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NHK民放6局共同企画 「テレビに何ができるのか 未来の命を救う方法とは?」(後編)

NHKと民放の6局が集まって、防災について考える共同プロジェクト《キオク、ともに未来へ。》。災害現場や防災の最前線での取材経験をもとに、アナウンサーが防災への取り組みをプレゼンテーション!テレビに何ができるのか、未来の命を救うための方法を考えます。(後編)

この記事は、明日をまもるナビ スペシャル「未来の命を救いたい」(2022年4月3日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。


「知る から 動く」へ/佐々木恭子アナウンサー(フジテレビ)

フジテレビ佐々木恭子アナウンサーも、今年3月、防災授業を行いました。

フジテレビ 佐々木恭子アナウンサー


●2つのプロジェクトが防災授業に融合

この防災授業はフジテレビの2つのプロジェクトを融合させて生まれました。
1つは東日本大震災から11年間続けてきた番組「わ・す・れ・な・い」。徹底的な映像の検証にこだわり、証言記録を残してきた番組です。

フジテレビ「わ・す・れ・な・い」から
フジテレビ「わ・す・れ・な・い」から

11年目の今年は、地震発生時に声をかける人がいるだけでスムーズな避難行動につながった様子を紹介。そのきっかけが何だったのかを検証しました。

フジテレビ「わ・す・れ・な・い」から
フジテレビ「わ・す・れ・な・い」から

また、フジテレビではアナウンサーが小学校に出向く出前授業「あなせん」を行ってきました。2005年から延べ2万900人の子どもと関わっています。

今の子どもたちのコミュニケーションは、空気を読みます。ちょっと違うことを言いにくい。でも「本当は自分がどんなコミュニケーションをしたいのか、きっかけを作れるようなリーダーになってほしい」とのメッセージを伝えてきました。

アナウンサーによる小学校への出前授業「あなせん」

●避難経路を自分たちで考える授業

この2つのプロジェクトに共通する思いから、今回、防災授業を行う東京・広尾学園の生徒には「避難経路を自分たちで考える」ディスカッションをしてもらいました。

「階段に名前をつける。そうしたら情報伝達も速くなる」
「心配するべきは帰る方法がないこと。みんなで体育館に移動し、避難備蓄を使って、親の迎えを待って、地下鉄が復旧するまで待つ」
「9階と2階では、避難にかかる時間も階段を下りる時間も違う。誰も出ていけない無駄な時間がないように避難経路を考えた」
「(学校の付近にある)有栖川公園より学校の屋上のほうが標高が高い。揺れが収まるまでは教室でステイで、津波が来るとなったら屋上に行ったほうがいい」

生徒たちは避難を「自分ごと」として考え始めました。次にどうやって「みんなごと」にしていくのか。どうやったら巻き込んで、仲間が増えていくのか。そこで私たちアナウンサーと共通の悩みが出てくるはずです。

避難経路を話し合う生徒たち
避難経路を話し合う生徒たち

佐々木恭子アナウンサー
防災を自分ごとにするには「知る から 動く」。まず知ることが大事。でも知るだけでは足りません。私たちがテレビで行う呼びかけは万能ではありません。それを誰かが受信して、必要な人に伝えてくれる、そんな一緒に動いてくれる仲間を増やしたい。私たち自身もテレビを飛び出して、どんどん防災授業などで呼びかけていきたいと思っています。

●討論 防災が「自分ごと」になるステップとは?

「防災は、生徒と先生が一緒になって生き抜くもの。生徒がどうしたら全員が生き残り、助け合えるかを自ら考えて、先生から管理される側から運営する側になる」(大木准教授)
「学校でのこの積み重ねは私たちにも大きな学びになっている」(テレビ東京 島田)


技術のつながりが未来の命を守る/島田弘久アナウンサー(テレビ東京)

テレビ東京の島田弘久アナウンサーが伝えるのは、企業の防災への取り組みです。

テレビ東京 島田弘久アナウンサー

島田アナが掲げたキーワードは「個人と企業 技術がつながる」。東日本大震災以降に生まれた、命を救う技術や会社の取り組みを紹介しました。

●発想の転換「命を守る車いす」

東日本大震災から1か月後、島田さんはボランティアで訪れた宮城県の津波の被災地で、残された建物の中に放置されていた車いすを発見。「この人たちは助かったんだろうか」と気になっていました。

その翌年に出会ったのが、JINRIKIの中村正善社長。「命を守る車いす」の開発者です。

命を守る車いすを開発した中村正善さん

車いすは、悪路や坂、特に階段では大人の男性が数人がかりで運ばなければなりません。

通常の車いすは、悪路で押すのに力がいる
通常の車いすは、悪路で押すのに力がいる

中村さんは、車いすの前輪を浮かせて人力車のように引けるアタッチメントを開発しました。通常の10分の1程度の力で動かせるため、砂地やがれきなどが苦にならないだけでなく、子どもなど力の弱い人でも引くことが可能です。階段も、後ろでもう一人が支えるだけで上がることができます。

緊急時を想定し、アタッチメントの脱着も短時間でできるよう工夫しました。

人力車のように引っ張ると楽に動かせる
人力車のように引っ張ると楽に動かせる
引く車いすなら階段も2人が手伝えば登れる
引く車いすなら階段も2人が手伝えば登れる

●命を守る地図

地理や地図を専門とする青山学院大学の古橋大地教授は、「命を守る地図」に取り組んでいます。
ドローンで災害現場を上空から撮影し、何千枚もの写真をもとに立体化したうえで地図にはめ込みます。発災後48時間以内に災害現場の最新地図「クライシスマッピング」ができあがります。

