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NHK民放6局共同企画 「テレビに何ができるのか 未来の命を救う方法とは?」(前編)

NHKと民放の6局が集まり、防災について考える共同プロジェクト《キオク、ともに未来へ。》を立ち上げたのは、東日本大震災から10年となった昨年(2021年)3月のことでした。「テレビに何ができるのか?」をテーマに、各局のアナウンサーたちはこの1年、勉強会を開きながら考えてきました。その成果として、今回はアナウンサーがそれぞれの防災への取り組みを報告し、それをもとに未来の命を救うための方法を考えます。

この記事は、明日をまもるナビ スペシャル「未来の命を救いたい」(2022年4月3日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

【出演】
司会:塚原愛(NHK)、伊藤利尋(フジテレビ)
コメンテーター:大木聖子(慶応義塾大学准教授)
パネリスト:井上二郎(NHK)、矢島学(日本テレビ)、山口豊(テレビ朝日)、井上貴博(TBSテレビ)、島田弘久(テレビ東京)、佐々木恭子(フジテレビ)

塚原愛(NHK)、伊藤利尋(フジテレビ)、大木聖子(慶応義塾大学准教授)

井上二郎(NHK)、矢島学(日本テレビ)、山口豊(テレビ朝日)、井上貴博(TBSテレビ)、島田弘久(テレビ東京)、佐々木恭子(フジテレビ)

どうすれば防災を“自分ごと”にできるのか?
6人のアナウンサーがそれぞれプレゼンテーションを行い、慶應義塾大学准教授の大木聖子さんとともに意見を交わしました。


「具体的」「視覚的」に伝える/矢島学アナウンサー(日本テレビ)

気象庁担当記者を兼務する日本テレビの矢島学アナウンサーは、昨年夏、九州で出された大雨特別警報での生放送を例に、「避難を促すアナウンサーの言葉はどうあるべきか」を報告しました。

日本テレビ 矢島学アナウンサー
日本テレビ 矢島学アナウンサー

2021年7月10日、鹿児島・熊本・宮崎に大雨特別警報が出されました。

2021年7月10日 日テレNEWS24の災害速報

矢島学アナウンサー(日本テレビ)
「では気象庁のホームページと国交省のホームページを見ながら、現在の鹿児島県の危険度を確認したいと思います…」

大雨警戒レベル4=避難指示が出ているので避難してくださいと呼びかけても、なかなか逃げてもらうことができないという危機感が矢島アナウンサーにはありました。そこで、いま避難が呼びかけられている理由、どんな危険が迫っているのかを映像やデータで視覚的に説明しようと考えました。

5段階の大雨警戒レベル

土砂災害は、スタジオの大型モニターに気象庁ホームページの「キキクル(危険度分布)」を表示。洪水は、国土交通省「川の防災情報」を使いました。

気象庁ホームページを表示して説明

【参考】気象庁ホームページ「キキクル(危険度分布)」
https://www.jma.go.jp/bosai/risk/
※NHKサイトを離れます

国土交通省「川の防災情報」の水位情報

【参考】国土交通省 「川の防災情報」
https://www.river.go.jp/index
※NHKサイトを離れます

また、川のライブ映像を取り込むことで、避難が必要な状態が伝わったといいます。

鹿児島・宮崎・熊本に「大雨特別警報」2021年7月10日放送

矢島アナウンサー
われわれアナウンサーが、避難が必要な理由を、映像やデータを使いながら実際の切迫感とともに伝えることで、住民の皆さんに命を守る行動をとってもらえるのではないか。大切なのは「具体的」「視覚的」に伝えることです。

●討論 行動を起こしてもらうには?

「伝える」ことが仕事のアナウンサーにとって、非常時に「行動を起こしてもらう」ためにはどうしたらよいのか?共通の問題意識を話し合いました。

スタジオの様子

「地元の方ならふだんの状態が分かっている川の映像を見せること自体が災害情報になる」(大木准教授)
「映像を読み解く力をいかにふだんから身につけておくか」(TBS 井上)
「“逃げてください”を具体化する(どう安全に逃げるかを伝える)言葉があったほうがいい」(フジテレビ 佐々木)
「“今テレビを見ている場合じゃない”と言うのもアリかも」(NHK 井上)


身近な言葉が命を救う/井上二郎アナウンサー(NHK)

震災を知らない世代が増えていく中で、今どのような取り組みが必要なのか。
ニュースの現場で防災減災と向き合うNHK井上二郎アナウンサーは、言葉に着目し、「命を守る呼びかけ」の取り組みを伝えました。

NHK 井上二郎アナウンサー


●呼びかけの言葉を探るむずかしさ

避難の呼びかけをどうすべきか?東日本大震災以来、NHKのアナウンサーが研究者とともに考えてきた成果が「命を守る呼びかけ」マニュアルです。

NHKアナウンサー用マニュアル「命を守る呼びかけ」

この取り組みをもとに4年前の西日本豪雨時では、放送で「命を守ってほしい」とかなり強く呼びかけを行いました。しかし、死者・行方不明者が300人を超えるという結果となってしまいました。

その反省をもとにNHKが掲げたのが「地域発地域で 命を救う」というスローガンです。
全国にネットワークを持つNHKの強みを生かし、地域に密着した情報をその地域局から伝えることで、視聴者に防災を“自分ごと”として考えてもらおうという狙いです。

