睡眠は「きれい、賢い、やさしい」のモト!

2017年7月13日(木)BSプレミアム 午後9時00分~ 午後9時59分

夏も快眠!眠りは美のメンテナンス


<睡眠は「きれい、賢い、やさしい」のモト!>

皆さん、睡眠時間、足りていますか?

現代女性は仕事や家事、育児に介護など、なかなか十分な睡眠時間をとれませんよね。
でも、他の先進国は違うんです!
女性の平均睡眠時間を見ると、スウェーデンの9時間3分を筆頭に8時間以上は当たり前。
ところがわが日本は・・・7.36時間。先進国中、最下位です。

さらに年代毎で見ると、働き盛りの40代後半や50代前半はおよそ6時間半。
世界的に見れば異常事態。 

 

そもそも、眠りとは何なのでしょう。

世界でも有数の睡眠研究機関である筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構を訪れました。

 

教授の裏出良博さんは、人はなぜ眠くなるのか、そのメカニズムを追求しています。

 

研究の最前線を見せて欲しいというと、裏出教授が取り出したのは、いかにも怪しげな白い粉。実はこちら「睡眠物質」と言われる、ナゾの物質の一つ。

 

それではこちらのマウスに睡眠物質を飲ませて、その後の変化を見てみましょう。

 

すると…。10分後。動かなくなりました。
眠っています。
睡眠物質は、このように誰をも眠らせる働きがあるのです。

 

睡眠物質は数多く見つかっていますが、裏出教授の研究している睡眠物質は「アデノシン」と言います。

睡眠物質アデノシンができるのは、実は脳の中。
脳を働かせるためのエネルギーはブドウ糖。その燃えかすの一部がアデノシンなのです。
つまり、私たちが脳を働かせるたびにアデノシンが作られ、どんどんたまって眠気を引き起こしていくと考えられています。

 

それは脳の疲労を取るため、強制的に眠らせようとしていると考えられます。

 

なぜ脳がそんな物質を作るのか?
それは脳の疲労を取るため、強制的に眠らせようとしていると考えられます。

起きている間、脳の中にはゴミがどんどんたまっていきます。
睡眠はそのお掃除時間。
脳の細胞が縮まり、隙間が広がり、そこに脳脊髄液という液体が流れやすくなります。
そこでたまったアデノシンやゴミが洗い流され、脳は再びリフレッシュ。またバリバリと働けるようになるのではないかと考えられています。 

こうしたリフレッシュ、裏出教授はパソコンに例えると理解しやすいと言います。

「性能の悪いパソコンでいっぱいソフトを立ち上げたのと同じになって、もう全然うごかない。だから1回切って、いらない情報を消すという操作をして、もう1回リスタートして立ち上げないとパソコンは動かない。睡眠というのは、その状況に限りなく近いのです。そのため睡眠物質のような物質が必要だと考えています。」(裏出教授)

つまり、眠りとは絶対必要なメンテナンス。睡眠不足とは、その必要なメンテナンスができない状態というわけです。

 

カラダのメンテナンスができなくなると様々な異常事態が連鎖反応的に起きてしまうのです。

例えば、皆さんのお悩みは、体重ですよね?

睡眠不足が続くと、太ると思いますか? 痩せると思いますか?

答えは、「太ります」

 

アメリカのコロンビア大学がおよそ7000人を10年以上、追跡したデータです。
7時間睡眠をとっている人の肥満率を100とすると5時間睡眠の人は150になり、4時間睡眠では173にまで跳ね上がります。 

 

夜起きていたら、ついつい食べちゃいますよね。
しかも最新の研究からは、私たちのカラダには、睡眠不足の時に、積極的に食べさせようとする仕組みがあることがわかってきました。

その働きの1つが、胃にあります。胃から出る物質、グレリン。食欲を増進する物質です。このグレリンが、睡眠不足になるとどんどん増えていくことがわかってきたのです。

 

そして睡眠不足が引き起こす、もう1つのお悩みと言えば、肌荒れ

なぜ睡眠不足が肌荒れを招くのでしょうか。カギは、「成長ホルモン」です。

このホルモンは、子供の場合には、成長を促進。大人の場合にはカラダや細胞の修復をしてくれ、お肌の新陳代謝も促進してくれます。

これは成長ホルモンの分泌グラフ。
寝入りばなの2時間、しかも深い眠りのときに特に集中して出ることがわかってきています。

ダイエットのためにも、美肌のためにも、睡眠が大事。
眠れるなら、眠るにこしたことはないのです。

カラダの仕組みとして、様々なメンテナンスと深い関わりを持つのが「睡眠」。
その全体像は、どうなっているのでしょうか? 

