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5つの防災体験施設 親子で楽しく学ぼう!

2022年7月15日

私たちはさまざまな災害のリスクにさらされています。しかし、実際に災害に襲われたとき、どのように行動したらよいのか。そこで今回は、親子で疑似体験しながら楽しく学べる防災体験施設を紹介!自分の命をどう守るか?体験することで見えてくる、災害への備えについて考えます。

この記事は、明日をまもるナビ「防災体験施設に行こう! 災害への備えを学ぶ」(2022年7月10日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、防災体験施設の活用法
▼防災体験施設は日本全国に160か所以上ある。
▼施設で体感して、身をもって災害を知ることも大切な防災の学習方法。
▼伝承型の施設が増えた大きなきっかけは1995年の阪神淡路大震災。


防災体験施設とは

防災体験施設は大きく分けると「体験型」と「伝承型」の2種類があります。

「体験型」は、地震や土砂災害、風水害のような自然現象を疑似的に体験して、五感で感じる施設です。

「伝承型」は、災害が起きた被災地に多く建てられています。どんな災害が過去にあったのか、被災者の思いなども紹介する施設です。

防災体験施設は、日本全国に160か所以上あります。

全国の主な防災体験施設の所在地(赤い点)
全国の主な防災体験施設の所在地(赤い点)

【参考】
市民防災ラボ「日本全国の防災体験館データ」 ※NHKサイトをはなれます

防災体験施設に詳しい、兵庫県立大学大学院・減災復興政策研究科教授の阪本真由美さんに、その役割と意義を聞きました。

「防災体験施設の役割は、まさに“疑似体験”。五感で感じるところがとても大事です。こういう施設での体験は、防災に対する気持ちの変化にもつながります。まさに、“他人ごと”から“自分ごと”に、人ごとではなくて自分のこととして捉えて、備えることができるようになります」(阪本さん)

兵庫県立大学大学院・減災復興政策研究科教授 阪本真由美さん
兵庫県立大学大学院・減災復興政策研究科教授 阪本真由美さん

また、「減災」を学ぶことができるのも体験施設の特徴のひとつ。
「減災」とは、自然災害をハード(堤防などの防災インフラ整備)で防ぎながら、それを超えて被害が出そうな時に早めの避難をすることや、知識を持っておくことで、少しでも被害を減らそうという考え方です。

東日本大震災の後に学習指導要領が改訂され、防災教育はすべての教科に取り入れられています。いま、社会科見学で防災施設を訪れるなど、教育の現場でも、防災体験施設が活用されています。


災害を五感で感じる「体験型施設」


1.本所防災館

墨田区にある「本所防災館(ほんじょぼうさいかん)」は、東京消防庁が運営する施設です。都市部で起きるさまざまな災害への備えを疑似体験しながら学べます。

本所防災館

▼場所
東京都墨田区横川4-6-6
▼交通アクセスや開館時間など、詳しい情報はHPにて
https://tokyo-bskan.jp/bskan/honjo/ ※NHKサイトを離れます
※防災体験ツアー・イベント等へ参加するには、電話またはWebでの事前予約が必要です。

●地震体験コーナー

まずは地震体験コーナーへ。昨年のリニューアルで導入された最新の起震装置で、過去に国内で起きた地震の揺れを忠実に再現します。壁にも室内や屋外での地震の映像が同時に映し出すことで、よりリアルに体感できます。

地震体験コーナーの最新式起震装置
地震体験コーナーの最新式起震装置

例えば、2018年の北海道胆振東部地震。最大震度7の揺れを体験すると、立っていられず、うずくまる参加者が相次ぎます。

副所長の田村さんが教えるダンゴムシのポーズ
副所長の田村さんが教えるダンゴムシのポーズ

こんなときにぜひ取りたいのが、体を守る「ダンゴムシのポーズ」。家の中で大きな揺れに襲われたとき、ダンゴムシのように小さく丸まり、頭を守りながら、揺れが収まるのを待ちます

