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竜巻、じつは台風より怖い!?身を守る方法とは?

いつどこで起きるか予測困難な「竜巻」。ひとたび発生すると台風を上回る風であらゆる物が凶器になって襲い掛かり、大きな被害をもたらします。日本では9月から10月は竜巻の多い季節。竜巻のメカニズムを知り、いざという時どう行動すればいいのか考えます。

この記事は、明日をまもるナビ「竜巻からどう身を守る」(2022年9月18日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、竜巻のメカニズムと身を守る備え
▼9月から10月に日本で多く発生する竜巻。台風や上空の寒気が原因。
▼急激に発達した積乱雲から竜巻は発生する。
▼竜巻の被害を防ぐには迅速な避難と備えが大切。


日本で起こる竜巻の特徴は?

日本で起こる竜巻の数は年間平均およそ55回。月ごとに集計すると、およそ4割が9月から10月にかけて発生しています。

竜巻の月別発生確認数(1991~2017年)

これには2つの理由があります。
一つは台風に伴って発生するためです。もう一つはシベリアの寒気が南下してくることで上空の大気が不安定になるためです。

1961年から2019年までのおよそ60年間で竜巻が発生した場所を地図にしてみると、約6割が海岸線近くで発生しています。日本では沿岸部に都市がひらけていることが多く、竜巻は被害につながりやすいのです。

竜巻分布図(1961~2019年 気象庁)

●2000年以降の日本の主な竜巻被害

近年の日本で起こった竜巻の被害を振り返ります。

主な竜巻被害(2000年以降)

【2012年5月 茨城県つくば市】
茨城県つくば市を襲った竜巻は、被害の範囲が幅500メートル、長さおよそ15キロと国内最大級のものでした。このとき北関東では、ほぼ同時に3つの竜巻が発生。合わせて2000棟以上の建物が被害を受けました。

風速70メートル毎秒以上 死者1人 建物被害2,000棟以上

【2006年11月 北海道佐呂間町】
北海道佐呂間町(さろまちょう)では、風速80メートル以上の竜巻が発生。建築会社のプレハブが吹き飛ばされ、中にいた9人が死亡。国内で最も多い犠牲者を出しました。

風速80メートル毎秒以上 死者9人 建物被害100棟以上

【2006年9月 宮崎県延岡市】
宮崎県延岡市を襲った竜巻では、スーパーの店内で陳列棚の下敷きになるなど、3人が死亡。1800棟以上の建物が損壊し、列車も横転するなど、大きな被害を受けました。

風速55メートル毎秒以上 死者3人 建物被害1,800棟以上

佐呂間町では竜巻の渦の中心が通ったところは建物が全壊。しかし隣は屋根が飛ぶくらいで半壊、少し離れるとほとんど被害を受けていません。同じ地域でも被害が偏るのが竜巻の特徴です。

全壊


竜巻のメカニズムに迫る

●研究の最先端アメリカで竜巻発生を目撃

竜巻はどのように発生するのか。竜巻の研究が進んでいるアメリカを取材しました。

竜巻の画像

訪れたのは、アメリカ中央部の「トルネードアレー」。竜巻街道と呼ばれる大平原地帯です。実は、世界で起こる竜巻の8割がここで発生しています。

アメリカ中央部の「トルネードアレー」
アメリカ中央部の「トルネードアレー」

2013年5月にアメリカ・オクラホマ州で発生した竜巻は、その幅およそ2キロと世界最大級のものでした。死者24人、被災者は3万人を超え、被害総額は2000億円といわれています。

竜巻の画像

竜巻研究の第一人者であるオクラホマ大学のハワード・ブルースタイン教授に竜巻の発生現場を案内してもらいました。

オクラホマ大学ハワード・ブルースタイン教授

車で走ること2時間。近くに竜巻の元となる積乱雲が発生しているのを見つけました。

トルネードアレーでは、温かく湿った海からの空気と北方のロッキー山脈から流れ込んでくる寒気が出会います。

海からの空気とロッキー山脈から流れ込んでくる寒気がぶつかる図

冷たい山からの空気が沈み込み、温かく湿った海からの空気が上昇することで、巨大な積乱雲が発生します。

巨大な積乱雲

取材班の目の前で、積乱雲はみるみるうちに円盤のような形に変わっていきました。
これが「スーパーセル」。回転する上昇気流を伴った巨大積乱雲です。ここから竜巻が発生すると、ブルースタイン教授は考えています。

