この記事は、明日をまもるナビ「災害時 車をどう使うべきか」(2021年11月21日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
これだけは知っておきたい、車中泊避難で気をつけること
▼車中泊避難で心配なエコノミークラス症候群は、頭と足を水平に伸ばせる段ボールベッドで防ぐ
▼真夏の車中泊避難は熱中症対策が肝心。フロントガラスを外側から覆って車中温度を上げない
▼家にあるキャンプ用品を車に積み込むといざというときの防災グッズになる
車中泊避難のリスク エコノミークラス症候群
車中泊をするとき、深刻な問題になるのが「エコノミークラス症候群」です。
長い時間、同じ姿勢で足などを低い位置に曲げた状態で寝ていると、ふくらはぎなどの血行が悪くなり、血栓ができます。その血の塊が肺の血管に移動して詰まると、激しい胸の痛みに襲われ、最悪、死に至ることもあるのです。
2016年の熊本地震の時、地震が起きた4月14日から6月13日までの2か月間で、熊本県内でエコノミークラス症候群により入院を必要とした人は、51人。そのうち42人が車中泊避難者でした。
症状の出たタイミングは一緒で、車から降りた瞬間に胸が苦しくなったということです。
基本的な対策は次の3つになります。
- こまめに水分を補給する
- 車外で適度な運動をする
- 頭と脚を水平に伸ばして寝る

これは便利!車内に「段ボールベッド」を作る
カーキャンプ歴40年以上という日本RV協会の高森裕士さんは、段ボールを使ってエコノミークラス症候群を解消する方法を被災地で教えています。
「支援物資の入っていた段ボールであれば、容易に調達できるのではないかなと考えました」(高森さん)

ポイントはシートの座面の傾斜を解消することです。
足を伸ばして寝られるので、エコノミークラス症候群の予防になります。
夏場は「熱中症対策」が必要!
車中泊避難は季節によっても注意が必要です。
夏の気温の高い中での車中泊避難では、熱中症対策が大切です。熱対策のために、ガラスを覆うことが必要になってきます。
●段ボール「日よけシェード」の作り方
ここでも段ボールを使います。
フロントガラスを覆う市販の日よけシートもありますが、今回は段ボールで作り、フロントガラスを「外側から」覆います。外側に置くことでガラスが太陽光で熱くならないので、熱対策の効果が高くなります。
《フロントガラス》
《左右の窓》
こうすることで、太陽の光が中に入りにくくなりますし、プライバシー保護の目隠しとしての効果もあります。夜寝るとき、外の明かりが気になることもありません。
昼間は、できれば日陰に駐車するなどの対策も心がけましょう。
冬場は「低体温症」と「一酸化炭素中毒」に注意!
冬の車中泊で気をつけるべきことは、低体温症と一酸化炭素中毒です。
真冬の車中泊避難は、とにかく事前準備が必要です。
「私の場合、携帯カイロやエマージェンシーシート、あとは毛布などを事前に用意しておきます」(高森さん)

●エマージェンシーシート
アルミニウムが蒸着したポリエステルフイルムを使用した、小さく折りたためるシートです。身体に巻いて、熱を外に逃がさない保温機能があります。

●携帯スコップ
排気ガスマフラーのところに雪が積もって、車の下の空間に排気ガスがたまると、車の中にガスが入ってしまい、一酸化炭素中毒を起こす危険性があります。どうしてもエンジンをかけなくてはいけない状況では、携帯スコップでこまめに雪かきをします。

ふだんからキャンプをする人は、家にあるキャンプ用品を車に積み込んでおくと、いざというときの防災グッズになります。
【参考】高森さんの車中泊避難用グッズ
作業用手袋・携帯コンロ・携帯トイレ・飲料水・ゴミ袋・LEDランタン・工具類

また、最近普及してきた「ポータブル電源」を用意しておくと、エンジンをかけずに車の中で電気毛布などの電化製品を使えます。自宅での停電にも対応できます。

「まずは自宅のガレージなどで、いざという時の想定をして、車中泊をしてみてはいかがでしょうか」(高森さん)
【参考】
明日をまもるナビ
必須!防災グッズをチェック(1)家庭の災害備蓄品リスト 10の必需品
必須!防災グッズをチェック(3)災害時の車中泊を快適に過ごすためのグッズ3つ
▼前編はこちら
車でどう避難する?災害時の車の使い方(1)