大雨の浸水被害というと、川の氾濫や堤防の決壊によるものをイメージしがちですが、それだけではありません。市街地ならではのリスク「内水氾濫」に注意です。
コンクリートに覆われた市街地では、大雨が降っても地面に水が浸透しにくく、地下の下水道や側溝などに集中して流れ込みます。短時間に集中して大雨が降ると、排水が追いつかず、マンホールや側溝、中小河川などから水があふれてしまう場合があります。
こうした現象を「内水氾濫」といいます。
▽身近な災害「内水氾濫」
国土交通省によると、過去10年間(2009年~2018年)に全国で浸水した建物のうち、川の氾濫によるものは36%(12万棟)だった一方、内水氾濫によるものは64%(21万棟)にのぼったということです。温暖化による集中豪雨の発生頻度は増えています。川が近くになくても、内水氾濫による被害にあう可能性があり、私たちにとって身近な災害なのです。
▽アンダーパスには近寄らない
内水氾濫で特に注意すべき場所は、アンダーパスや地下街といった、周辺よりも「低い場所」です。大雨が降ると、あっという間に低い場所に水が流れ込み、局所的に浸水被害が起こる場合があります。
特に、高速道路や鉄道などの下を通る「アンダーパス」は冠水しやすく、車の水没事故が相次いでいます。多くのアンダーパスには、排水のためのポンプが設置されていますが、大雨で一気に水かさが増えると、排水が追いつきません。
2016年、愛知県清須市では冠水したアンダーパスに車が水没、運転していた女性が亡くなる事故が起きたほか、2022年には、滋賀県近江八幡市で冠水したアンダーパスで、歩行中の女性が亡くなりました。
国土交通省によると、全国にアンダーパスは3661か所あるということで、自治体によっては過去に冠水した場所や危険なアンダーパスの場所を公開して、注意を呼びかけているところもあります。自宅や通勤・通学でよく通る場所がある自治体のホームページで、ぜひ検索してみてください。
▽地下からはすぐに出る
地下室や地下街、地下の駐車場などにも、一気に水が流れ込みます。逃げようと思った時には水圧でドアが開かなかったり、階段を流れ下る水の勢いが強くて移動できなかったりします。
水深50センチで水圧は100キロあります。水が流れ込む階段を上がるのは困難です。子どもは10センチ、大人は30センチでドアを開けるのも困難になります。停電するとパニックになる可能性もあります。
地下にいると天気の変化が分かりません。大雨のシーズンは、こまめに気象情報をチェックして、不安に感じたらすぐに地下から出るようにしてください。
▽無理して家に帰らない
周辺が浸水した状態で、外を移動するのは危険です。泥水だと足元が見えず、ふたのあいたマンホールや側溝に落ちる危険があります。
外出中に足首程度まで浸水してしまったら、無理に家には帰らず、近くの頑丈な建物の上の階に避難してください。
また、出勤中や帰宅中に浸水被害に遭うケースが後を絶ちません。企業は、社員を無理に出勤・帰宅させないように配慮してください。