 

東北福祉大学 特任研究員 水野一枝さんは、いつも大学で
「きれい、賢い、やさしい」の3つのキーワードに集約して睡眠を解説しているそうです。
うかがってみましょう。

「(睡眠は)細胞や、お肌を修復してくれるという、カラダのメンテナンスをすることできれいになります。

“賢い”というのは、日中起こったことの記憶を整理したり、あるいは記憶をきちんと定着させたりするのが、眠っている間。つまり、記憶のメンテナンスというのが賢いということにつながります。

そして、眠ることで、心も穏やかになったり、イライラを抑えたり、ちょっとここ我慢しようかなって、心のコントロールができますので、そのメンテナンスができるということで、人に “やさしく”なれるのです。」(水野さん)

 

さらに、睡眠不足だと、太りやすいだけではなく、ほかにも様々なデメリットがあると警鐘を鳴らすのは、産業技術総合研究所 グループ長 大石勝隆さん。

「人のデータでよく知られているのは睡眠時間と、糖尿病あるいは肥満、あるいは高血圧(との関係性)。がんもそうなんですけれども、それらのリスクが上がってきます。」(大石さん)

 

杏林大学 名誉教授 古賀良彦さんも睡眠不足と若さの関係を説明します。

「(40歳代以降は)睡眠不足だと、肌のこと。しみとかしわとか、くすみ。そんなことがとても目立つようになってきます。」(古賀教授)

 

睡眠不足による様々なデメリット。やはり睡眠不足は健康と美容の大敵のようですね。

 



<眠りたいならカラダを熱くしろ!>

睡眠の重要性、よ-くわかりましたよね。

しかし、季節はこれから夏本番。この暑さ、睡眠が足りない私たちをさらに寝かせない、大問題なんです。

暑さが、いかに睡眠の大敵であるかを調べるため、東北福祉大学 特任研究員の水野一枝さんを訪ねました。水野さんは、睡眠によい室内環境を追求している専門家です。

 

実験では被験者に、室温を摂氏30度、湿度は80%にセッティングした部屋で眠ってもらいました。

ベッドに横になっても、可哀想にもぞもぞしているばかり。目は閉じていますが、その脳が眠っていないことは脳波を見れば一目瞭然だと言います。

[資料提供:水野一枝さん]

これがそのときの脳波。とても小刻みな波が続いています。脳波が寝ていない証拠です。

 

[資料提供:水野一枝さん]

深い眠りになれば波は大きくゆるやかになります。こうした深い眠りこそ、カラダにとって大切な質のよい睡眠なのです。

 

睡眠不足を補う1つのコツは、こうした脳波を出す深い眠りにいかに早くきちんと入るか。しかし、そのときに敵として立ちはだかるのが、暑さです。

実は、人間は寝るときにカラダの中心部の体温を下げないと深い眠りに入っていけません。
そのために必要なのが放熱です。

手足をはじめ、カラダの表面から熱を外に出すことによって、カラダの中心部の温度は熱を失って冷えるというわけです。ところが

「暑い環境になってくると、いくら皮膚の表面の温度を高くしてあげても、カラダから熱が逃げていかないので、体温が下がらない。そうするとやっぱり寝にくい、眠れないということになります。」(水野さん)

 

では、どうしたらよいのか。そこで有効なのが新常識逆に「カラダを熱くしろ!」です。

そもそも体温よりも周りの気温がずっと低ければ体温は簡単に下がります。しかし、気温が高ければ当然下がりにくい。

そこで、方法は・・・。

「体温」を上げちゃえばいいんです。

 

