この記事は、明日をまもるナビ「台風上陸に備えよう!知っておくべき対策」(2022年8月28日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
台風の上陸が最も多くなる9月
台風は例年、8月から9月にかけて日本に接近する数が多く、上陸するのは9月が多くなっています。
猛暑や大雨が続いている今年がどうなるかを、ニュースウオッチ9でおなじみの気象予報士、斉田季実治さんが解説します。

台風は、9月は平均で1つ上陸しており、接近するのは3.3個。9月から10月は、勢力の強い台風が日本に接近し、被害も大きくなりやすい時期です。
台風が発生する場所は、太平洋のフィリピンの東の海上やマリアナ諸島付近。台風のエネルギーとなる水蒸気が、この海水温の高い海域で供給されて台風が生まれます。
その後、季節によりますが、太平洋高気圧のへりを回るように北上し、日本付近で偏西風に流されて東へと進みます。
台風は自力ではなく、周りの環境によって動きます。日本列島が太平洋高気圧に覆われる夏は近づくことは少ないですが、秋になり、太平洋高気圧が東へ後退すると、台風が日本に近づくことが多くなるのです。
月ごとの台風が通りやすいコースを表した図を見ると、7月以降はルートがだんだんと東寄りに変わってきます。10月になると西の方に進む場合もあります。
どうなる今年の台風?
今年の異常に暑かった日本の夏は、台風の動きにも影響を与えるのでしょうか?
日本近海の海面水温の状況を見てみます。海面水温の違いで色分けされています。
ピンク色のところが高く、左側の平年値と比べると、フィリピン近海で30度以上の特に高い海域が広がっています。
海面水温が高いと、この海域で台風が発生しやすく、勢力も強くなります。2019年の台風19号や、2018年に西日本に上陸した台風21号のような、発達した台風になる可能性もあります。
2019年10月の台風19号は大型だったため、大雨の元となる大量の水蒸気を日本付近へと持ち込みました。台風の北側に前線が発生し、台風が上陸する前から大雨が降り始めました。
その後、台風の中心付近の活発な雨雲が加わり、広い範囲で記録的な大雨となって、関東甲信越から東北地方に甚大な被害をもたらしたのです。
台風が勢力を維持する海面水温は27度以上と言われています。当時、関東沿岸付近まで海面水温が高かったことも、台風が猛威をふるった原因の一つとされています。
今年の夏も海面水温27~28度ぐらいあり、大型台風の勢力が強く被害が大きくなる危険性があります。
一方、台風の上陸点や進路ばかりに気を取られないことも大事です。台風の勢力は風の強さであって、雨がどこに降るかは別なのです。
2019年の台風19号のように前線が発生したり、台風の進路や地形などによったりしても、台風から離れて大雨になることがあるので警戒が必要です。
よく台風から温帯低気圧に変わると安心してしまう方がいます。しかし、温帯低気圧に変わってからも大雨の可能性があり、風が強まった事例は過去にあるので、油断は禁物です。引き続き、気象情報に注意しましょう。
台風の被害は複合的
防災の専門家 東京大学大学院特任教授の片田敏孝さんは、
「台風は、他の災害に比べて、複合的に被害が出ることが大きな特徴」と指摘しています。
台風は強風を伴い、大雨を降らせます。沿岸部では条件により高潮が起こることもあります。こうした災害が複合的に連動して被害をもたらすということで、「災害が起こるまでのシナリオが多様」(片田さん)なのです。
さらに、最近では台風が大きくなり、いわゆる想定の範囲には収まらないことが多くなってしまっています。
「とにかく台風に関しては、早め早めに情報収集し、事前の備えをしっかりやっていただくという心構えが必要だと思います」(片田さん)

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