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火山灰の脅威に備える 徹底検証 富士山噴火(3)

ひとたび起きれば、あっという間に人々の生活を変えてしまう火山の噴火。富士山も、いま大規模噴火が警戒されている火山のひとつです。最後に噴火したのは300年前。溶岩流による災害とともに、もう一つ警戒しなくてはいけないのが「火山灰」。もし首都圏に大量に降り注いだらどうなるのか。最新のシミュレーションからどのような被害が想定されるのかをお伝えします。

この記事は、明日をまもるナビ「富士山噴火 そのときあなたは」(2021年10月17日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、富士山の火山灰の脅威
▼火山灰で首都圏の機能が壊滅状態になる可能性も
▼300年前の宝永噴火と同規模のシミュレーションが火山灰の到達範囲を予測
▼火山灰は溶岩が細かい破片となった石の粉。濡れると電気を通し、乾くと硬くなる。


火山灰をもたらす噴火とは?

今年2021年3月に富士山が噴火した際のハザードマップが改定されて、溶岩流がより早く、より広範囲に被害をもたらすことが分かりました。

【参考】
富士山噴火はいつ起こる?噴火想定を徹底検証
想定される影響は?徹底検証 富士山噴火(2)

その溶岩流よりも遙かに大きな災害をもたらすのが「火山灰」です。首都圏の機能が壊滅状態になる可能性も十分に考えられます。

「溶岩流」の噴火と、「火山灰」の噴火とは全く別のものです。
火山の地下にあるマグマの中には水が含まれています。マグマが浅いところに動いて圧力が下がると、中に溶け込んでいた水が気泡になって抜けていればマグマは「溶岩流」になります。
ところが、この気泡が抜けずに地表付近まで来てしまうと、たまっていた高い圧力により爆発的噴火になり、粉々になったマグマが噴出し、拡散するのが「火山灰」です。
火山灰はより広範囲にまで被害が及びます。

気泡が抜けずに地表付近で爆発的噴火を引き起こす
気泡が抜けずに地表付近で爆発的噴火を引き起こす

300年前の宝永噴火〜そのとき何が起きたのか?

富士山が最後に噴火したのは300年前の江戸時代。爆発的噴火で火山灰が降りました。その量は、記録に残っている富士山噴火の中では一番多く、推定約17億トン。桜島の200年分が2週間で降った計算です。

富士山の中腹にある宝永火口。直径およそ1キロメートルで、山頂の火口よりも大きい富士山最大の火口です。

宝永火口
宝永火口

噴火が始まったのは、1707(宝永4)年12月16日(旧暦11月23日)の朝10時ごろ。大量の噴出物がふもとの村に降り積もり、甚大な被害をもたらしました。

宝永噴火のイメージ図
宝永噴火のイメージ図

宝永噴火の火口から10キロほど離れた須走(すばしり)地区。これまで古文書には、「村にあった37棟の家が焼失し、残る39棟も全て火山灰の重みで倒壊した」と記されていましたが、確かな証拠はありませんでした。一昨年の2019年に地面から深さ2メートルのところで黒く焼け焦げた「木の柱」が発掘され、初めて村の存在が確認されました。

深さ2メートルから発掘された焼け焦げた木の柱
深さ2メートルから発掘された焼け焦げた木の柱

【参考】 発見!富士山噴火で消えた村 300年の時を超えた教訓

火山灰は、農業にも深刻な影響を与えました。ふもとに近い地域では、農地は荒れ果て、収穫はできなくなりました。食糧事情は日に日に悪化し、多くの人たちが飢えに苦しみました。

宝永噴火による火山灰の分布図
宝永噴火による火山灰の分布図

火山灰は江戸にも降り注ぎました。その様子を記録した文書や、実際に降った火山灰が和紙に包まれて残っています。そこには「宝永4年、霜月(しもつき)23日。むまの中刻(ちゅうこく)」、今の暦で12月16日正午過ぎ、つまり噴火発生からわずか2時間後に火山灰が江戸に到達したことが記されています。

和紙に包まれて残っていた300年前の火山灰
和紙に包まれて残っていた300年前の火山灰

富士山噴火の火山灰シミュレーション

もし宝永噴火と同規模の大噴火が起こったら、一体どうなるのか?
2019年、山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣(ふじい・としつぐ)さんを中心とした国の検討会は、シミュレーションの結果を公表しました。それによると、火山灰は富士山に近い町では1メートル以上積もり、さらに東京都心にも到達するとのことです。
「対策を考えるためには、噴火が始まってから、何時間後に何をしたらいいのか考えなければいけない。時間の経過とともに火山灰がどこに、どのぐらいの量がたまるのか、調べる必要があった」(藤井さん)

山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さん
山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さん

シミュレーションでは、富士山から出る火山灰がどのように広がっていくのでしょうか。

●噴火から3時間後
火山灰が東の方向に広がって、東京にも3時間で到達します。日本の上空1万メートルでは常に西風(ジェット気流)が吹いています。それにより、ほとんどの季節で火山灰は西から東に流れる可能性が高くなっています。

3時間後の火山灰到達範囲
3時間後の火山灰到達範囲

●2日目
オレンジ色の領域には火山灰だけでなく、より大きな「火山れき」も降り、30センチメートル以上積もります。須走地区や山中湖村などもこの範囲です。

2日後の火山灰到達範囲
2日後の火山灰到達範囲

火山灰が30センチメートル積もると怖いのは、雨が降って水を含んだ場合に、重さで木造家屋の梁が耐え切れず、倒壊する恐れがあることです。
特に危険なのが体育館です。梁が少なく、鉄骨組であっても、上に重たいものが載ることは想定されていません。火山灰が降り積もると倒壊の危険が高く、避難場所としては危ない場合があります。(強度によって違いがあります)

避難する場合は火山灰が降らないところに逃げるしかありません。風下ではなく、降灰予想エリアの北側か南側、火山灰が降り積もる量が少ない地域に逃げましょう。その方向であれば徒歩でも1〜2時間かければ、少ない場所に逃げることはできます。


やっかいな火山灰 3つの特徴

火山灰 3つの特徴
火山灰 3つの特徴

①粒子が硬くとがっている
火山灰は、溶岩が爆発で細かい破片となったもの。紙や木を焼いた灰とは違い、ガラスや岩石で出来ています。ザラザラとした石の粉です。

ザラザラとした感触の火山灰と顕微鏡写真
ザラザラとした感触の火山灰と顕微鏡写真

②水を含むと電気を通す
火山灰は二酸化硫黄などの火山ガスを含んでいます。このガスが水に溶け込むと、ごく薄い硫酸などの液体になり、電気を通すようになります。

水を含んだ火山灰が電気を通す実験
水を含んだ火山灰が電気を通す実験

③水を含むと固まる
火山灰に含まれる石こう成分は、水にぬれると溶けだして接着剤の役割を果たし、乾燥するときにモルタル状に固まります。火山の噴火で細かな火山灰が噴出されると、大抵、その後に雨が降る場合が多く、注意が必要です。

水を含むと固まる火山灰
水を含むと固まる火山灰

次の記事、富士山噴火(4)はこちら

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