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いつか必ず噴火する!?徹底検証 富士山噴火(1)

日本は狭い国土に活火山が集中する火山大国です。なかでも、特に警戒されている火山が、富士山です。過去に何度も噴火をした活火山で、いつ噴火してもおかしくありません。今年3月、富士山噴火のハザードマップが17年ぶりに改定され、火山被害が、より速く、より広範囲にわたることがわかってきました。いつか必ずおとずれるともいわれる富士山の噴火。そのときに備え、どうすればいいか、考えましょう。

この記事は、明日をまもるナビ「徹底検証 富士山噴火」(2021年9月12日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、改定された富士山噴火ハザードマップでは…
▼「溶岩流」これまでの想定より、より早く、より遠くに
▼「火砕流」これまでの想定より、北東と南西方向に到達範囲広がる


富士山は“いつか必ず噴火する”

「富士山は必ず噴火します。富士山は非常に若い活火山なんです。人間に例えたら10歳とか20歳ぐらい。これからもっと活発化すると思ったほうがいい」。

こう話すのは火山噴火予知連絡会の元会長で、山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さんです。

富士山の最後の噴火は今から約300年前の江戸時代、1707年の「宝永噴火」。それ以来噴火していません。一方で5,600年前から今までに噴火した回数は180回を超えていて、平均で30年に1回噴火していたことがわかっています。

「その10倍の期間休んでいるということは、次に来る噴火は大きなものになる可能性があると思わなければいけない。そのために備えておいたほうがいいです」と藤井さんは警鐘を鳴らしています。

山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さん
山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さん

17年ぶりに改定された噴火想定

活火山である富士山。その噴火想定が今年2021年3月、17年ぶりに改定されました。まとめたのは、静岡、山梨、神奈川の3県などでつくる「富士山火山防災対策協議会」の火山の専門家らでつくる富士山ハザードマップ(改訂版)検討委員会。委員長は藤井敏嗣さんです。

ピンク色が噴火の可能性があるエリア。赤色は火口から流れ出す溶岩流の範囲
ピンク色が噴火の可能性があるエリア。赤色は火口から流れ出す溶岩流の範囲

今年の改定では、噴火の可能性があるエリアが広がり、溶岩流の到達範囲に新たに12の市や町が加えられ、従来の2県15市町村から3県27市町村に拡大し、神奈川県が新たに加えられています。

加えられたのは静岡県の2市1町(静岡市清水区、沼津市、清水町)、山梨県の2市(大月市、上野原市)、神奈川県の3市4町(相模原市、南足柄市、小田原市、山北町、開成町、松田町、大井町)です。

今回の改定作業を中心となって進めてきたのが藤井さんです。

「2004年のハザードマップ発表後、どこに火口があるのか、その火口がいつ活動したのか、溶岩流は何年前のものなのかをきちんと調べ上げた結果、火口が2004年に想定した時よりも、もっと市街地に向かって広がっていることが発表されました。それに基づいてハザードマップも見直さなければいけない。それが最大のポイントです」(藤井さん)

▼改定されたハザードマップはこちら
山梨県 富士山ハザードマップ(令和3年3月改定)
静岡県 富士山ハザードマップ(令和3年3月改定)
※NHKサイトを離れます


富士山ハザードマップの改定ポイント① 溶岩流

17年ぶりに改定された富士山噴火のハザードマップ。見直された項目の一つが“溶岩流”です。溶岩流とは、火口から流れた非常に高温のマグマが地表を流れる現象です。溶岩流が到達する可能性のある範囲が広げられ、さらにその到達時間も短くなりました。

新たに見つかった雁ノ穴火口の一部
新たに見つかった雁ノ穴火口の一部

そのきっかけのひとつが山梨県富士吉田市にある北富士演習場内の森の中にありました。「雁ノ穴(がんのあな)火口」と呼ばれる場所で、およそ1500年前の富士山の噴火口であることが近年の研究でわかってきました。長さはおよそ500メートル。この火口から市街地までの距離はわずか2キロに過ぎません。