体温を急に上げるなんてできるのでしょうか。

秋田大学准教授で理学療法を教えている上村佐知子さんは、

「入浴、特に温泉。体温を操作して、眠りをよりスムーズにさせて、熟眠させる」

と言います。

 

その効果のほどを、上村准教授の実験で見せてもらいました。
お風呂の入り方による睡眠の質の違いを、4人の大学生で調べます。

  • 1人目は、塩化物泉に入ります。天然の温泉に多いもので入浴剤も出ています。
  • 2人目は、炭酸を多く入れたお風呂です。家庭ならば入浴剤か特別な装置を使います。皮膚に細やかな泡がつくのが特徴です。
  • 3人目は、水道水を湧かしたお風呂に入ります。
  • 4人目はお風呂に入りません。

お風呂はちょっとぬるめの39度。時間は15分の半身浴です。
お風呂から出て、4人には同じ部屋で寝てもらい、脳波やカラダの中の温度を測って眠りの深さを割り出します。

脳波の結果です。
もっとも成績が悪いのは、お風呂に入っていない人でした。
水道水のお風呂に入った人は、それに比べて深い眠りがおよそ20%増えていました。

そして残り2つの風呂に入った人はさらに深い眠りを実現していました。
この差を生み出したものこそ、「カラダを熱くしろ」という新常識なのです。 

4人のカラダの中の温度の変化を見てみましょう。

お風呂に入った3人は入浴直後に体温がいったん跳ね上がり、その後、急速に低下しています。

中でも、赤色の線、睡眠の成績が最も良かった炭酸泉は、0.7度下がっていました。

「夏だからと言ってシャワーで入浴を済ませてしまうと言うのは実は損な話で、入浴をした方が、むしろ涼しく寝やすい夜を過ごせるのではないかと思います。」(上村准教授)

暑い夜には、寝る2時間前にはカラダを熱くする
これが質のよい眠りをゲットするための、新常識なのです。

 

ところで、お風呂上がりに冷えたビールを1杯! というのは、要注意だそう・・・。

古賀教授によると、アルコールは寝付きはよくなるものの、途中で目覚めやすくなったり、次の日に早く目覚めすぎたりすることがあるそうです。

お風呂上がりのビールはほどほどに!

 



<睡眠のカギは「デート」と「朝食」にあり>

さらにオススメの快眠術は、「朝食」

産業技術総合研究所 グループ長の大石さんにその根拠を示す実験を見せていただきました。

 

マウスを2つのグループに分け、片方は朝食を抜き、片方はいつでもエサが食べられる通常の状態にしました。

そして2週間、昼間の活動を比べたのです。

すると朝食抜きのマウスを観察していくと、昼までねぼけているような状態が続いていて活発な活動が見られませんでした。

脳波から見ると、朝食抜きのマウスが起きていたと判定できた時間は3割も少なかったのです。

「日中きちんと覚醒がなければ、睡眠の方に悪さをするというか、睡眠の質が下がってくる、あるいは、量が減ってくる。それがまた次の日の日中の活動に響いてくるわけです。仕事、作業の効率にも関わってきますし、あるいは学習だとか記憶にも関わってくるので日中は覚醒していないといけません。」(大石さん)

 

なぜ朝食の有り無しが12時間後の睡眠に影響するのか。
大石さんが注目しているのが、体温変化です。

私たちの体温は24時間サイクルで変動しています。朝に体温を上げると、夜には体温は下がりやすくなります。

 

通常の食事をしたマウスの体温変化を見ると、たしかにピークを迎えた後、なだらかに下がっています。

ところが、朝食を抜いたマウスは、朝あがってきた体温が途中で減少。そして、その後には逆に上昇するなど、乱れてしまっています。これが睡眠に影響すると大石さんは考えています。

「睡眠覚醒のリズムというのは、体内時計で制御されています。その一方でその体内時計というのは食事のタイミングで大きく影響を受けるということがわかってきています。食事が抜かれてしまうとそれが体温を上げきれなくなると言うか、せっかく上がりはじめた体温をきちんとあげるためにはやはり朝食というのが大事ではないかなと思います。」(大石さん)

最近、私たちのカラダに時計の役割をする遺伝子が発見され、それがカラダ全体の様々な働きもコントロールしていることがわかりました。その時計が食事にも大きく影響されるというのです。

それでは、朝食には何を食べればよいのでしょうか?

