この記事は、明日をまもるナビ「外出先で地震! その時あなたは?」(2021年11月14日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
これだけは知っておきたい、外出先で地震に遭ったときの行動
▼どう行動すればよいのか、頭の中でシミュレーションしてみるのが防災の第一歩
▼屋外や店の中では、頭上からの落下物に気をつけて、頭や足を守る
▼地下鉄や地下街で地震に遭ったら、あわてて外に出ずに状況が落ち着いてから避難する
日頃からのイメージトレーニングが大事
今後来るであろう首都直下地震。都心南部を震源とするマグニチュード7.3の地震が、冬の夕方に起こった場合、亡くなる方が最大でおよそ2万3,000人、全壊・焼失家屋は最大でおよそ61万棟に上ると考えられています。このうち40万棟が火災で燃え、20万棟は揺れで全壊するという被害想定です。

先月10月7日に発生した地震は、その震源から直下型と考えられています。10年前の東日本大震災と同じ「長周期地震動」というゆっくりした揺れの地震です。夜遅い時間帯でしたが、多くの人が外出していて、地震に遭遇しました。SNSでも駅の照明がホームに落下したり、建物の外壁が崩れたりした様子が、多くの人から投稿されました。
いつ起こるかわからない大地震。そのとき、わたしたちは必ずしも自宅にいるとは限りません。それぞれの場所で地震への対応が異なってきます。

身を守るにはどう行動すればよいのか。「頭の中でシミュレーションしてみる」のが防災の第一歩です。
東京都立大学名誉教授の中林一樹さんは、
「揺れを一瞬感じたとき、緊急地震速報が入ったとき、数秒の間に身の安全を守る。そのためには日頃からイメージトレーニングしておくことが大事です」と防災の心構えを説明しています。

《商店街》落下物に注意!少しでも安全なところへ
町中で大地震に遭遇すると、身の回りのさまざまなものが凶器に変わります。そんなとき、いったいどう行動すればよいのでしょうか。

【外を歩いているとき】落下物から身を守るために建物から離れる
都会の商店街には、看板や電柱など、落ちてきたら危険なものがたくさん。特に注意すべきなのが“ガラス”です。

① 原則は建物から離れること
ガラスはかたまって落ちてくるので、極力、ガラスのそばには寄らないようにしましょう。
②強い揺れが来たら、持っているバッグなどで落下物から頭を守る
直接頭につけると、衝撃が首に伝わる恐れがあるので頭上に掲げましょう。

③自動販売機やブロック塀にも注意
特に背の高いブロック塀は非常に危険です。少しでも離れて広いスペースに移動しましょう。

【店の中】閉じ込められないところに避難し、姿勢を低く
スーパーマーケットなど店の中で地震に遭ったら、どう行動すればいいでしょうか?
①閉じ込められない所にいったん避難する
棚と棚の間は、高いところに置いてある割れ物が両側から倒れてくる可能性があります。
②少しでも安全な場所に移動する
かごなどで頭を守りながら、店の隅の非常口や出口の近くなど、棚のないところへ急ぎましょう。
③姿勢を低くして、揺れが収まるのを待つ
身体を守るポイントは「①頭と頭の下 ②首も含めた背骨 ③足」の3つ。避難のために足を守ることが大切です。
商店街や狭い住宅地で火災に遭ったときには、大きな公園や団地など、一時的に逃げ込む先として自治体が指定している「避難場所」へ逃げましょう。
《運転中》危険が迫ったら車は置いて避難する!
10年前の東日本大震災では、都心の道路はパニック状態に。もし、首都直下型地震で同じことになれば、緊急車両が通れなくなり、本来助かる命も助けられなくなります。

大都市で車を運転中に大地震が起きたとき、あなたがすべき行動、それは「車を置いて避難」することです。

- 地震だなと思ったらハザードランプを点灯し減速
- 道路の左側に停車し車内で待機
- どういう状況か、カーラジオなどで情報を集めて、落ち着いて行動する
- 火災や津波など、命にかかわる危険な状況になったときには車を置いて避難する
- 避難するときはキーをつけたまま、ドアをロックしないでおく
その際には、自分の車と証明するため、車検証を持ち出すとよい
車を置いて避難するかは、災害情報と周囲の状況から判断します。
そのとき、1車線しかないなど狭い道の場合は、避難や消火、救急活動の妨げにならないように、できるかぎり広い道まで出てから車を止めましょう。
東京や大阪、名古屋など大都市で震度6弱以上の大地震が発生した場合は、緊急車両の円滑な運行を確保するために、交通規制が行われることもあります。
東京では、原則として環状7号線から都心方向への通行が禁止されます。どの道路で規制しているか、どこが緊急用になって一般車両が入れないのか、地震が起きたら情報確認が必要になります。

