「怒ったまま寝る」はNG!

2017年5月18日(木)BSプレミアム 午後9時00分~ 午後10時00分

怒りは美の大敵! イライラ解消術

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<「怒ったまま寝る」はNG!>

みなさんは、怒ったときその怒りをどのように紛らわせていますか?

久留米大学名誉教授の田中正敏さんは、29年前、ある伝説的な実験を行いました。その内容は教科書にも掲載され、心療内科の基本データとして知られています。

実験では、ラットを仰向けにして足を縛ります。ラットはカラダの自由を奪われるので、当然、怒りをつのらせます。その後、片方にお箸を差し出すと、怒っているラットはその怒りをぶつけるように激しくかみ付きました。もう一方はそのまま。

10分後、2匹のラットを解放してゲージに戻し、その後のストレスの変化を比べたのが、次のグラフです。

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[Expression of aggression attenuates stress-induced increases in rat brain noradrenaline turnover.
Brain Research 474,174-180 より]

縛られていた10分間は、ストレスホルモンのコルチコステロン量がどちらも急激に増えています。しかし、解き放たれた後を比べてみると、お箸を噛んでいた方はストレスホルモン量が急激に減少し、50分後には平常値に近づきましたが、何もしなかった方は高いレベルのままだったのです。

田中教授はこの実験結果についてこう説明します。

「お箸にガーっと噛みつくことで怒りを出してるんです。
ところが、それができないラットはただじっとしていることしかできないので、脳の中の変化が収まらないんです。
だから、怒りというのは適当に出すのも大切だし、出さないといつまでもそれが溜まっていることになるんです」(田中教授)

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田中教授のラットの実験でわかったのは、お箸を噛むというような行為で、怒りが発散することが、ストレスの対処にはいい、ということ。

 

では、人間の場合はどうやって怒りを発散すればいいのでしょうか?
街で聞いたのは、「やけ酒をする」「やけ食いをする」「さっさと寝る」「運動する」「思いを聞いてもらう」の5つ。では、このうちどれがいいでしょうか?

田中教授がまっ先にあげた方法は・・・。

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スポーツ(運動)だと思いますね。
これは昔から心理学で言われている”昇華”と言う方法です。趣味でもいい。
そういうことに気持ちを打ち込んでいくということで、怒りの方向を変えてやることが1番いいと思います。」(田中教授)

では、残り4つの中でやってはいけない方法はどれでしょう?

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意外かもしれませんが、「さっさと寝る」はNG!

その理由を自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介教授は次のように説明します。

「一番意外でしょうけど、あくまでも凄く怒ってる状態でそのまま寝ちゃうとまずいということです。
そういう怒っているときは、むしろ悪い記憶をいい記憶で上書きしてから寝るのが大切。お酒も同じ。
やけ酒を飲んでいるときは忘れているけれど、酒を飲んでないとき、その前の記憶が残っています。
だから、怒ったときのやけ酒はNGです。」(柿木教授)

実は睡眠には、記憶を定着させる働きがあります。
つまり、怒ったまま寝てしまうと、その嫌な記憶が、脳にしっかりと根づいてしまうわけです。
怒ったときに、お酒を飲むのがよくないというのも、同じ理由です。

 


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<聞き役を育てろ!>

そしてもうひとつの上手な怒りの発散方法が「思いを聞いてもらう」。
実は、怒っている人を救うカギを握るのは、「聞き手の態度」なのです。

番組では、番組に出演いただいた、大神いずみさんの夫、元木大介さんに協力頂き、実験を行いました。
九州大学病院心療内科の吉原一文さんはMRIを使って脳の反応を調べることで、聞き手の態度によって話し手の脳がどのように反応するかを調べてきた専門家。

元木さんに、3人の女性のイライラエピソードを聞いてもらい、どのような態度で聞くのか、その聞き方を、チェックしてもらいました。

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今回、元木さんの観察で出た吉原さんの指摘は、「視線・うなずき」、「背もたれ」、「腕組み」、「話をさえぎってのアドバイス」、「適当なあいづち」、「落ち着き」の6つ。

最初は視線が相手に向けられていて、適度にうなずいていた元木さんでしたが、時間が経つにつれてNGを連発してしまいました。

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聞き方で一番大事なのは、「共感」です。
具体的には次のポイントを押さえて、相手の話を聞くことが大切です。

