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災害時に頼れるヤツ…それは、重機!

「72時間の壁」。これは被災者の捜索・救助活動をする人々が常に意識している言葉です。災害発生から3日が経過すると、がれきなどに閉じ込められた人々の生存率が著しく低下、救出は一刻を争います。その強い味方として今、注目されているのがショベルカーなどの小型重機。人力ではなし得ないパワーでがれきの山となった道を開き、大量の土砂をかき出すことができます。重機の扱い方をどう防災に役立たせるか、一緒に考えていきましょう。

この記事は、明日をまもるナビ「災害時に頼れるヤツを楽しく学ぶ!」(2021年11月28日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、「重機ボランティア」の役立て方
▼ボランティアによる重機作業は捜索の他、主に被災者の財産の保護作業を行う
▼災害現場といった特殊な環境での重機操作は、技術と経験のある人がまだまだ少ない
▼重機を扱う災害ボランティアのネットワークがスキルアップの活動を行っている


重機を扱う災害ボランティアとは?

地震や土砂災害での捜索や復旧作業の現場でよく目にするのが、小型ショベルなどの重機を使った作業です。
消防や自衛隊、自治体が扱う重機作業は、人命捜索と道路などの公共インフラの復旧が中心です。
一方、ボランティアによる重機作業、いわゆる「重機ボランティア」は、被災自治体のボランティアセンターなどに寄せられた被災者からの依頼や要望を受けて、主に、被災者の捜索の他に、住民の財産の保護作業を行っています。

土砂災害の現場で活躍する小型ショベル
土砂災害の現場で活躍する小型ショベル

その一人、技術系災害ボランティアネットワーク DRTJapanの山本俊太(やまもと・しゅんた)さんは、建設会社を営みながら、災害時は「重機ボランティア」として各地で災害救援活動、重機操作の講師をしています。

重機ボランティアの山本俊太さん
重機ボランティアの山本俊太さん

山本さんのように、重機専門のボランティアとして活動している人たちは全国でおよそ100人。災害現場での重機操作は、技術と経験のある人がまだまだ少ないことが課題となっています。

小型重機による救援活動は、まず倒壊家屋からの捜索や、がれきの撤去から始まります。
人命の捜索だけでなく、現金や通帳、証明書の発行に必要な印鑑など、被災者の生活再建に必要な財産の捜索も行います。

家屋倒壊を防ぎながら財産の捜索を行う
家屋倒壊を防ぎながら財産の捜索を行う

●小型重機を動かす資格は?

小型重機の資格 満18歳から 7時間の学科 6時間の実技

機体重量3トン未満の小型重機を運転するためには「小型車両系建設機械の運転の業務に係る特別教育」を修了することが法律で義務付けられています。
満18歳から受講でき、期間は2日間、7時間の学科と試験、6時間の実技講習で資格を取得できます。主に重機製造メーカーなどが運営する全国の教習所で受講できます。年間およそ7000人以上が資格を取得しています。

Q. 資格を持っている人が重機ボランティアとして参加するにはどうしたらいい?

「まずは災害地に設置されているボランティアセンターへ問い合わせてください。あとは、私たちのような重機ボランティアネットワークにアクセスするのも方法の一つです。ボランティアのネットワークはSNSを通じてつながることが多いです」(山本さん)

Q.資格を持っていれば誰でも参加できる?

「資格を持っていれば基本的には参加できますが、今問題となっているのはボランティアを受け入れる側の態勢が整っていないことです。参加希望者の技術レベルや経験に応じて、どの現場でどんな作業をしてもらうかなどを判断できる人、安全を管理できる人が不足しています」(山本さん)

山本さんたちDRTJapanでは、災害に特化した講習会で勉強した資格取得者の技術・経験レベルをチェックして、1から10の等級に分けて情報を共有し、それぞれの災害現場に派遣しています。

災害に特化した講習会で技術を学ぶ
災害に特化した講習会で技術を学ぶ

これからの重機ボランティアのキーワードは「地域力×重機力」だと山本さんはいいます。
「地元の方々と地域の特徴に合わせた訓練や講習を実施して、またそこで災害が発生したときにすぐに災害復旧に展開していくことができることになれば、もっと災害に強い街づくりができるんじゃないかなと考えています」(山本さん)


災害用の重機で遊べる施設が誕生!そのわけは?

●重機で地元を守りたい 台風19号の教訓

nuovo(ノーボ) 災害復興を学べるアミューズメントパーク

2020年10月に開設された、災害用の車や重機で遊べるテーマパーク「nuovo(ノーボ)」。
長野県小布施町にあるこの施設では、防災にまつわるさまざまな設備を備え、楽しみながら災害復興のノウハウを学ぶことができます。

この施設が作られたのには、あるきっかけがありました。
2019年、小布施町の西を流れる千曲川が台風19号による記録的豪雨で決壊。広い地域が水に覆われました。
代表の林 映寿さんは、「誰も自分たちのこの地域が台風によって被災するという想定をしていなかった」といいます。

nuovo 日本笑顔プロジェクト代表の林映寿さん
nuovo 日本笑顔プロジェクト代表の林映寿さん

被害が特に大きかったのは、小布施の名産である栗やリンゴの農園。泥が深く積もっていたため、早く撤去しなければ木々を枯らす恐れがありました。
林さんたちボランティアは、スコップなどで復旧作業にあたりましたが、時間がかかり疲弊感が増すばかりでした。
「泥の量が非常に多くて、やってもやってもなかなかゴールが見えてこない」(林さん)

このとき、小布施町が土砂に覆われた面積はおよそ143ヘクタール、東京ドーム30個分の広さでした。

リンゴ農園に深く積もった泥
リンゴ農園に深く積もった泥

林さんは小型重機集めに奔走します。しかし、重機は集められたものの、それを十分に使いこなせるオペレーターはほとんどいませんでした。

重機を操縦できる人がいない

この経験から自分たちで重機オペレーターを育てようというアイデアが生まれました。
「民間の僕たちのレベルでも重機を扱える。災害時にすぐに機動力をもって災害復旧をする人たちを増やしていかなければ、地域を守っていくことはできないんじゃないか?」(林さん)

●楽しみながら重機を体験できる!