スーパーセル

しばらくすると、細長い雲がものすごい速さで回転し始めました。竜巻誕生の瞬間です。

竜巻発生の瞬間
竜巻発生の瞬間

そして、発生から8分。竜巻はどんどん細くなり、やがて姿を消しました。

毎年、平均1300以上の竜巻が発生し、50人以上の犠牲者が出るアメリカでは、竜巻の研究は国の重要な課題です。政府が竜巻対策にかける費用も、年間6000億円以上にのぼっています。

アメリカの国立嵐予報センター(NOAA=National Oceanic and Atmospheric Adoministration)では、全土を24時間監視し、激しい雷雨や竜巻の可能性を予測しています。

技術の進化を取り入れ分析を続ければより的確な予報が可能になるはず

●日本でも起こるスーパーセル

日本でもアメリカのようなスーパーセルが時々起こります。
延岡や佐呂間、つくばで起きた竜巻はスーパーセルによるものだったと考えられています。

スーパーセルから竜巻発生への詳しいメカニズムを、防衛大学校地球海洋学科教授の小林文明さんに教えてもらいました。

防衛大学校地球海洋学科教授の小林文明さん
防衛大学校地球海洋学科教授の小林文明さん

①地上の南風が吹き込んできて、強い上昇流ができ、積乱雲が発達します。これをつぶさないような形で、その前面や後面に下降気流が起き、雨が降ります。

スーパーセルから竜巻発生へのメカニズム

②上昇気流と下降気流がうまく棲み分ける構造がいったんでき上がると、このスーパーセルの中でできる大きな渦巻きが、竜巻の“親”の渦となります。この雲の底から下へ伸び、地上に届く部分が竜巻です。竜巻内部では気圧が下がって、強い上昇気流ができます。

竜巻

竜巻ができるには上昇気流に加えて、地上付近の横からの風が入り込むことが必要です。

日本でも関東平野で竜巻が多い理由が、このメカニズムで説明できます。

強い上昇気流に加え、鹿島灘や東京湾から湿った海風が入ってきます。これに対して、西の山の方からは、比較的乾いた冷たい風が入ってくる。これがぶつかることで渦を作るのです。

内陸部で竜巻が発生する仕組み


竜巻の破壊力の怖さ

●飛散物が凶器に

竜巻の怖さは、強烈な風だけではありません。風によって生み出される飛散物も凶器になります。

風によって飛ばされるものがどれだけ破壊力があるのか、圧縮した空気でものを飛ばす装置で実験しました。(京都大学防災研究所の実験映像)

窓に使われる厚さ3ミリのガラスにビニール傘やサンダルを飛ばすと、窓ガラスが壊れてしまいました。家の壁に使われる厚さ9ミリの合板も、風速18メートルで角材を飛ばすと簡単に穴があいてしまいました。

サンダルが窓ガラスを破壊(京都大学防災研究所の実験映像)
サンダルが窓ガラスを破壊(京都大学防災研究所の実験映像)

窓ガラスは、強い風による風圧を考慮して設計されていますが、飛散物によって破壊されることがあります。

高速で飛んでくる飛散物は、アメリカでは“ミサイル”と呼ばれています。

●建物破壊のメカニズム

竜巻被害の写真を見ると、屋根が飛ばされているものが多くあります。
横の壁が残るのが竜巻被害の特徴の一つです。

飛散物が屋根まで破壊

飛散物により窓が破壊されると、風が吹き込んできます。その風圧で室内の圧力が高くなり、弱い箇所である屋根が吹き飛ばされてしまうのです。

竜巻の飛散物により屋根が吹き飛ぶ図


竜巻からどう身を守るのか

建物でさえ簡単に破壊してしまう竜巻からどう身を守るのか。的確な判断で竜巻から身を守った人たちの行動を取材しました。

2013年9月2日、埼玉県越谷市の幼稚園を巨大な竜巻が襲いました。

ポイント①異変を察知・迅速な避難

ある母親は息子と一緒に幼稚園を出てすぐの場所で竜巻に気づきました。
親子はとっさに幼稚園に駆け込むことにしました。普段とは異なる違和感が迅速な避難行動を起こさせたのです。竜巻が幼稚園を襲う30秒前でした。

ポイント①異変を察知・迅速な避難

ポイント②窓から離れ、頭を守る

母親は真っ先に息子を先生に託しました。先生は窓から離れた安全な場所へ逃げ込み、備え付けの防災ヘルメットを子どもにかぶせて、姿勢を低くしました。

ポイント②窓から離れ、頭を守る

そのわずか5秒後、竜巻が幼稚園を直撃しました。窓ガラスが多数割れたものの、幸い職員や子供にけが人は出ませんでした。

その2日後の9月4日。今度は栃木県で竜巻が発生。進路のすぐそばの矢板市立川崎小学校では防災マニュアルがいかされ、被害を免れました。

栃木県で竜巻発生

ポイント③防災マニュアル

栃木県ではこれまで何度も竜巻が発生。矢板市でもこの2年前に竜巻が起きており、独自に防災マニュアルを作っていました。カーテンを閉める、帽子をかぶる、机の下にもぐるなど、竜巻が接近した際の行動が具体的に記されています。

