この記事は、明日をまもるナビ「チャレンジ!BOSAIアクション キックオフ」(2022年7月24日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
これだけは知っておきたい、BOSAIアクションでわかること
▼災害を怖がることはスタートライン。アクションを始める大事なきっかけになる。
▼シミュレーションゲームでも身にしみてわかる、防災のための事前準備の大切さ。
▼避難を促すために身近な人からの声かけ方法をふだんから考えておくとよい。
防災かるたづくりにチャレンジ 災害から知る先人の知恵
番組内で結成されたBOSAIキッズ団の鈴木夢(ゆめ)さん・楽(たの)くんの姉弟チームが訪れたのは、群馬県板倉町。
群馬大学が地元の小学生向けに開いている「防災かるた作り」に参加しました。かるた作りイベントは、2015年から群馬県内各地で開かれています。
イベントの最大の特徴は、子どもたちが地域の人に直接会って話を聞くこと。話の中から子どもたちが印象に残ったことをかるたにしていきます。

楽くん・夢さんが作ったかるたを、スタジオに持ってきてもらいました。


番組では“ヤモリン先生”こと、京都大学防災研究所教授の矢守克也さんが子どもたちの体験にアドバイスしました。

ヤモリン先生
「地域の人たちの知恵がちゃんと詰まっていて、これから自分たちが、それをどうやって現代にいかせるのかを考えることが大事ですね」
防災かるたは自分で作っていなくても、遊ぶだけでも学べることがたくさん。地域防災の歴史や営みを知ることができるのです。

触って動かして大災害を体験!
BOSAIキッズ団・ミュージカルチームの大前優樹(おおまえ・ゆうき)さん、徳渕来美(とくぶち・くるみ)さんが訪れたのは、名古屋大学が2014年に開設した「減災館」。南海トラフ巨大地震に備え、さまざまな知識が学べる施設で、これまでに8万人以上が訪れています。

「減災館」での見学・体験を終えた2人に感想を聞きました。
来美さん「こんなに大きな地震が本当に来るということにびっくりしました」
優樹さん「本当怖かったです。だから対策しないと、って思いました」
ヤモリン先生のコメント
「防災の勉強やアクションは、まず本当に怖いなと思うことがスタートライン。怖がることは恥ずかしいことじゃなくて、そこから何か始めようという大事なきっかけになります」
このミュージカルチームの2人が歌っているのが、NHKみんなのうた「こわがりヒーロー」です。
地震や大雨が発生したとき、子どもたちが「こわい!」「逃げよう!」と声をあげることで、“正常性バイアス”に陥りがちな大人たちの気持ちを動かし、家族や地域の人たちの命を守るという内容の歌になっています。
ミュージカルチームの2人が、「減災館」での災害体験のあとに、実際にやったことがあります。
来美さんは、お母さんと相談して防災リュックを準備しました。
優樹さんは、防音室の中の棚などが倒れないようにしました。