この施設の一番の特徴は、一般の人が気軽に重機を体験し、さらに資格の取得もできることです。
施設に用意されている四輪バギー。どんな悪路でも走ることができ、災害時には交通が不便な場所に物資を運び、人命救助にも活躍します。2021年1月、北陸自動車道が大雪で交通障害を起こしたときは、林さんたちはこのバギーで立ち往生した車に物資を届けました。
施設内では、アップダウンやぬかるみが設けられたコースで運転することができます。

四輪バギーの試乗
四輪バギーの試乗

ショベルカーは、大人だけでなく子どもたちも体験できます。左右のレバーの操作を教われば、アームを動かすことができるようになります。
(※資格を持たない人が操縦できるのは、指導クルーが安全管理を行っている場所のみ)

災害時に活躍する重機を楽しく体験

災害時に活躍する重機を楽しく体験

「笑顔の中で、これから時代を生き抜いていく知恵をみなさんそれぞれ見つけていただく、そんな場所になったらいいなと思います」(林さん)

●さまざまな人々が重機オペレーターに

この施設で講習を受け、重機資格をとった人は630人以上(2021年11月現在)。技術力に応じて他の被災地にもボランティアに行き、復興の手伝いをしています。

2020年10月nuovo開設
2020年10月nuovo開設

現在、指導員を務める山本真衣子さんもそのひとり。4人の子どものお母さんです。
「こういう土砂をかき出すような作業は重機が使えると、力の弱い女の人には本当に楽だなと感じました」(山本さん)

被災地に行き重機で土砂を取り除く山本真衣子さん
被災地に行き重機で土砂を取り除く山本真衣子さん

重機をトレーニングする場として生まれたこの施設は、ボランティアのベース基地となっているのも大きな特徴です。

敷地の中には畑があり、災害時に提供できる備蓄用の野菜を育てています。
また、支援物資の保管や避難場所として使える、空気で膨らむテントも備えています。施設にあるものをそのまま持っていけば、すぐに災害支援が可能な状態なのです。

備蓄用野菜を育てる農場
備蓄用野菜を育てる農場
空気で膨らむテント
空気で膨らむテント

地元の人たちが自分たちの土地をどう守るか、という思いからスタートした、この施設。継続的な災害復旧活動の拠点として、さらに近隣地域の復興支援も行うことができる「地域防災の新しいモデル」としても考えられています。


“重機ボランティア”に伝えたい技術と思い

この施設では、重機を扱う災害ボランティアがさまざまな現場に対応できるよう、スキルアップするための活動も行っています。

2021年11月10日。nuovoに人が集まっていました。
災害発生に備え、全国25か所に新たに重機が今年度、設置されることになりました。その重機の正しい使い方を、全国各地の自治体職員に教えることが目的です。
ここに来たのはすでに重機の資格を持っている人たち。彼らに何を教えるのでしょうか。

集まった受講者たち
集まった受講者たち

技術指導にやってきた山本さんはこう話します。
「資格は、あくまでも“作業してもいい”というライセンス。技術はまだまだなところがあります。私はいつも土木建設の現場で働いていますが、それとは別に災害の現場に特有な技術もあります。注意点やわれわれが蓄積してきたノウハウというのを大事に指導しています」

災害現場に必要な操作技術とは?それをどのように身につけるのでしょうか。
たとえば、ショベルに入った空き缶を落とさずに、アームを動かす練習。自分の手のように自在にアームをコントロールする感覚を養います。
また、穴を掘る作業以上に、物を持ち上げてどける技術が必要になるので、丸太を持ち上げる練習もしています。

中でも時間を割いていたのは、アームを使って機体前方を持ち上げて移動する練習です。災害現場では、たくさんの障害物や段差があります。それらを、アームを使って乗り越えていく技術を教えているのです。

障害物をアームを使いながら乗り越える練習
障害物をアームを使いながら乗り越える練習

実は被災地に重機が入ったとき、効率を重視するために階段や家屋などを破壊してしまうことも多いそうです。
日本財団災害対策事業部の黒澤司さんは、技術指導の意義を次のように話します。
「復興期までわれわれNPOは(被災地に)いるので、住民たちと会うわけです。そこにおばあちゃんが1人で住んでいたとか、家族が住んでいた方と顔を合わせることがあるんです。だから、なるべく現状維持のままでやりたい。こちらの技術を持って越えられるのであれば、その状態で壊さずにやりたい。そういう技術を身につけてほしい」

災害に備え操作技術をアップ

被災者の大切にしているものを残して、かつ迅速な復旧を目指す。受講者たちは練習で、重機の技術を磨き続けています。