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自宅が浸水 生活再建のためにやるべきこと(手続き編)

もし浸水被害に遭ったら何をどうするのか、あなたはご存じですか?毎年のように起こる記録的な豪雨災害。気象庁は、今後その頻度が増加すると発表しています。もはや他人事ではありません。なんとか命を守ったとしても、浸水した住宅をどうしたらいいのか。どんな手順で復旧作業をすればいいのか、知っておくべきポイントを学んでいきます。

この記事は、明日をまもるナビ「自宅が浸水 その時どうする?」(2021年10月24日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、浸水被害にあったときにやること
▼片づけを始める前に、まず写真で記録を取っておく
▼り災証明書が発行されると、被害認定に応じて、公的支援が受けられる
▼片づけ作業はまず計画をしっかり立てる。ひとりで頑張りすぎず専門業者やボランティアの力を借りる


被災したらまず「写真を撮る」

水害で被災したあとの片づけは大変です。でもその前に最初にやっておくべきことがあります。
それは「写真を撮っておく」こと。生活再建の支援を受けるための重要な証拠になります。

多くの被災地で支援活動を行っているピースボート災害支援センター事務局長の上島安裕(うえしま・やすひろ)さんに、写真撮影のポイントを聞きました。

ピースボート災害支援センター事務局長上島安裕さん
ピースボート災害支援センター事務局長上島安裕さん

①4方向から家の外観を撮る
浸水の高さが分かるように、人が立って指をさしたり、メジャーで測って記録。

家の4方向から撮影
家の4方向から撮影
浸水の高さを示して撮影
浸水の高さを示して撮影

②漂流物が当たって穴が空いているような所も記録
部屋の中は、浸水の高さが分かるように、アップだけでなく少し引いたアングルでも撮りましょう。

アップだけでは浸水の高さが分かりにくい
アップだけでは浸水の高さが分かりにくい

家財や家電類も保険などでカバーされるケースがありますので、全て記録に残すようにしてください。
こうした写真は「り災証明書」や「保険金を請求する時」に活用されます。


「り災証明書」と判定基準

●り災証明書とは?
「り災証明書」は政府や地方自治体などから支援を受ける際の基準になるものです。
これがないと保険料や税金の減免、住宅の修理・再建のための支援が受けられないので、必ず申請してください。
り災証明は各市町村で発行され、申請後に自治体職員などによる現場調査が行われ、それを受けて交付されます。

今年の佐賀県の災害で発行された「り災証明書」

り災証明書の中で重要なポイントは、全壊や半壊といった「損壊の程度」です。
下の図は河川の氾濫などで浸水した際の基準です。
2階建てまでの木造の一軒家で「水流や漂流物などによって一定程度の損傷がある場合」になります。

河川の氾濫などで浸水した場合の基準=内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」の目安
河川の氾濫などで浸水した場合の基準=内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」の目安

床上浸水した箇所の最も浅い部分が、床上180cm以上で「全壊」となります。
床上100cm以上を「大規模半壊」。50cm以上100cm未満は「中規模半壊」。床上50cm未満は「半壊」。そして準半壊に至らない「床下浸水」と定められています。
※内閣府「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」の目安 より

これらの認定は厳しく行われますが、一度出た判定に納得がいかない場合は、自治体の職員に伝えて再審査してもらうことができます。
この表の数値はあくまでも一つの基準で、これ以外にも全壊・半壊を判定する要素がいくつもありますので、まずはその現状を記録しておくことが大切です。


被災時に受けられる公的支援制度

●気になる支援金の額は?
浸水被害にあった場合、被害認定に応じて、次のような支援を受けられる可能性があります。

被害者生活再建支援法による支援金 内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」より
被害者生活再建支援法による支援金 内閣府「被災者生活再建支援制度の概要」より

●被災者生活再建支援制度による支援金(内閣府)
全壊と認定された場合=最大300万円。
大規模半壊=最大250万円。
中規模半壊=最大100万円。
床上50cm未満の半壊、床下浸水の場合=対象外です。

他にも半壊の場合には、
〇住居の居室などの応急修理のための費用
〇仮設住宅等支援
〇税の減免
〇住宅融資の優遇
など、さまざまな支援制度があります。詳しいことは、各市町村の相談窓口で確認してください。

こういった支援制度は複雑で理解が難しいものですが、被災された方々自身がしっかりと情報を知り、把握することが大事です。


火災保険の見直しと悪質商法

●火災保険は契約内容をチェック!
上島さんは多くの被災者の相談を受けてきた立場から、火災保険(損害保険)の大切さを痛感していると言います。
「補償金額がかなり変わってきますし、それによりそのあとの生活の再建のスピードも変わってきます。少し古い契約では補償されないケースもあるので、一度、契約内容を見直してみることをお勧めします」(上島さん)

●災害に便乗した悪質商法に注意!
災害の現場には、悪質な業者が現れることがあるので注意が必要です。

災害に便乗した悪質商法に注意

「こういった悪質な業者はなかなか見分けるのが難しいのが現状ですが、押しが強かったり、焦らせたり、『今じゃなきゃ』といったケースも見受けられます」(上島さん)

被害を防ぐには、地元のなじみの工務店とつながっておくほか、都道府県の建築業協会などが公表している「地域の安心できる工務店リスト」を確認しましょう。
不審な人がいたり、不審な電話がかかってきたりしたら、焦らずに自治体の窓口に確認し、警察に連絡してください。

行政への支援金の申請ローンや保険料の支払い、建物の賃貸契約のトラブルなど、被災後のさまざまな法的手続きで困った時には、「法テラス」にご相談ください。

法テラス サポートダイヤル
0570-078374

後編へ続く»「自宅が浸水 復旧作業のポイントは?(作業編)」