2人の防災体験「BOSAIアクション」は、明日をまもるナビで募集中の「チャレンジ報告」で紹介しています。
募集の詳しい内容もこちらのホームページからご覧ください。
シミュレーションゲームで楽しく実践的に学ぶ
ここからは、学校の防災授業で実際に使われている、楽しみながら学べるゲームを紹介します。
まずは、「きいちゃんの災害避難ゲーム」。南海トラフ巨大地震が起きた場合の避難についてリアルに考えてもらおうと和歌山県が作ったものです。
番組では、このゲームを使った防災授業を取材するため、和歌山県橋本市にある城山小学校を訪れました。この日は、5年生が減災について学んでいました。
「きいちゃんの災害避難ゲーム」は、地震による津波からの避難を想定したシミュレーションゲームです。自宅から順番に進み、時間内に避難場所にたどり着けたらゲームクリアです。
1マス進むごとにカードをめくると、予期せぬさまざまな困難が立ちはだかります。その時の判断で時間をロスしてしまうと、津波の印が増えていきます。この印が指定の枠の端まで埋まると津波が到達 = ゲームオーバーになってしまいます。
県の担当者から説明を聞いたあと。チームに分かれてゲーム開始!
『いきなり地震が発生!自宅から出ようとしたら、家屋が倒壊、家のドアが開かない!』
小学生「寝室から脱出するのに時間がかかった」「うわぁー!」
なんとここで4分も時間をロス!
『ブレーカーを落とさず逃げた場合、後で通電火災が発生する可能性がある』
ブレーカーを落とすには2分必要…。
小学生「オレはブレーカーを落とさずに逃げる」
命を守るためには1分1秒を争います。ここでは避難を優先することにしました。
ゲームをする子どもたちも本気モードに。
各チーム、自宅を出たところですでに津波到達があと15分ほどに迫っています。
ここで、あるチームが引いたカードは…
『避難行動要支援者 道路が割れ、車椅子の人が逃げられずにいる』
このチームは津波到達まであと5分。要支援者を助けるには4分必要です。残り時間はあと1分。どうする?
小学生「ギリギリいける!」「助ける!」
こちらのチームは、住宅火災が発生。先に進めません!
結局、ほとんどのチームがゲームオーバー。避難場所にたどり着けませんでした。
実はこのゲーム、2回やることに意味があるんです。
2回目は、ゲームのクリアに必要な、あるアイテムが配られます。
そのアイテムとは、『事前準備カード』! 避難バッグの準備や、住宅の耐震化など、準備しておくべきことが書かれています。
全部で10枚の中から5枚を選びます。
この「事前準備カード」をもって、再びゲーム開始!今度は避難場所にたどり着けるのでしょうか?
自宅からの脱出に時間がかかったチームでは、家の地震対策を万全にしました。地震が起きると家具が心配ですが、事前に固定していたのでセーフ!
こちらのチームも事前にブロック塀を補強していたので、無事通ることができました。
こうして、2回目は全てのチームがゲームクリア!避難場所にたどり着くことができました。
参加した子どもたちは、事前準備の大切さを学びました。
「事前に準備しておくとすぐに逃げられる」
「家に帰ったらお母さんに話して(被害を)防げるようにしたい」
BOSAIキッズ団もスタジオでゲームに挑戦!
1回目、鈴木姉弟チームは津波到達1分前でぎりぎりゲームクリア。ミュージカルチームはゲームオーバーに。
事前準備をして2回目に挑戦すると、ミュージカルチームは津波到達の21分前にゲームクリア。減災館での体験を生かして、家具の固定などの『住宅の耐震化カード』を選び、無事にクリアできました。
ヤモリン先生
「事前準備が大事だよと言われるだけじゃ、『うーん?』と思ってしまうけど、実際にこのゲームをやると、身にしみてわかる。よくできたゲームです」
このゲームは和歌山県のホームページから無料でダウンロードできます。皆さんもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
●きいちゃんの災害避難ゲーム ※NHKサイトを離れます
デジタル防災クラス おじいちゃんへの声がけにチャレンジ
最後に紹介するのは、NHKが開発したデジタル教材「デジタル防災クラス」です。学校で配られているタブレット端末を利用します。
今回のテーマは水害からの避難。小学生とその家族が大雨で避難しているとき、近所のおじいちゃんに遭遇した場面を想定して、どう行動すべきかを学んでいきます。
家を出て家族で避難所へ。
おや?一人のおじいちゃんが、家の前で雨の様子をうかがっている。まだ避難していないみたい…
あ、お父さんが「一緒に避難しましょう」と声をかけたね。おじいちゃん、一緒に行きましょう!
ところが、おじいちゃんは…
「大丈夫じゃ!ずーっとこの街に住んでいるけど、大雨で避難したことなんか一度もない。これから少し川の様子を見に行こうと思っておる」
ダメだ、おじいちゃんは避難しようとしない。しかも、川を見に行こうとしてる。いま川に絶対近づいてはいけない。おじいちゃんが危ない!
このゲームのミッションは、「どんな声をかけて、おじいちゃんが『自分も避難するか』という気にさせるのか」をみんなで考えてみようというものです。
ここで、『天国にいるおばあちゃんの言うことなら聞いてくれるかもしれない』というヒントが出ます。
参加者に配られたタブレットには、おばあちゃんを呼び出すためのボタンがついていて、力を合わせてタブレットをタップすると、天国のおばあちゃんが現れます。

さあ、ここからが本当のミッション。おばあちゃんになったつもりで、どんな言葉をおじいちゃんにかければいいのでしょうか?


おじいちゃんが避難を決意してくれました。
ミッションクリア!
ヤモリン先生
「素晴らしい二人のチームプレーでした。夢ちゃんの語りかけ方は、言葉の中身も大事だけど、その気持ちの込め方も大事だなと気づかされました。楽くんのも具体的な指示でとても良かったです」
続いて、ミュージカルチームも説得に挑戦!


ヤモリン先生
「“後悔”という言葉がキーワードでした。『あの時、こうしておけばなあ』と後悔される方は被災地にたくさんいらっしゃるので、そういう方の気持ちをくんだ、とても気持ちのこもった声かけだったと思います」
「自分が逃げること、身を守ることが一番大事。それができたら、今度は「声をかけることで他の人の命を守る」こともできます。みんなが声をかけてあげればちゃんと逃げてくれそうな人はいないかな?そしてどのように言葉をかけてあげるか考えておきましょう」(ヤモリン先生)

最後に、防災で大事なことは?ヤモリン先生に聞きました。
「防災は、“まさか”ということが起きてからでは遅いことを、今回たくさん学びましたね。ふだんから準備しておくことが大事なんです。危ないなと思うことはしっかり怖がる。ちょっと不安だなと思うことは、周りの人に言う。その気持ちをそのままに置いておかず、アクションにつなげて周りの人も巻き込んでいくことが大事です」(ヤモリン先生)