ダンゴムシのポーズ
ダンゴムシのポーズ

体験に基づく知識があると、いざ地震を起きても落ち着いて行動できるようになります。

●煙体験コーナー

煙体験コーナー

このコーナーでは、吸い込んでも無害な煙が充満した部屋の中を避難します。

しかし、実際の火災現場の煙には、吸い込むと危険な有毒ガスが含まれ、最悪の場合、一酸化炭素中毒に至るため、注意が必要です

室内の上部には煙が充満しています。煙を吸わないように姿勢を低く歩いていきます。誘導灯の光を目標に屋外への避難を試みます。

煙が充満した部屋を進む
煙が充満した部屋を進む

続いて、停電になり、真っ暗になった部屋を避難します。先が見えない中、壁を頼りに手探りで進んでいきます。

なんとか脱出したところで、副所長の田村さんからこんな質問が…。
「煙の中で、なにか匂いがしましたか?」

実はここで匂いが分かったら、危険なガスを吸い込んでしまったことを意味するのです。

そこで火災時の正しい避難姿勢を学びます。
姿勢を低く、ハンカチなどで口と鼻を覆って進みましょう」(田村さん)
片方の手を体より前に出すことで、暗闇でも障害物を避けながら避難することができます。

副所長の田村さんが実演する火災時の正しい避難姿勢
副所長の田村さんが実演する火災時の正しい避難姿勢

●暴風雨体験コーナー

続いて体験するのは「暴風雨」。人工的に雨と風を再現する、都内ではここだけの設備です。

まずは大型台風クラスの風速30メートル、時間雨量50ミリの暴風雨です。この強さは大人だけが体験できます。

暴風雨体験の様子

このクラスの台風では、前を見るどころか、目を開けることも困難に。台風の最中に避難することがいかに危険か、身をもって知ることができます。

子どもが体験できる風速10メートル、雨量30ミリもバケツをひっくり返したような激しい雨です。

●都市型水害体験コーナー

地下のドアが浸水して水圧がかかっている想定でドアの開放にチャレンジ。わずか30センチメートルの水の深さでも、水圧がかかりドアがとても重くなることを体感できます。

わずかな水深でも水圧でドアが重くなって開けづらくなる
わずかな水深でも水圧でドアが重くなって開けづらくなる

他にも、実際の火災をシミュレートした大型のスクリーンを相手に、消火器または屋内消火栓の使い方を覚えられる「消火体験コーナー」などもあります。

こちらの施設では、防災体験をひとつ終えるごとに子どもたちに人気の「消防車両のカード」がもらえます。5枚集まると「修了証」がもらえます。

消防車両のカード

東京消防庁では、池袋、立川にも防災館があり、防災体験ができます。

■池袋防災館(東京都豊島区西池袋2丁目37-8) ※NHKサイトを離れます
■立川防災館(東京都立川市泉町1156番地の1) ※NHKサイトを離れます


2.そなエリア東京

そなエリア東京

ここで体験できるのは、首都直下地震を想定した体験ツアー。震災直後の街並みがジオラマで表されています。

大震災が発生したときにどう行動すればいいのか、参加者はタブレットでクイズに答えながら、地震からの避難を疑似体験できます。

震災直後を再現したジオラマ

▼場所
東京都江東区有明3丁目8番35号
▼交通アクセスや開館時間など、詳しい情報はHPにて
https://www.tokyorinkai-koen.jp/sonaarea/ ※NHKサイトを離れます


3.京都大学防災研究所 宇治川オープンラボラトリー

京都大学防災研究所 宇治川オープンラボラトリー

京都大学の研究施設です。水害に特化した本格的な施設で、最大300ミリの豪雨体験や地下浸水時の階段の歩行体験もできます。
ふだんは研究施設のため、一般公開の情報は施設のホームページで確認してください。

実物大階段模型で流れ落ちる水流と地下空間からの避難を体験

▼場所
京都府京都市伏見区横大路下三栖東ノ口
▼公開予定、交通アクセスなど詳しくはHPにて
https://rcfcd.dpri.kyoto-u.ac.jp/openlab/ ※NHKサイトを離れます


災害の記憶をつなぐ「伝承型施設」

続いて紹介するのが「伝承型」施設。こちらはここ30年の大規模災害と関連した施設です。地震災害、豪雨災害、さらに火山の噴火もあります。中でも多いのが、2011年の東日本大震災に関連する施設で、現在50か所以上あります。