  • 目線をそらさず、うなずく
  • 話をさえぎらない

吉原さんのこの実験で明らかにしたのは、心療内科の医師が使うテクニックの1つ「傾聴」(Active Listening)です。

 

聞き役に必要なのが、この「傾聴」の姿勢。その極意を、帝京大学心療内科の中尾教授はこう説明します。

「傾聴は、心療内科のテクニックのひとつです。
重要なのは、大事なことを言ってくれたときは、もう一度繰り返して、誘導してゆく。そこがポイントなんだな、と相手に気づいてもらうことです。
相手にはいろんな思いがあるわけで、正解不正解を相手に伝えてはいけないですね。反論するというよりも、傾聴の極意は、『相手に気づかせる』ところです。私なんでこんなにこんなことで怒ってるんだろうっていうことが気づくように促す。
キーワードは、『受容・支持・共感』です。」(中尾教授)

 


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 <すっきり発散!怒りの対処法>

イライラがつのったときの対策。
最近ではさまざまな「怒り発散グッズ」があり、そういったグッズを使うのもありえるかも? 

ただし、ここで筑波大学の湯川進太郎准教授からアドバイスです!


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「「怒り発散グッズ」は「カタルシス効果」というものを狙って作られています。たとえば、モノを叩いてイライラを発散する、すると気分がすっきりした、というような。
でも、その時に憎き相手のことを思いながら叩いたり、相手の悪口を言うのをやってしまうとだめなんですよ。これは心理学的には、ダメだということが、はっきり分かっています。」(湯川准教授)

みなさん、「怒り発散グッズ」を使う際はくれぐれもご注意を!

 


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<怒りの対処法 大原則>

それでは、いよいよ怒ってしまったときの最も大事な心構えを学びましょう。実は、怒りの対処法には大原則があるのです。

湯川准教授によると、怒りやすい人にはある傾向がみられるといいます。
それは「怒りの反すう」。怒りが何度もわき上がってくる状態です。思い出してはまた腹が立ってくるという経験がストレスの元となり、カラダや心に悪影響を及ぼしているのです。

それを防ぐには、怒りがわき上がる瞬間を知ることが大切。
湯川准教授は、大学内でめい想教室を開き、そのノウハウを教えています。
たとえば、研ぎ澄ました手のひらの感覚などに意識を集中させれば、静かな心の状態を作りやすくなり、自分の感情の変化にイチ早く気づけるようになるといいます。


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 「感情がカーっとなってきた感じがわかるようになるし、後で色々思い出した時にそれに引っ張られない。
“マインドフルネスめい想”と言って、意識を心や呼吸との状態、カラダに向け続けるという練習をするわけです。」(湯川准教授)

怒りの対処法で大事なのは、反すうさせないこと。
カッとなる瞬間をイチ早くとらえることがとにかく大事なのです。

 

 

そしてもう一つ、自分の怒りの体験を客観的に見て、反すうさせない手軽な方法があります。

「筆記開示法」、いわゆる日記です。

怒ってしまった日、寝る前に日記を書く。文字にすることで客観的にみえるようになり、怒りとの距離を置くことができるのです。

書き方にはちょっとしたコツがあります。

日記の書き方(筆記開示法)のコツ

  • その出来事を、細かく、丁寧に「事実」として書き、さらに「感情」も書く
  • 誰がどうしてどうなったから、こういう気持ちを抱いたとか、こういうふうに感じたといったように書く
  • SNSやブログではなく、誰にも見せない前提で書く

大事なのは、「事実」と「感情」の両方を書くこと。
そして「誰にも見せない前提」で書くことがポイントです。

湯川准教授は日記の効果と書き方についてこうアドバイスします。


「日記などで自分の気持ちを書くと、モニターして整理整頓できます。
そのとき、あった出来事に加えて自分の気持ちも書いて、かつどういうことが起きたかなど、事実を丁寧に書いていくといいでしょう。誰がどうしてどうなったから、こういう気持ちを抱いたとか、こういうふうに感じたとか、事実と感情の両方を書くことが大事です。
そうすると、少し冷静になったあとに相手の視点とか、相手の気持ちなど、色んなものが見えてくるんです。」(湯川准教授)

NHKオンデマンド

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