人体最大の器官「ファシア」とは?
人体最大の器官「ファシア」とは?
今回のテーマは、骨、神経、筋肉、血管のように、人間のカラダ全身に張り巡らされているもの。
その名も「ファシア」。
これまで人体の隙間を埋めるだけと思われていた層が、全身に広がる最大の器官であると指摘した論文が2年前、科学界を騒がせました。
半透明の膜にように見えるのが、ファシア。
映像提供:熊谷総合病院泌尿器科医長 川島清隆
表面をつまんで引っ張ると、網の目状の立体構造が現れます。これがファシアの特長。
その働きとは何か。フランス人医師ジャン・クロード・ガンベルトさんが作ったCGをご覧ください。
筋肉に連なる腱が動くと、その上にあるファシアが変形することで、腱のスムーズな動きが生み出されます。
同時に、皮膚や脂肪、腱など、上下の組織の安定も保つのが、ファシアの重要な働きです。
このファシアは、筋肉を包むものは「筋膜」として知られていました。
しかし実は筋肉だけでなく、臓器、骨、血管など、それぞれのパーツも同じようにくるんでいるのです。
さらに、それぞれが連携し巨大なネットワークを作っている可能性も浮かびあがってきたのです。
このファシア、美と若さの重要な鍵でもあるんです。
新しく「美と若さ」のアドバイザーとして解説するのは、東京医科歯科大学特任講師 宇山恵子さんです。
「ファシアは、筋膜っていうところから注目を受けていていますが、もしかしたら、全身を包むただの保護膜ではなくて、全身の情報ネットワークとして司令塔みたいなことになっているのではないかということが注目されていて、研究が進んでいます。」(宇山さん)
関節の機能や筋肉について研究されている日本健康予防医学会副理事長 蒲田和芳さんに、このファシアについて、説明してもらいましょう。
「皮膚をめくりますと、全体的に黄色っぽいファシアがあり。それをはいでいくと、筋肉や内臓が出てくるということになります。筋肉、脂肪、それから、内臓。血管などもすべて、実はファシアで覆われています。」(蒲田さん)
ところで、「筋膜」と「ファシア」、何が違うんですか?
「ファシアの方は、内臓だとか脳にもあるので、幅広い概念です。筋膜は、その中のうちの筋肉を覆っている膜ということで、すごく狭い範囲になります。鶏肉の皮をはぐと、薄い皮がありますよね。あれがファシアだと思ってください。(読み方は)英語を片仮名英語で呼ぶので、「ファッシア」と言う人もいれば、「ファシア」と言う人もいます。」(蒲田さん)
ここでファシアの貴重な映像を見てみましょう。
「ファシアは網の目構造をしていて、組織と組織が動くときに、網の目が伸びたり縮んだりするんです。伸びっぱなしだと、組織同士が動いてしまって位置関係が保てないんです。元に戻ろうとすることによって、カラダの中の臓器は同じ位置を保っていきます。網の目で動きをコントロールしていると言ってもいいと思います。」(蒲田さん)
「こちらは、ふわふわしているファシア。非常に動きのいいタイプのファシアです。カラダの動きが良いときというのは、ファシアもよく水を含んでいて、たくさん滑る動きを保っているわけです。こうした水がなくなっていくと、ファシアの滑りも悪くなるんじゃないかと言われています。」(蒲田さん)