段ボール「日よけシェード」の作り方

ここでも段ボールを使います。
フロントガラスを覆う市販の日よけシートもありますが、今回は段ボールで作り、フロントガラスを「外側から」覆います。外側に置くことでガラスが太陽光で熱くならないので、熱対策の効果が高くなります。


《フロントガラス》

段ボール「日よけシェード」の作り方
①フロントガラスの中心部分にテープを貼り、ペンで印をつける。
(>ボタンで画像をスライドできます)
段ボール「日よけシェード」の作り方
②ガラスの曲がった面にしっかり段ボールをあてて型をとる(段ボールをガラスにぴったりあてると断熱効果がアップ)。左右対称なので型取りは片方だけ。
段ボール「日よけシェード」の作り方
③段ボールを型どおりにカットしたら同じものをもう一枚作る。
段ボール「日よけシェード」の作り方
④雨にぬれても大丈夫なようにビニールのゴミ袋などで包む。
段ボール「日よけシェード」の作り方
⑤袋の端は余らせて、テープで留める。
段ボール「日よけシェード」の作り方
⑥袋で包んだ2枚をつなぎ合わせる。(真ん中で折りたためるので持ち運びに便利)
段ボール「日よけシェード」の作り方
⑦フロントガラスの上にのせ、ワイパーで押さえる。
段ボール「日よけシェード」の作り方
⑧余った袋の端をドアと車体の間に挟みこんで、
段ボール「日よけシェード」の作り方
⑨固定して完成。

《左右の窓》

段ボール「日よけシェード」の作り方
①内側から押し当てた新聞紙の端を、ガラスに沿って折り曲げながら型をとる。
(>ボタンで画像をスライドできます)
段ボール「日よけシェード」の作り方
②新聞紙と同じ大きさに段ボールをカット。
段ボール「日よけシェード」の作り方
③段ボールを窓の内側からはめれば着脱が簡単に。
同じように残りの窓も埋めていく。

こうすることで、太陽の光が中に入りにくくなりますし、プライバシー保護の目隠しとしての効果もあります。夜寝るとき、外の明かりが気になることもありません。

昼間は、できれば日陰に駐車するなどの対策も心がけましょう。


冬場は「低体温症」と「一酸化炭素中毒」に注意!

冬の車中泊で気をつけるべきことは、低体温症と一酸化炭素中毒です。

冬場の車中泊避難注意点 低体温症 一酸化炭素中毒

真冬の車中泊避難は、とにかく事前準備が必要です。
「私の場合、携帯カイロやエマージェンシーシート、あとは毛布などを事前に用意しておきます」(高森さん)

真冬の車中泊に備える用品
真冬の車中泊に備える用品

●エマージェンシーシート
アルミニウムが蒸着したポリエステルフイルムを使用した、小さく折りたためるシートです。身体に巻いて、熱を外に逃がさない保温機能があります。

エマージェンシーシートを広げる高森裕士さん
エマージェンシーシートを広げる高森裕士さん

●携帯スコップ
排気ガスマフラーのところに雪が積もって、車の下の空間に排気ガスがたまると、車の中にガスが入ってしまい、一酸化炭素中毒を起こす危険性があります。どうしてもエンジンをかけなくてはいけない状況では、携帯スコップでこまめに雪かきをします。

マフラーが雪で塞がると排気ガスが車の中に入る危険が
マフラーが雪で塞がると排気ガスが車の中に入る危険が

ふだんからキャンプをする人は、家にあるキャンプ用品を車に積み込んでおくと、いざというときの防災グッズになります。

【参考】高森さんの車中泊避難用グッズ
作業用手袋・携帯コンロ・携帯トイレ・飲料水・ゴミ袋・LEDランタン・工具類

高森さんの車中泊避難用グッズ
高森さんの車中泊避難用グッズ

また、最近普及してきた「ポータブル電源」を用意しておくと、エンジンをかけずに車の中で電気毛布などの電化製品を使えます。自宅での停電にも対応できます。

充電式のポータブル電源
充電式のポータブル電源

「まずは自宅のガレージなどで、いざという時の想定をして、車中泊をしてみてはいかがでしょうか」(高森さん)

【参考】
明日をまもるナビ
必須!防災グッズをチェック(1)家庭の災害備蓄品リスト 10の必需品
必須!防災グッズをチェック(3)災害時の車中泊を快適に過ごすためのグッズ3つ

▼前編はこちら
車でどう避難する?災害時の車の使い方(1)

NHK防災・命と暮らしを守るポータルサイト
NHK防災・命と暮らしを守るポータルサイト

シェア