ドローンで撮影して作成したクライシスマッピング
ドローンで撮影して作成したクライシスマッピング

2021年7月に熱海市で起きた土石流災害でまだ崩れていない危険箇所を指摘した地図では、二次災害の防止に役立ちました。

熱海の土石流災害現場で危険箇所を指摘
熱海の土石流災害現場で危険箇所を指摘

地図はスマートフォンからでも避難ルートや救援ルートを迅速に見つける助けになります。写真さえ集められれば、世界中のどこにでも応用できる技術です。

島田弘久アナウンサー
考え方一つで、日常の不便を解消する工夫や、手にしている道具が防災に役立つものに変わる。それを形にして、持続性のあるものに変えていくのが、企業や国、自治体の役割になると思います。私たちの何気ない日常における視点の持ち方一つにも、防災の大きなヒントがあるのではないでしょうか。


●討論 技術の進化と防災

慶應義塾大学准教授 大木聖子さん
慶應義塾大学准教授 大木聖子さん

「まさに災害は技術との“追いかけっこ”。過去に起きた災害の教訓をフィックス(固定)するだけではだめ。次に起きる災害は何かと、先を見ながらやっていかなければいけない」(大木准教授)
「よい取り組みが世の中に広まってどんな自治体にもいつも備えてあるというふうにできるといい」(テレビ朝日 山口)
「企業の技術を日常使うものから、発想を変えて防災に役立つものへ」(テレビ東京 島田)


横のつながりが想定外をなくす/山口豊アナウンサー(テレビ朝日)

最後のプレゼンテーションはテレビ朝日の山口豊アナウンサー。入社して30年、数多くの災害現場を取材してきました。東日本大震災では「もっと救える命があった」という思いを強くしました。

テレビ朝日 山口豊アナウンサー


●そこには救える命があったはず

東日本大震災の特別番組を担当した山口アナウンサーは、被災地を取材して歩き、被害の大きさにがく然としたと同時に、自分の認識の甘さも痛感したといいます。

宮城県女川町の検証取材では、町の中心部に近い高台に逃げた人が助かった一方、そこからわずか200~300メートル離れたビルの屋上では、高さ20メートルという想定外の津波が襲い、多くの人が命を落としたことがわかりました。

また、西日本豪雨の被災地での取材でも、逃げる時間も救える命もあったはずの現場がたくさんありました。

テレビ朝日 山口豊アナウンサー

●水害を機にできた住民のつながり

迅速な避難はどうすればできるのか。例として紹介したのは、西日本豪雨で12人が犠牲になった広島県熊野町の住宅団地「大原ハイツ」の事例です。

助かった住民の皆さんは、避難先の体育館で初めてお互いが近所に住んでいることに気づきました。そこで団地の入り口の花壇を作り、ひまわりを植えました。水やりなどの世話で人が集まるようになると、自然とコミュニケーションが生まれたのです。

住宅団地の入口に花壇を作る住民たち(広島県熊野町)
住宅団地の入口に花壇を作る住民たち(広島県熊野町)

住民は、次に「自主避難マップ」を作りました。この地図には「蓋がついていない側溝は雨が降ると下が見えず足をとられる」といった注意書きや、当時の土石流の流れを記したり、泥が入ってこなかった空き地を避難場所として描き込んだりと、知恵と経験が盛り込まれています。

住民が作った「避難マップ」

この地図を使って避難訓練を行ったところ、参加者が大幅に増えました。この地域の住民はいま、「横の連携を強めることが命を救う」ことに確信を持っています。

山口豊アナウンサー
横のつながりの大切さ。これは私たち報道に携わる者にも当てはまります。私たち報道の防災力が高められたら、万が一、災害が起きた時に、テレビをつけてどのチャンネルを見たとしても、適切な避難行動が取れて、命を救えるかもしれない。「横のつながりが想定外をなくす」。これで頑張っていきましょう。

2022年1月に開かれた6局アナウンサーのオンライン勉強会
2022年1月に開かれた6局アナウンサーのオンライン勉強会

みんなが伝え手になってほしい

NHK民放6局のアナウンサーの勉強会は、昨年放送されたNHK「明日をまもるナビ」がきっかけでした。今回の番組で出てきた、いくつかのキーワードをもとに、スタジオでさらに議論を深めました。

スタジオで話し合う出演者

「視覚的に伝える矢島アナのスキルをぜひ教えてほしい」(フジテレビ 佐々木)
「視聴者へ具体的な行動を促すためには、われわれのスキルが必要」(フジテレビ 伊藤)
「大げさに伝えがちだが、個々に響く具体的で身近な言葉で伝えるべき」(日本テレビ 矢島)
「具体的な地名や場所が言えるかどうか。災害時は局ごとに視聴率を争っている場合ではない」(TBS井上)
「連携し議論を重ねて、一歩ずつ進んでいくのが大事」(テレビ朝日 山口)
「テレビ局、行政や研究者、SNSともつながって、新たに情報発信のツールを考えていきたい」(NHK井上)
「若い力が大事。防災教育の意味は大きい」(テレビ東京 島田)

最後に大木准教授が議論をまとめました。

慶應義塾大学准教授 大木聖子さん
慶應義塾大学准教授 大木聖子さん

「私たちだけが伝え手じゃなくて『今すぐおじいちゃんに電話してあげてください。あなたが今度は伝え手になるんです』とテレビを見ている人にも、伝え手の役割を担ってもらう。ただ見てる人から役割が変わることが、まさに『自分のこと化』です。『今度はあなたが家族のアナウンサーになってください』と役割を変えてあげる。そうすればいろいろ出てきた課題が解決できると思います」(大木准教授)

みんなが伝え手になってほしい。そうすればひとり一人が身近な人を救うことができる

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