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想定される影響は?徹底検証 富士山噴火(2)

日本は狭い国土に活火山が集中する火山大国です。その数はなんと111。なかでも今、警戒されている火山が、富士山です。過去に何度も噴火をした活火山で、いつ噴火してもおかしくありません。実際の火山被害とはどんなものがあるのか。また、もし富士山が噴火したらどのような影響があるのか、詳しく見ていきます。

この記事は、明日をまもるナビ「徹底検証 富士山噴火」(2021年9月12日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、111の活火山が存在する日本
▼もし「噴火」したら?火山災害ではさまざまな被害が…
▼富士山が噴火した際の火山灰は首都圏の都市機能や住民の健康に深刻なダメージ


111の活火山とさまざまな火山災害

噴火する恐れがある山は、富士山だけではありません。世界の1%にも満たない日本の国土には、全活火山の7%に当たる111もの活火山が集中しています。

日本の活火山と最近10年間に噴火が確認された火山(富士山除く・山名を表示)
日本の活火山と最近10年間に噴火が確認された火山(富士山除く・山名を表示)

ところで「噴火」とはどういう状態でしょうか。火山噴火予知連絡会の元会長で、山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さんによると、「火口から石や火山灰などの固形物かマグマのように流動している溶岩が流れ出した状態」を噴火と呼びます。富士山はこれまでありとあらゆる種類の噴火を起こしており、藤井さんは「噴火のデパート」と呼んでいるそうです。

そんな富士山は、溶岩流以外にもさまざまな火山災害の危険を秘めています。

①火砕流
1991年、長崎県の雲仙・普賢岳の噴火では、火砕流が頻発しました。火砕流が恐ろしいのは、その「スピード」。およそ700度の高熱を持ち、時速80キロ以上で斜面を流れます。この年、43人が犠牲となりました。

火砕流

②融雪型火山泥流
噴火が、雪山で起きたときには、さらなる警戒が必要です。溶岩の熱で、積もった雪が一気に溶けて、洪水のように流れ下る可能性があります。これは融雪型火山泥流といわれる現象。1928年、北海道・十勝岳で発生した際には、144人もの死者・行方不明者を出しました。

融雪型火山泥流

③空振(くうしん)
火山から離れた場所でも、安心はできません。2011年、鹿児島県の新燃岳 (しんもえだけ)の噴火では、大気の振動が数キロ先のガラスを割りました。「空振」と呼ばれる現象で、ガラス片によるけが人も出ています。

新燃岳の噴火で割れたガラス窓
新燃岳の噴火で割れたガラス窓

④火山ガス
激しい噴火がおさまった後も安心はできません。火山はガスを噴き出し続けます。その中には二酸化硫黄、硫化水素などの毒性を持つものも。2000年8月、三宅島では、この火山ガスが季節風に流され、集落まで到達。住民は4年半もの間、避難生活を余儀なくされました。

火山ガス

さまざまな被害が想定されるからこそ、噴火対策は非常に難しいのです。


恐ろしい噴石の被害

火山の噴火では噴石の被害も忘れてはなりません。

気象庁では、噴火によって火口から吹き飛ばされる大きさの岩石を「噴石」と呼んでいます。火山に関する情報では、「大きな噴石」および「小さな噴石」に区分しています。

①大きな噴石
直径20から30センチメートル以上の、風の影響をほとんど受けずに弾道を描いて飛散する噴石のことを指します。「火山弾」は噴出したマグマが空中で固まったものです。

重さ約4キロの火山弾
重さ約4キロの火山弾

②小さな噴石
直径が数センチメートル程度の、風の影響を受けて遠方まで流されて降る噴石です。「火山礫」も含まれます。中には、いわゆる「軽石」もあります。

噴石

「小さいものの大部分は、空中で冷えてしまいます。ところが、ときどき火口から10キロぐらいの距離でも10から20センチメートルの大きさの軽石が落ちてくることがあります。こういうものは中の温度が熱く、数百度以上あるので、家の屋根などに落ちると、火災が発生します」(藤井さん)

1707年(宝永4年)の富士山の「宝永噴火」では、特に火口に近い須走村(現:静岡県小山町)で、降り注ぐ熱い噴出物のために多くの家屋が焼失。焼け残った家も噴出物の重みで破壊され、厚さ3メートルを超える火山灰や軽石などに覆われ埋没してしまいました。

【参考】
NHK NEWS WEB 災害列島 命を守る情報サイト
発見!富士山噴火で消えた村 300年の時を超えた教訓

噴石の被害にあった幼稚園
噴石の被害にあった幼稚園

2000年の北海道の有珠山噴火では、火口から500から600メートルぐらいの場所にあった幼稚園の建物が噴石の被害にあいました。今は噴火災害遺構として残されています。

この時の噴火では、山腹だけではなくて、麓や住宅地に近いところまで火口が65個も出来ました。しかし、噴火の2日前には避難勧告が出され、いわゆる噴火の予知ができたため、住民も全員避難ができたので、犠牲者はいなかったのです。


火山灰が首都圏を襲う

富士山がもたらす甚大な被害は、これだけではありません。それは「火山灰」。富士山の大噴火は周辺の地域のみならず広範囲に及んで、首都圏にも甚大な被害をもたらす可能性が指摘されています。

富士山火山灰の到達予想地図
富士山火山灰の到達予想地図

火山灰は、首都圏の暮らしにどんな影響を与えるのでしょうか。

富士山の火山灰がどこまで飛ぶかを予想したハザードマップでは、首都圏には2から10センチメートルほどが降り積もるという予想が出されています。実はこれは大変な量なのです。

1985年の鹿児島県の桜島の噴火では、記録的な火山灰被害に見舞われ、町中が灰に覆われました。しかし、このときでも積もったのは1年で1センチメートルほど。富士山噴火で予想されている「2センチメートル以上積もる」というのは、これまで私たちが経験したことのない大災害となります。

東京に火山灰が降り積もったイメージ

富士山が噴火すると、大量の火山灰は、上空20キロまで噴き上げられ、風に流され広がってゆきます。屋根に大量に積もると、その重みで倒壊する家も出てきます。湿った火山灰は電気を通すため、送電線などに付着すると停電の原因となります。

火山灰が降り積もった空港のイメージ

噴火から数時間後には、東京に到達。道路は灰が積もって通行止め。空港は閉鎖。電車も止まって、首都機能は麻痺(まひ)します。実際にヨーロッパでは、2010年4月にアイスランドの火山噴火により噴出した火山灰が上空に滞留し、4日間、ヨーロッパ中の飛行機が止まった事例がありました。

火山灰の顕微鏡写真

さらに人々の健康にも被害があるといいます。火山灰は、ただの灰ではなく、ガラスを多く含んでいます。吸い込めば、口や鼻などの粘膜を傷つけます。激しいせきが出たり、喉の痛みを感じ、目に入れば角膜を傷つける恐れがあります。

内閣府による試算によると、富士山噴火によって首都圏が被る被害額は2兆5千億円に及ぶと言われています。しかし考慮に入ってない要素も多く、被害額はさらに大きくなる可能性があります。例えば、火力発電所や上下水道、送電線の被害や、細かい火山灰がパソコンや自動車などあらゆる機械に入り込んで与える影響も懸念されています。

※「明日をまもるナビ」では、富士山噴火による火山灰の被害と対策について、さらに詳しく秋にあらためて放送する予定です。

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桜島の火山灰対策