この記事は、明日をまもるナビ「教えて!斉田さん どうなる?この夏の天気」(2022年6月19日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
これだけは知っておきたい、熱中症を防ぐポイント
▼熱中症で救急搬送されるのは高齢者が最も多い。暑さを感じにくく我慢しがちなため。
▼疑いのあるときは救急車を呼ぶ。応急措置として左右の首筋、わきの下、両脚のつけ根を冷やす。
▼のどが渇いていなくても、コップ1杯の水を定期的に飲むように心がける。
熱中症の症状とは?
「熱中症」とはどういう症状なのでしょうか。
人間は汗をかいて体温を下げます。汗をかきすぎて、水分や塩分が不足すると、体温調節がうまくできなくなり、体に熱がこもって熱中症になってしまいます。熱中症になると、めまいや筋肉痛、吐き気が起きたりするなどさまざまな症状が出てきます。重症の場合は亡くなることもあります。

厚生労働省によると熱中症の死亡者数は、1581人(2018年)、1224人(2019年)、1528人(2020年)に上ります。猛暑は災害だと思って備える必要があります。
熱中症は、特に梅雨明けの暑くなり始めが危険です。
特に注意が必要!高齢者の対策
去年の6月から8月にかけて、熱中症で救急搬送されたのは、全国で4万人以上。その半数以上を高齢者が占めています。
(総務省消防庁まとめ)

東京都文京区にある日本医科大学付属病院・高度救命救急センター長の横堀將司さんは、
「身体機能が落ちている高齢者は、非常に(熱中症の)リスクが高い。温暖化によって、どんどん患者が増えている」と心配しています。
この日、搬送されてきたのは80代の女性。重度の熱中症と診断されました。朝方、自宅の布団の上で意識を失っているところを家族に発見されました。女性の部屋にはエアコンがありましたが、使用されていませんでした。

熱中症のリスクを予測している筑波大学 計算科学研究センター教授の日下博幸さんは、
「高齢者のほうが熱中症になるリスクが高いとわかっているので、高齢者が多い地域は非常に厳しい。救急車が足りなくなって、熱中症の患者を病院に運べない事態もありえる」と、医療のひっ迫を危惧しています。
高齢に加え、『孤独』も熱中症の被害を大きくしていることが見えてきました。
2020年の夏、東京23区内で、屋内で熱中症により亡くなったのは187人。そのうちの7割以上が1人暮らしでした。

高齢者は暑さを感じにくく、我慢しがちな傾向にあります。汗をかきにくく、熱中症の自覚がないことも多いため、症状が重くなる前に周りが気づいてあげることも大事です。
もし熱中症になったら?効果的な体の冷やし方
熱中症になるのはお年寄りに限りません。
実は気象キャスターの斉田季実治さんも熱中症になった経験があります。
「10年前の8月、家族旅行をしている時に、子どもに気を取られ、自分の水分補給がおろそかに。頭が痛くなってきて、帰宅後、体温を測ると39度超えで、熱中症を自覚しました。ただ自分で水分を取れる元気はあったので、水分と塩分を補給し安静にしていたところ、翌朝には通常に戻りました」(斉田さん)

熱中症の疑いがある場合は、速やかに救急車を呼ぶか、医療機関を受診するようにしてください。
応急措置としては、「体を冷やすこと」がとても大切です。
●首の両側、●両わきの下、●両脚のつけ根 などを冷やします。

これらの部分は、太い血管が皮膚の表面に近いところを流れているため、効果的に体を冷やすことができます。
スーパーなどでもらった保冷剤をハンカチやタオルでくるんで固定します。
冷凍庫などに保冷剤を常備しておくと、こういう時に対応できます。

熱中症予防のポイント!手作り“経口補水液”&暑さよけ
ここからは、熱中症を防ぐ方法を学んでいきます。ポイントは2つです。
①こまめに水分補給
食事以外に1日1.2リットルの水分を取るとよいと言われています。たとえ、のどが渇いていなくても、コップ1杯の水を定期的に飲むように心がけましょう。
水やスポーツドリンクがおすすめです。
最近よく目にするのが「経口補水液」です。汗をかくと失われる体内の水分と塩分を同時に補える効果があります。熱中症対策として効果的な経口補水液は、家庭でも作ることができます。
【自宅で簡単に作れる経口補水液】
●材料
水2リットルのペットボトル 1本
砂糖 大さじ9
塩 小さじ1
(お好みでレモン果汁)
●使うもの
ボウル(1リットル分)
漏斗

●作り方
1.材料がよく溶けるように、水を半分ボウルに出す。
2.漏斗を使って、ペットボトルに塩と砂糖をボウルの水で溶かしながら入れる。
3.フタをして、よく振って混ぜる。
4.レモンを搾って加えると飲みやすくなる。
5.残りの水をペットボトルに戻し、よく混ぜる。
今回は2リットルのペットボトルに合わせた分量を用意。
糖分を入れることで腸で効率よく吸収されます。
②暑さを避ける
何よりも大切なのは、暑さを我慢しないこと。
屋内ならエアコンや扇風機を使い、屋外もなるべく日陰を利用します。
暑い時間帯の外出は控えましょう。
暑さをしのぐのに斉田さんオススメのグッズ、それが「日傘」です。
「日陰を探して歩かなくても、日陰を持ち歩けるのはすごく便利な気がします」(斉田さん)
日光を遮るだけで、体感温度は5度くらい違うそうです。女性にはおなじみですが、最近は男性でも使う人が増えています。
湿度が重要「熱中症警戒アラート」
熱中症にならないための情報発信も始まっています。
昨年から始まった「熱中症警戒アラート」です。
熱中症の危険性が極めて高いと予想された場合に、環境省と気象庁が発表し、自治体やメディアを通じて注意を呼びかける取り組みです。
去年4月から10月までの間に全国で合計613回のアラートが発表されています。
【参考】
環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症警戒アラート」
※NHKサイトを離れます。
熱中症は気温の高さだけで起きるわけではありません。
熱中症を予防する指標となる「暑さ指数」(WBGT)があります。この数字が33以上になるとアラートが発表されます。
熱中症は汗が蒸発しにくいと発症のリスクが高まります。そのため、暑さ指数は湿度が重視されています。輻射熱とは、地面や建物から出る熱、照り返しの暑さのことです。
過去には気温が23度でも、湿度が86%で熱中症になって搬送された事例もあります。湿度がかなり重要だということは覚えておきましょう。
【参考】
猛暑は“災害” 命を守る「熱中症」対策(災害列島)
2020年9月8日公開
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