●地域の人々とともに言葉を探る

そこで取り組んだのが「地域版・命の呼びかけ」です。
地域局のアナウンサーが、地元の方や研究者・行政担当者とともに危険な場所を取材し、「どんな言葉だったら逃げてくれますか」と問いかけ、みんなで考えていくというものです。当事者の目線、被災者の目線から言葉を探り、議論を重ねました。

NHK地域局のアナウンサーが直接取材

その集大成が600ページを超える「地域版 命を守る呼びかけ」マニュアルです。
このマニュアルには地元の人ならピンと来る地域や場所、過去の災害が盛り込まれています。こうした言葉を使って、地域を知るアナウンサーが呼びかけていくことで、「自分が」呼びかけられていると感じる「避難のトリガー(きっかけ)」になるのです。

北海道釧路市の「津波呼びかけ」の例

●若者と考える、身近な人への呼びかけ

TBS、フジテレビ、NHKが共同で行った防災を考える授業でも、身近な人への呼びかけの言葉を考えてみました。

防災教室で授業をする井上二郎アナ
防災教室で授業をする井上二郎アナ

「もし今東京で大地震が起きたら、あなたは誰にどんな言葉を投げかけますか?」
この問いに、生徒たちは真剣に考えてくれました。
「お母さんよくパニクっちゃうので、『火災が起きるかもしれないから、すぐにブレーカーを落として』と言葉をかけたい」
「私の家はマンションの7階で、動かない方が安全だと思うので、『絶対に家からは出ないで』って家にいる父と妹に伝えたい」

井上アナウンサー
授業ではこちらの想定をはるかに上回る答えがありました。大切な人を思い浮かべてる分、本当に真剣に考える。「身近な言葉が命を救う」。
私は被災した方々に寄り添って言葉を伝えたいというふうに思うんですが、一方で神戸放送局に勤務している時に「マスコミって簡単に寄り添うって言うよね、何もわかってないくせに」と言われたことがあるんです。それはやっぱりドキッとしてですね…。私たちは経験していないから分からない。でも やっぱり分かろうとする努力はしたい。

●討論 「寄り添う」とはどういうことか?

「身近な言葉での呼びかけ」をきっかけに「被災地に寄り添う」ことが話し合われました。

「テレビ的にこの部分を取材して東京に送る、派手な現場があるからそこに行く、という自分がいた。でもそれが被災者にとって何のプラスにもなっていなかった」(フジテレビ 伊藤)
「でもそれをわれわれがやめてしまったら、世の中から防災や減災の機運が消えてしまうんじゃないか。それが通い続けている原動力」(日本テレビ 矢島)


空気感を伝える/井上貴博アナウンサー(TBSテレビ)

夕方のニュースキャスターを務めるTBSテレビの井上貴博アナウンサーは、今年3月の東日本大震災11年プロジェクト「つなぐ、つながる」でメインキャスターを務めました。

TBSテレビ 井上貴博アナウンサー


「東日本大震災で被災していない方にこそ、伝えるべき、伝わるべきことがあるのではないか。そこに3月11日に放送する意義がある」

●都市型津波に注目

特別番組で取り上げたのは「都市型津波」。ビルが林立している都市に津波が襲ってきたらどうなるのか。視聴者から寄せられた東日本大震災の映像をもとに、津波のスピードの違いに注目。また、海とつながるマンホールからの浸水、地球温暖化による海面上昇などによって都市型津波は猛威を増すという専門家の意見も紹介しました。

東日本大震災でビルの間を流れる津波
東日本大震災でビルの間を流れる津波

●石巻出身の若者が作った防災速報アプリ

若者が作った防災アプリも紹介しました。日本屈指のITエンジニアともいわれる石森大貴さんは、石巻市の出身。東日本大震災の時は東京にいて、何もすることができなかったという無念さから防災アプリを開発しました。気象庁が発表した防災情報のデータを瞬時に解析して送信することで、ユーザーのスマートフォンに早ければ1秒後には届くというものです。

防災アプリを開発した石森大貴さん
防災アプリを開発した石森大貴さん

また、番組ではSNSにも注目し、ハッシュタグ「#つながるおもい」を展開しました。井上アナも被災地の子どもとの交流体験を投稿しています。

TBSテレビ「つなぐ、つながる」ホームページ
TBSテレビ「つなぐ、つながる」ホームページ

井上アナウンサー
自分ごととして どう捉えるのか。ずっと心に残っているのが、ある被災者の「ここの空気感を伝えてね」という言葉でした。
私はきれいに伝えるとか、そういうことじゃないんだろうなと今、感じてます。生身の人間だからこそ、被災地で取材をさせていただいたからこそ、出てくる言葉がある。テレビって時間が限られているのに、五月雨式に情報が入ってくる。これだけ悩んで伝えているんだってことも感じ取ってもらいたい。

●討論 伝える側も悩み、葛藤している

「空気感、全貌を伝えられているのかという葛藤は常にある」(フジテレビ 佐々木)
「消防の隊長から『あなたたちも命を守る事業所の一つ』と言われ、もっと向き合わなければと思った」(テレビ東京 島田)
「悩みを共有しながら、議論を深めていくことが、これからも求められる」(フジテレビ 伊藤)

(後編)へ続く