東日本大震災の被災地に多い伝承型施設
東日本大震災の被災地に多い伝承型施設

この伝承型の施設が増えた大きなきっかけが1995年に起きた阪神・淡路大震災です。
神戸市にある「人と防災未来センター」は代表的な施設です。


1.人と防災未来センター

人と防災未来センター

▼場所
兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2
▼交通アクセス・開館時間・入館料など詳しい情報はHPにて
https://www.dri.ne.jp/ ※NHKサイトを離れます

この施設は、阪神・淡路大震災の経験と教訓を後世に伝え、これからの備えを学ぶために2002年につくられました。

甚大な被害をもたらした1995年の阪神・淡路大震災
甚大な被害をもたらした1995年の阪神・淡路大震災

●震災の記憶フロア

震災の記憶フロア

このフロアには、写真や生活雑貨など、当時の被害を物語る品々が展示されています。
展示品のほとんどが被災者から寄贈されたもの。提供者の体験談とともに、展示品を通して震災を追体験できるようになっています。

被災者から寄贈された展示品
被災者から寄贈された展示品
折れたゴルフクラブ
折れたゴルフクラブ

地震の衝撃で折れてしまったフルートやゴルフクラブ。かつて人々が行き交った商店街の看板は、火災で溶け原型をとどめていません。
震災では、建物の倒壊だけではなく、その後の火災が多くの人々の命を奪いました。

炎で溶けた商店街の看板とかつての姿
炎で溶けた商店街の看板とかつての姿

展示品からは、寄贈した被災者の想いを読み解くこともできます。
寄贈品の数はおよそ26万点。震災から20年以上たった今でも寄贈する人は絶えません。
展示品以外にもたくさんの資料があり、申請すれば閲覧することもできます。

●防災・減災ワークショップ

続いて、2階の防災・減災 体験フロア「防災・減災ワークショップ」です。ここでは、実験やゲームを通して、防災・減災に関する実践的な知識を学習できます。

地震のときの家具の動きをシミュレーション
地震のときの家具の動きをシミュレーション

説明・指導してくれるボランティアのみなさんは、実際に震災を体験した被災者の方々でもあります。

ボランティアスタッフの鳴海さん
ボランティアスタッフの鳴海さん

●BOSAIサイエンスフィールド

昨年2021年3月にリニューアルした東館では、最新技術を使ったアトラクションを通して、自然災害への備えを楽しみながら学べます。

地球上で起こる自然現象と人々の生活が交わることで自然災害が発生することを、巨大モニターで学ぶ「ディザスター・ウォール」。

ディザスター・ウォール
ディザスター・ウォール

ジオ&スカイホール」では、台風がどう進むか、自分が高気圧になって、台風を誘導することができます。

高気圧と台風の進み方を体感
高気圧と台風の進み方を体感

クエスチョンキューブ」では、災害時のさまざまな場面を体験できる映像空間でクイズに答え、命を守る最善の行動力を身につけます。

クイズで災害時の行動を考える
クイズで災害時の行動を考える

さらに、画面をハンマーでたたくと、位置や強さで、地震の揺れの仕組みが学べるコーナーもあります。

地震の揺れを学ぶコーナー
地震の揺れを学ぶコーナー

●被災経験から生まれた減災グッズリスト

減災グッズのリスト

「人と防災未来センター」が作成した減災グッズのチェックリストには、各家庭でいざという時に備える「非常持ち出し品」がまとめてあります。大震災を経験した人ならではの実体験をもとに作られたリストです。

減災グッズのチェックリスト

リストを参考に、ご家庭で必要なセットの検討・用意を進めてみてはどうでしょうか。リストは下記のウェブサイトからダウンロードできます。

【参考】
減災グッズチェックリスト ※NHKサイトを離れます


2.雲仙岳災害記念館(がまだすドーム)

雲仙岳災害記念館(がまだすドーム)

館内の展示は、雲仙岳噴火の歴史と教訓を後世に伝えるもの。このうち「こどもジオパーク」には、地球や火山を感じる遊具が備えられています。火山にちなんだ実験が子どもたちに人気です。

こどもジオパーク

▼場所
長崎県島原市平成町1-1
▼交通アクセスや開館時間など詳しい情報はHPにて
https://www.udmh.or.jp/ ※NHKサイトを離れます

今回紹介した以外にも、全国各地にそれぞれ工夫を凝らした防災体験施設があります。ぜひこの夏、家族ぐるみで出かけて、楽しく防災について学んでみませんか。

NHK防災・命と暮らしを守るポータルサイト
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