ポイント③防災マニュアル

ポイント④避難訓練

マニュアルをもとに訓練も行われていました。
当時6年生の担任だった先生は、給食を終えた後、廊下の窓から竜巻を発見。すぐに教室に駆け込み、大声で子どもたちに「机の下に避難しなさい」と指示しました。
「とっさに思い出せたのは訓練のおかげだと思う」(担任の先生)

ポイント④避難訓練

竜巻には迅速な避難と備えが大切なことを、この2つの事例が示しています。

●竜巻から身を守るポイント

屋内・屋外での竜巻から身を守るポイント

【屋内の場合】
まずカーテンや雨戸を閉めて窓ガラスを守ります。そして窓から離れて頭を守りましょう。

竜巻では屋根が飛ばされるので2階は危険です。2階より1階、1階より地下というのが基本です。地下がないところは、開口部がほとんどなく風が吹き込んでこないトイレや浴室へ逃げ込みます。

【屋外の場合】
頑丈な建物を探して逃げ込むこと。強風で倒れやすい電柱や樹木から離れましょう。

周囲に建物がない場合は、どこに逃げたらいいのでしょうか。
「竜巻の渦は実は自分では動かず、上空の風によって流される方向が決まります。風向きを見て、流されない方向=風下に逃げるのが最終的な手段です」(小林さん)


竜巻予測はできるのか?

竜巻を前日から予測することはまだ困難ですが、気象庁では「竜巻注意情報」を出すようになりました。およそ1時間以内に竜巻のおそれがあることを知らせてくれるもので、スマートフォンやパソコンで見ることができます。

竜巻注意情報の画面(スマートフォン)
竜巻注意情報の画面(スマートフォン)

さらに竜巻発生の可能性が高まっている地域があれば、発生のしやすさを2段階に分けて知らせる「竜巻発生確度ナウキャスト」もあります。

竜巻発生確度ナウキャスト(PC画面イメージ)
竜巻発生確度ナウキャスト(PC画面イメージ)

気象庁「竜巻発生確度ナウキャスト」
※NHKサイトを離れます

気象庁では全国のドップラーレーダーで積乱雲の中の渦を監視していて、それが検知されると注意情報を出すことにしています。

「まだ的中率は高くありませんが、この予報が出る場合は、上空にスーパーセルや積乱雲があることを示しています。竜巻は最終的に起こらなくても、それ以外の雨・風・雷が起こっていると認識してください。」(小林さん)

●竜巻を予測する緻密な観測網

困難な竜巻発生の予測の向上に役立つと、全国から注目を集めている試みがあります。
それがPOTEKA(ポテカ)です。気温や気圧、降水量、風向など8種類の気象変化をリアルタイムで観測できる小型の装置で、民間の気象会社が開発しました。

POTEKAの計測装置
POTEKAの計測装置

小型という特性を活かして小学校やコンビニ、公園などに1キロから2キロ間隔で設置されていて、従来にはない緻密な観測網を構築しています。

POTEKAの設置位置

現在、関東を中心に全国およそ800か所に設置され、気象観測を行っています。
この装置によって竜巻のような局地的な気象変化まで把握できるようになりました。

この地上観測網は、2013年に世界で初めて、竜巻の全貌を捉えました。

2013年9月16日深夜2時、群馬県みどり市で竜巻が発生し、100棟を超える住宅に被害が及び、けが人も出ました。

この竜巻の前兆から消滅までの気象データが記録されていました。

竜巻発生から移動と消滅までを記録
竜巻発生から移動と消滅までを記録

竜巻の一部始終をデータに記録できたことで、将来的に竜巻の発生予測が可能だと考えられています。

●竜巻の前兆を知る

竜巻の予測は完璧ではないため、私たち自身が竜巻の前兆を五感で知ることも大事になってきます。

竜巻の前兆を五感で知る

①空が真っ黒になる
②耳で雷鳴が聞こえる
③冷たい風を感じる
④草や土のにおいがする=風が地上付近のものを巻き上げながら来るため
⑤いつもと違う積乱雲
⑥雹(ひょう)が降ってくる

これ以外にも、渦が近づくと気圧が下がるので、耳鳴りがする場合もあります。

「ぜひこの機会に、竜巻が来たら自分の家でどこへ逃げるかを家族で話し合っていただきたい」と、小林さんは強く勧めています。