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小学生に震災伝える高校生プロジェクト 東日本大震災11年・被災地の今(2)

東日本大震災から11年が経過した被災地では、震災を知らない世代が増えています。NHK盛岡放送局では、当時幼かった高校生たちに呼びかけ、小学生に震災の教訓を伝えるプロジェクト「てんでんこクラブ」に取り組んでいます。

この記事は、明日をまもるナビ「大震災から11年 被災地のいまを伝え続ける」(2022年3月13日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。


高校生が子どもに震災を伝える意味とは

いつか再びやって来る大災害に備え、NHK盛岡放送局が地元の高校生とともに始めた震災伝承のプロジェクト。それが「てんでんこクラブ」です。

「てんでんこ」とは、三陸地方の言葉で「てんでばらばらに」という意味です。津波が起きたら、“まず自分の命を守るために避難しなさい”という教訓として、地元で語り継がれている言葉です。

「津波が起きたら、まず自分の命を守るために避難しなさい」という教訓
「津波が起きたら、まず自分の命を守るために避難しなさい」という教訓

「てんでんこクラブ」は、震災当時幼かった高校生たちが、現在の小学生たちのために震災の教訓を伝えるための教材をつくり、それを使って防災教室を行うことを目的としています。

盛岡放送局の職員がサポート
盛岡放送局の職員がサポート

会場の手配や専門家に協力を依頼するなどのサポートを、NHK盛岡放送局の職員が行っています。

NHK盛岡放送局 藤沼佳奈職員
NHK盛岡放送局 藤沼佳奈職員

「今の高校生は幼い時に震災を体験して記憶がギリギリ残っている世代ですが、当時の自分たちと同じぐらいの年齢である小学生に伝えるということで、より実感をもって震災を伝承していくことができるのではないかなと思っております。これからの震災伝承を担っていく若い世代が、自らの言葉で伝えていくことが大切だと思って進めています」(NHK盛岡放送局・藤村職員)


2020年、活動スタート

てんでんこクラブがスタートしたのは2020年。発足当時のメンバーは、宮古市内の高校に通う10人でした。

教材を作るためのポイントを学ぶ高校生たち
教材を作るためのポイントを学ぶ高校生たち

鈴木咲楽々(さらら)さん 宮古高校2年(当時)
「自分が小学1年生の時に震災を経験したときに、防災のことをよく知らないままだったので、小学生でもわかりやすい教材作りができたらいいなと思い、参加しました」

佐藤美月さん 宮古高校2年(当時)
「小学生の皆さんやここにいる皆さんと深く関われたらいいなと思っています」

10人のメンバーは、取り上げるテーマや見せ方について、半年間にわたって話し合いを重ねていきました。

教材づくりに生かそうと、メンバーは津波で大きな被害を受けた宮古市田老(たろう)地区を訪ねました。

宮古市田老地区を訪問し、地震直後の様子を取材
宮古市田老地区を訪問し、地震直後の様子を取材

小学校の校長だった荒谷栄子(あらや・えいこ)さんが、地震直後の避難の様子から気づいたことを話してくれました。

荒谷さん
「放送で、『地震だからみんな集まれ』と言ったら、1分もかからなかった。そこにみんながすーっと集まってきた。すごく早かった。
やっぱり避難訓練を大事にすることだと思う。それを積み重ねていると、大きな地震があっても、あわてないというか、からだが自然に動くと思う」

田老第三小学校 元校長の荒谷栄子さん
田老第三小学校 元校長の荒谷栄子さん

メンバーは学校に戻り、地元の人たちから学んだ教訓を小学生にどうわかりやすく伝えるか、さまざまなアイデアを話し合いました。

佐々木真綾さん 宮古高校2年(当時)
「ちょっとおもしろい、楽しめる要素を作って、その中に小学生でもできることがあるというのを伝えたい」


いよいよ本番!小学生にわかりやすく伝える

2021年3月9日。いよいよ防災教室本番の日。宮古市立磯鶏(そけい)小学校の体育館に子どもたちが集まりました。

震災当時、まだ生まれていなかった子どもたちにどう伝えるのか。メンバーが考えたのは、「人形劇で伝える」ことでした。

人形劇「おたまくんのぼうさいきょうしつ」


人形・セリフ「うわー、地震だ、どうしよう!こんなときにどうしたらいいかわかんないよ!」

うわー 地震だ!どうしよう!