「まずは食べているということがすごく大事。寝ているときは体温を下げないと睡眠の質が下がってしまうという話がありましたが、朝食を抜くと寝てるときの体温が上がってしまう。ですから睡眠の質も下がってしまう。
では何を食べればいいのかということですが、糖とタンパク質が両方あったときに時計遺伝子が働くようになります。だから糖だけでもダメですし、タンパク質だけでもダメです」(大石さん)

 

さらにもうひとつ、快眠の秘策は・・・。

「デート」です。

しかし、このデートと睡眠を結びつけるものとは、一体なんなのでしょうか。

それが脳であると考えているのが杏林大学名誉教授 古賀良彦さんです。古賀教授は夜深く眠るためには昼間の脳の使い方がポイントだと言います。

「昼間、脳を活性化しておかないと逆に夜、脳はお休みしてくれない。これが一番活発に働くと言うときは、やはり人とコミュニケーションをしているときということになるわけです。」(古賀教授)

人とコミュニケーションをとっているときこそ私たちが最も脳を働かせているとき
特にデートは、大事なコミュニケーションの連続になり、脳の活動も大幅に上がるはずです。

 

そこで、古賀教授は2009年、1か月間複数のカップルに協力してもらい、テーマパークでのデートの前後に、脳がどれだけ活性化しているのかを調べたのです。

この計測機器で、脳の前側の部分の血流がどれだけ活性化しているかを見ることができます。

 

こちらが実際の計測した血流です。赤い部分が、血流が活発に増えた場所です。

 

デートの時間は、およそ4時間。その後に計測した右側を見ると、歴然と増えています。
特に、男性は真っ赤っか。これだけわかりやすく脳の活動が上がっていたのです。

「2人の間でとてもステキな遊びというかエンタテインメントをしてもらう。するとその中でお2人のコミュニケーションが高まっていくということになると思います。
よい脳の働き、よい意味の疲れを脳にもたらしますから、今度は脳がゆっくりお休みをしましょう、ということで、これも望ましい睡眠が得られることにつながっていきます。」(古賀教授)

それでは、デートしていてもケンカしたりするとどうなんでしょうか?
古賀教授によると、ストレスは睡眠不足の一番原因で、夜の睡眠の質を悪くしてしまうとか。

「脳を楽しく、ポジティブに。
ネガティブになってしまうと、うまくいかないんです。デートの結果がよいと、VTRのような結果につながるということなんですよ。」(古賀教授)

皆さん、デートでケンカは禁物ですよ!

 

ちなみに、パートナーのいない方に古賀先生がオススメする方法が「女子会」「お化粧」
友達同士でもポジティブに会話することで脳は十分活性化されます。
またお化粧を夢中になってすると、嫌なストレスを一時的に忘れさせてくれて、よい睡眠につながるそうです。

 

これまでよい睡眠につなげる昼間のポイントを紹介しましたが、夜、どうしても眠れなくなった時はどうすればよいでしょうか。水野さんと古賀教授にアドバイスしていただきました。

「どうしても寝られないときは、いったんベッドから離れて、関係ないことをして、そのうち眠くなるかなって、ゆったり構えてみてください。
寝よう、寝ようと思うと逆に寝られなくなってしまうので、まあ一晩ぐらい眠れないこともあるよね、ぐらいに、気楽に構えていただくほうがいいんじゃないかなと思います。」(水野さん)

「例えば、呼吸を上手にする
布団に入って膝を軽く曲げ、自然にカラダの力を抜く。ゆっくり息吐いて、そのときに、小さい声で、あーっと声に出してみてください。
大事なのは、吐き終わったなと思ったら、大きく吸わないこと。吐いた分だけ、自然に吸う。なぜかというと、ゆっくり息を吐くときに、気持ちをなだめる副交感神経が働きます。でも息を吸うときには、気持ちを高める交感神経が働いてしまうのです。
ですから、ゆっくりと息吐いて、気持ちをなだめる神経を活発にさせてください。」(古賀教授)

眠れないとき、ぜひ試してみてください!

 

NHKオンデマンド

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