この記事は、明日をまもるナビ「台風上陸に備えよう!知っておくべき対策」(2022年8月28日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
観測史上最も強い風速を記録
近年、日本列島を襲った台風の中で、特に「強風」の被害の大きかったのが、2019年9月、東海地方から関東を中心に多大な被害をもたらした台風15号です。
台風15号は9月9日早朝、中心気圧960ヘクトパスカルの強い勢力を保ったまま、千葉市付近に上陸。千葉市では、最大瞬間風速57.5メートルを観測するなど、多くの地点で観測史上最も強い風速を記録しました。

市原市では、ゴルフ練習場の支柱が倒壊して民家を直撃。
千葉県内各地で、強風で屋根が飛んだり、倒木で壊されるなど、被害を受けた家屋は7万棟以上にのぼりました。


さらに深刻だったのが「停電」です。
強風によって、県内各地でおよそ2000本の電柱が倒壊。君津市では、送電用の鉄塔2基が倒壊するなど、千葉県のほぼ全域にわたり、およそ64万戸が停電しました。


停電は各地で1~2週間続き、完全復旧には1か月以上を要しました。
照明器具はもちろん、携帯電話の充電器やエアコンも使えなくなり、停電期間中、熱中症による死者も出てしまいました。
猛烈な風の破壊力
風の強さと被害の程度を図解しました。
○秒速10~15メートルの風速で傘が差せなくなります。
○秒速15~20メートルでは転倒のおそれもあり、看板や瓦などが外れはじめます。
○秒速20~25メートルになると立っているのが困難になり、樹木が倒れはじめます。
○秒速30メートル以上の強風では、大型トラックが横転することがあります。
これが実際に起きたのが2018年に起きた台風21号です。近畿地方では最大瞬間風速50メートルを超えた猛烈な風が襲い、トラックや乗用車が吹き飛ばされて横転、建物の屋根がはがれて飛ばされるなどの被害がありました。


強風の被害で危険なのは「飛散物」です。強風で飛んできたもので大けがをしてしまう「連鎖被害」に注意が必要です。
強風で飛んでくる飛散物にどのくらいの威力があるのか?圧縮した空気で物体を飛ばす装置を使って実験した映像があります。(映像提供:京都大学防災研究所)
傘や濡れた雑誌を秒速35メートルで飛ばしてみると、ガラス窓を粉々に破壊しました。


平常時には危険と思えない物でも、強風に乗って飛散物として飛んでくると、凄まじい凶器になってしまうのです。
自宅で強風にどう備えるか?
①窓を補強する
窓に飛散防止フィルムやガムテープを貼って補強します。その上で、カーテンやブラインドは閉めておくと、割れた場合にガラスが飛び散るのを防いでくれます。
②雨戸がある家庭では雨戸を閉める
③植木鉢などを室内へ
ベランダや庭で飛散しそうなものは家の中にしまうか、飛ばないように固定してください。
「飛んでいくと、誰かを危険にさらすことになり、自分が加害者になってしまう。避難する場合でも、事前の備えの中でやっておくことが必要です」(片田さん)
④停電に備えて、手回しラジオや予備の電源などを準備
台風15号が千葉県を襲った時のように、大規模停電が長期間続く場合もあります。電灯はもちろんのこと、携帯電話やスマートフォンのバッテリーの準備が欠かせません。
これらはあくまでも台風が来る前に行ってください。上記①②③の備えは風が強くなってからは危険です。
台風は来ることが予測できる災害です。およそ3日ぐらい前になると、進む方向が見えてきます。この時間的な余裕を使って、ゆとりをもって早めに準備することが大切です。
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