《地下》まずは周りの様子を見てから落ち着いて行動

【地下街】まず状況を見極めて「お・か・し」を守って避難
地下街で大地震に遭ったら、不安になり、すぐに地上へ逃れたくなるかもしれません。しかし、地震による揺れは、地上より地下のほうが少ないのです。地上は人も多く、火災が発生していることも考えられます。
- 慌てて地上に出ようとせず、太い柱のそばなどに身を寄せ、様子を見る
- 状況を見極めて、指示を待つ
- 地上へ出ても大丈夫なことを確認してから、開いている非常口から避難する
キーワードは「お・か・し」です。
お:「押さない」
地下から地上へ階段を上がるときに、押して誰かが倒れると将棋倒しになったり、群集雪崩が起きる危険性があります。
か:「駆けない」
駆けると前の人にぶつかる可能性が高まります。決して走らず、ゆっくりみんなと一緒の歩調で歩きましょう。
し:「しゃべらない」
叫んだりわめいたりせずに、みんなで落ち着いて行動することも大切です。
【地下鉄】そのまま電車内で様子を見ること 乗務員の指示に従って
地下鉄乗車中に地震に遭ったら「そのまま電車内で様子を見る」こと。乗務員の指示に従って落ち着いて避難してください。
①電車が駅の間で止まったら
地震で緊急停車したとき、電車から降りること自体が危険な場合があります。指示を待ちましょう。
②電車がホームで止まったら
ドアが開いていた場合も、駅のホームは落下物などで危険なため、揺れが収まるまでは電車内にとどまるほうが安全です。
《エレベーター》閉じ込められたら外部に助けを求める
首都直下地震が起こると、最悪の場合でエレベーターに1万7000人が閉じ込められる可能性があるといいます。エレベーターを使用中に地震が来た場合、どうすればいいのでしょうか?
①地震を感じたら直ちにすべての階のボタンを押す
②止まった階で外に出て階段を使って避難する
「押すことによって、安全に止まれる階に止まります。扉が開いたらエレベーターから出てください」(メーカー担当者)
③閉じ込められても無理やりドアや天井を開けたりしない
「エレベーターの天井は中からはほとんど開きません。無理やりドアを開けるのも、非常に危険なので、絶対にやらないでください」(メーカー担当者)
④外部と連絡をとり、助けを求める
インターホンを押せば、建物の管理室やコールセンターにつながります。インターホンはつながるまで長押ししてください。
でも電話線などが切れ、インターホンもつながらなくなった場合は、どのように助けを求めればいいのでしょうか?
「外部に知らせるにはいろいろな方法がありますが、声を出し続けるのはたいへん体力を消耗します。役にたつのは“笛”です」(防災システム研究所 山村武彦さん)
人の声よりも笛のほうが遠くまで音が届く実験データがあります。小さな笛を普段からキーホルダーなどに取り付けて持ち歩いていると安心です。

大地震が起きると、エレベーターに限らず、救助を待つしかない状況に遭遇するかもしれません。笛以外にも防災グッズを持ち歩くことも大切です。
(例:ウェットティッシュ・あめ・笛・マスク・口くうケア用品・携帯用バッテリー・アルミブランケット・ばんそうこう)

2009年9月以降に設置されたエレベーターには地震時管制運転装置がついています。地震の初期微動を感知すると最寄り階で自動停止し、その後の揺れが小さい場合は自動的に運行再開します。安全点検が必要な場合にも近くの階まで行って自動的にドアを開けて止まるため、閉じ込めが起きません。
●エマージェンシーキット
救助まで長時間待たなければならない場合に備えて、エレベーターの中に「エマージェンシーキット」を設置する建物が増えています。キットには、簡易トイレとして使えるように便座や吸収シート、トイレットペーパーや消臭スプレーなどの他、飲み物や食料、助けを呼ぶためのホイッスル(笛)なども入っています。


価格は1台あたり8万円程度から。行政による設置義務はありませんが、東日本大震災以降、メーカーへの問い合わせが多くなり、マンションの管理組合などで設置するケースが増えてきているそうです。
「エレベーターで閉じ込められたときには、なるべく無駄なエネルギーを使わないこと。絶対助かると考えて、落ち着いて待つ。複数いたら、みんなで一緒に脱出するために、ネガティブにならないように助け合う。それが大事だと思います」(中林さん)
《学校や会社》地震に遭っても「あわてて帰らない」
もし学校や会社で地震に遭った場合のポイントは「あわてて帰らない」ということです。

特に一斉帰宅はやめるようにしましょう。人が歩いて車道を占拠してしまうと救急活動ができなくなったり、救急車両が渋滞で進めなくなったりします。
帰宅困難者のために、3日分の食料や水、あるいは寝具などを会社や学校でも用意するよう、自治体が呼びかけています。
【参考】明日をまもるナビ
“帰らない”という新常識 帰宅困難、そのときあなたは?(2021年7月7日公開)
●防災アプリを入れておく
出張先などで自治体による帰宅困難者の支援施設を探すなど、いざというときの情報収集に役立つスマートフォンのアプリがあります。そのひとつがNHKの「ニュース・防災アプリ」です。
自宅や通勤通学先、親戚宅など、関係する場所を登録しておくと、気象情報や災害の状況などの情報がすぐに調べられます。ぜひご利用ください。
【NHK ニュース・防災アプリ】詳しい内容・ダウンロード方法はこちらから