断食のメモリーと「ケトン体」

2017年6月1日(木)BSプレミアム 午後9時00分~ 午後10時00分

断食はダイエットにあらず 体質改善のスイッチだ

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<断食のメモリーと「ケトン体」>

断食のメモリーをさらにひもとくキーワードが「ケトン体」です。
普段、私たちが食べたものは腸で吸収され、エネルギー源のブドウ糖となって全身に運ばれます。ブドウ糖は、何も食べないと通常8時間ほどで、全てなくなると言われています。

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つまり、断食とはエネルギー源がゼロになる生命の危機なのです。

カラダがそのような状態になると、中性脂肪が肝臓に集まってきます。肝臓で脂肪が分解されてできるのが「ケトン体」です。このケトン体は新たなエネルギー源としてカラダのさまざまなところで働くことが分かってきました。さらにケトン体は、もう一つ重要な働きをしていることで世界中の研究者に注目されています。

「ふつう、われわれはエネルギー源としてブドウ糖を使います。
しかし、それがなくなってしまうと脳が働かなくなるので、その代替エネルギーが脂肪から作るケトン体です。
ケトン体は、酸素をそんなに使わずに非常にエネルギー価が高いので、お手頃なエネルギー源になる。今、注目されている物質です。

ケトン体は、エネルギー源として非常に魅力的なだけじゃなく、遺伝子の働き方を変える作用があるというのが分かってきた。
これがいわゆるエピゲノム。われわれは遺伝子は変えられないわけですけど、遺伝子で働き方を変えることはできるわけです。」(伊藤教授)

 

【伊藤教授の仮説】

伊藤教授の考える仮説はこうです。

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ケトン体の一種である「βヒドロキシ酪酸」が遺伝子の発現を司る部分と反応。
すると細胞の中にある、ミトコンドリアの力を呼び覚ますスイッチがオンになります。
その結果、ミトコンドリアは効率よく次々とエネルギーを作り出すようになるのです。

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つまり、細胞内で脂肪がエネルギーとしてどんどん使われるので、結果として太りにくいカラダになるのです。

このスイッチがオンになるには、断食がある一定期間続くことが必要です。
すると、その後、ケトン体がなくなっても、オンの状態は保たれます。
つまり生命の危機状態が記憶されるのです。
これこそが、伊藤教授が考える「断食のメモリー」のひとつ。
太りにくい体質になるのも、こうしたメカニズムがあるからだと言うのです。

 

 


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 <徹底調査! 断食によるカラダの変化>

実際に断食をしてみたらカラダにどんな変化が起こるのでしょうか? 2人の女性に5日間の断食を実践してもらいました。

06-13.jpg舞台は淡路島の30年もの歴史のある「断食道場」。運営者である医師の笹田信五さんは、医学的なサポートをしながらこれまで2万人以上の断食を見守ってきました。

 

06-14.jpg体験してもらったのは、お笑いタレントの松丸ほるもんさん(31)と、光美さん(29)の2人。

 

今回は金沢医科大学の小倉慶雄さんにも協力してもらい、体質改善の判断材料となる断食のメモリーや若返り遺伝子の活性化など、カラダに起きる変化を徹底的に調査しました。


断食中に重要なのが水分補給。普段は必要な水分の3分の1は、食事からとることができますが、断食中はほぼゼロ。道場では一日最2リットルの水分を飲むよう勧めています。

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口にできるのは1日3回の特製ドリンクのみ。さ湯に低脂肪乳、ビタミン剤と少量の糖分を混ぜたもので、100キロカロリー。

 

06-17.jpg朝9時に断食を開始してから8時間が経過。カラダにはさまざまな変化が…。階段を上る足取りもおぼつかない。ヤル気もなくなるようです。

断食2日目の朝。光美さんの体調に異変が現れ、38.2度の高熱が出てしまいました。ドクターストップと思いきや、笹田先生のこれまでの経験から少し様子を見てみることに。

すると翌日。思いがけない変化が起きていました。

06-16.jpg「めっちゃ元気です。6時間後の12時くらいには熱が下がっていて、そこからずっとだんだん体調が良くなっていって、今日の朝にはめちゃくちゃ元気になっていました。水と朝昼晩のドリンクのみでここまで良くなるんや、みたいな。」(光美さん)

一方、松丸さんも空腹を感じず、これまで苦手だった特製ドリンクの味や香りをより敏感に感じるようになっていました。

 

断食中に起こったカラダの変化をまとめると…

1日目~2日目

  • 食べ物のことばかり考える
  • 階段でふらつく
  • 記憶力が悪くなる
  • 無気力になる
  • 熱が出る/頭が痛い

 

3日目以降

  • 熱が一気に下がる
  • さわやかになる
  • 味覚が敏感になる
  • 外の空気がおいしく感じる
  • 食欲が気にならない
  • 便通がよくなる
  • ストレスがなくなる

 

*今回の取材で断食を体験した2人の反応です。全ての方に同じ変化が現れるわけではありません

 

2人のカラダにいったい何が起きたのでしょうか。古家教授は次のように話します。

「1日目、特に2日目になると、ぼーっとしてくるとか、あるいはもう動きたくない、無気力になりましたよね。
だんだんそれ過ぎてくると、非常にいい作用がいっぱい出てくる。

光美さんの熱が下がったのは抗炎症作用と言って、熱が出たりすると、炎症抑えるようなお薬を飲みますよね。
そういう作用がカラダの中で、断食によって起こってくる
ということです。」(古家教授)

 

5日間の断食終了後、体型には明らかな違いが出ていました。松丸さんは5日間で体重はマイナス3キロ。さらにウエストも5センチ減。

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光美さんは、体重3.8キロのマイナス。そしてウエストは、憧れの二桁台を達成。

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しかし、断食の効果を維持するのに大切なのは「回復食」と言われる、断食を終えたあとに口にする食事です。
急に元の食事に戻すと、血糖値が急上昇し、カラダは慌てて脂肪を作り出そうとするため、リバウンドの原因になります。5日間断食をした2人は、あと4日間回復食を食べなくてはいけません。

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最初の食事は、豆腐で作ったパンに、ニンジン、玉ねぎが入った野菜スープ、そしてヨーグルト。回復食は、1日目は600キロカロリー。2日目は800キロカロリー、3日目は1,000キロカロリーと、徐々にカラダを元の食事に慣らしていくことでリバウンドを防ぐのです。

 

それでは、体験で徹底検査した断食メモリーとサーチュイン遺伝子は、果たして働いているのでしょうか!?

光美さんの結果がこちら!

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松丸さんの結果はこちら!

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古家教授は、松丸さんのサーチュイン遺伝子が断食直後に1.22倍になっていたことについて

「サーチュイン遺伝子は活性化していると考えていい」(古家教授)

と言います。

 

また、断食直後に大きく上がっていた2人のケトン体の数値が3週間後に大きく下がっていることについて、伊藤教授は次のように説明します。

「ケトン体ってこういうもので、数値が戻ってもカラダが覚えている。だからメモリーなんですね。
ケトン体は一時的に上がってしまうけれども、そこが元に戻ってもまだカラダが覚えているから、良いことが続いている。

ただし、ケトン体だけがすべてというわけではなくて、実際には飢餓状態にすると先ほどのサーチュイン遺伝子も出てきますし、それからあとホルモンの環境も変わる。
全てのことがケトン体で説明できるわけではありません。」(伊藤教授)

 

NHKオンデマンド

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