人形「1番、ろうかに出る。2番、机の下にもぐる。3番、だんごむしのポーズ、どれでしょう」

子どもたち「2番!」

人形「すごーい、みんなよく知ってるね」

すごーい みんなよく知っているね


参加した子どもたちは楽しんだ様子でした。
「津波は体験してないけど、こういうふうなんだなと思いました」
「今日学んだことをお父さんやお母さんやきょうだいの下の子たちに教えたいです」

参加した子どもたち


2回目の活動 語り部となる覚悟を学ぶ

2021年11月、盛岡放送局は2回目となる「てんでんこクラブ」をスタートさせました。舞台は、防災教育に力を入れている山田町(やまだまち)。東日本大震災では、津波とその後発生した火災で800人以上が犠牲となり、3000を超える家屋が被害を受けました。

海から見た山田町
海から見た山田町

震災後、インフラや住宅などの再建が進み、街並みは大きく変わりましたが、人口は震災前と比べ、2割以上減少しています。

街並みが大きく変わった山田町
街並みが大きく変わった山田町

今回メンバーとして参加したのは、山田高校に通う生徒13人です。

第2期メンバーの高校生たち
第2期メンバーの高校生たち

メンバーはまず、震災を経験した地元の人たちからその教訓を学ぶことにしました。
話してくれたのは、町で写真店を経営する昆尚人(こん・なおと)さんです。昆さんは、「語り部」として震災の体験を伝える活動をしています。

写真店を経営しながら震災の語り部を務める昆尚人さん
写真店を経営しながら震災の語り部を務める昆尚人さん

震災では、昆さんの家族は無事でしたが、店と自宅を津波で流されました。
あの日、店の近くで大きな揺れに遭遇した昆さんは、家族を連れて高台にある小学校に避難します。

その途中、大事な物を店に置き忘れたことに気づきます。それは長年愛用してきたカメラです。

「あ、商売道具のカメラを忘れてきたって思い出しちゃったんですよ。これはとりあえず戻らなきゃいけないなと」

流されて泥まみれになった昆さんのカメラ
流されて泥まみれになった昆さんのカメラ

高台にある小学校から店に戻ろうとしたその時でした。
「キャーという悲鳴が聞こえて、まちを見たんです。そしたら30秒もしないうちに砂煙とともに消えていくんです。津波で。私も実は“助かった命”なんです」

2011年3月11日 山田町を襲った津波(映像提供:善慶寺・三浦住職)
2011年3月11日 山田町を襲った津波(映像提供:善慶寺・三浦住職)

昆さんの体験談を聞いた高校生のメンバーたち。震災当時は幼かったため、ほとんどの人が実際に津波を見ていません。しかし、改めてその恐ろしさと命の大切さをかみしめました。

話を聞く高校生たち
話を聞く高校生たち

高校生メンバーの川村優衣さんが質問します。
「どうして語り部として活動していこうって思ったんですか?」

昆さん
「誰もやってくれないんだったら自分たちでやろうよっていうところから始まっているんです。
みなさんも、今日私から聞いた話を元に小学生相手に授業するという部分では、ある意味一人の語り部になるわけですから。震災後に生まれた子どもたちに、そのすごさをお話ししてほしい」


コロナ禍でも進めた準備

高校生たちは、昆さんから受け取ったバトンを小学生にどう伝えるか、意見を交わしました。

どう伝えるかを議論
どう伝えるかを議論

山田高校2年 木村拓夢(ひろむ)さん
「自分の命は自分で守るということを伝えたいです」

木村さん


山田高校1年 佐藤翼さん
「これからどうやって海と生きていけるかということを知ってもらいたいなと思います」

佐藤さん


防災教室が終わった後でも小学生が震災について学べるように、絵本を作ろうというアイデアも出ました。

「まずは地震が起きて、そのあとに津波がくるっていう一連の流れは恐ろしい部分として紹介するんですけど、復興したからこそ今があるという現状の良さも伝えていけたらなと思っています」(木村さん)

絵本づくりの準備をする高校生たち
絵本づくりの準備をする高校生たち

メンバーは本番に向けて教材作りに取りました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大のため、防災教室の開催は4月以降に延期になりました。
現在はオンラインでワークショップに参加するなど、懸命に準備を進めています。

山田高校2年 木村拓夢さん
「延期になるって聞いたときは、残念な気持ちもありましたが、延期になったことで、もっと小学生にわかりやすく伝えるためにはどうすればいいのかなど、チームで話しあうことができたので良かったと思います」

山田高校2年 川崎純愛(じゅんあ)さん
「コロナ禍もあって、臨機応変に行動して小学生にわかりやすく楽しい授業をできるように頑張りたいと思います」

川崎さん


最後にメンバーの佐藤翼さんが、防災教室に参加予定の小学生にメッセージを送りました。
「めっちゃ楽しい授業にして、皆さんと楽しく震災のことこれからのことを学んでいきましょう!ぜひ待っていてください」