赤色立体地図で火口の場所がはっきりと
赤色立体地図で火口の場所がはっきりと

地形だけを浮かび上がらせた“赤色立体地図”を見ると、雁ノ穴火口のほかにもたくさんの噴火口があるのがわかります。

雁ノ穴火口の噴火からおよそ300年後。平安時代に起こった「貞観(じょうがん)噴火」では、大量の溶岩が流れ出ました。その溶岩の大地の上に長い年月をかけて再生した森こそ、富士山の北西に広がる青木ヶ原樹海なのです。
平安時代の歴史書「日本三大実録」にはこの噴火の巨大さが記されています。溶岩の量は、資料に残る富士山の噴火では最大といわれ、これまでは約7億立方メートルとされていました。しかし、最新の研究で推定溶岩量はさらに増え、約13億立方メートルとなったのです。

貞観噴火で流れ出した溶岩
貞観噴火で流れ出した溶岩

藤井さんは貞観噴火の溶岩の量が大幅に増えたこと、さらに新たな火口が見つかったことで、新しいハザードマップでは、溶岩流がより早く、より遠くに到達するという見直しにつながったといいます。


富士山ハザードマップの改定ポイント② 火砕流

ハザードマップの改定では、“火砕流”についても大きな見直しがされました。

火砕流とは、火山灰や大小の岩石が、高温の火山ガスと共に時速80キロ以上で斜面を流れ下る現象です。

火砕流

噴火の噴出物について調査を続けている富士山科学研究所の馬場章さんが、3年前に見つけた痕跡は、火砕流堆積物が15メートルもの高さまで積もっています。炭化した木片に含まれる炭素の年代測定などから、西暦600年代、飛鳥時代の火砕流であることがわかりました。堆積物は幅700メートル、長さ3.6キロに渡って広がっていて、推定された堆積物の量は、東京ドーム10杯分にあたる1240万立方メートル。これまでの想定で最大とされていた量のおよそ5倍に及びます。

堆積物が15メートルもの高さまで積もっている

こうした研究をもとに新しいハザードマップでは、火砕流が到達する可能性のある範囲を北東方向と南西方向に広げています。

火砕流の到達範囲を示すハザードマップ
火砕流の到達範囲を示すハザードマップ

どこから噴火するかわからない富士山

火口がたくさんあるのは富士山の特徴のひとつです。これは日本列島を作っているプレートの運動と関係しています。

富士山とプレートの関係

富士山はユーラシアプレートという大陸プレートの上にのっています。そこへ南東の方からフィリピン海プレートが北西に向かって動いて、富士山がのっているプレートを押しています。両方から押された中心の弱いスポットへ、マグマが地下からこの隙間を埋めるように上がってきます。この方向に火口が集中しやすいのです。火口が出来る場所はマグマの上がり方によって変わり、どこに出来るかはわかりません。

富士山ハザードマップ(改定版)

今回改定された富士山溶岩流のハザードマップで特に注目すべきポイントは3つあります。

改訂された富士山溶岩流のハザードマップ
改訂された富士山溶岩流のハザードマップ
※一度の噴火で色のついたところ全てに被害が及ぶわけではありません

①溶岩の想定量が増えた
静岡県御殿場市では、これまで溶岩流の到達に10時間かかるとされていましたが、火口から出てくるマグマの量が多くなりそうだとわかり、2から3時間で到達する恐れが出てきました。

②市街地に近い火口が見つかった
山梨県富士吉田市では、新しく見つかった「雁ノ穴火口」との距離が近く、ここで噴火した場合には溶岩流は最短2時間で病院や老人ホームなどもある市街地に到達。

③交通の大動脈への影響も
静岡県側で噴火をした場合、駿河湾に向かって溶岩流が流れ、東名・新東名高速道路、東海道新幹線など東西をつなぐ交通の大動脈が分断される可能性があります。実際に東海道新幹線の三島駅のそばでは1万年前に流れ出した富士山の溶岩の跡を見ることができます。

溶岩流の到達範囲を示す立体模型
溶岩流の到達範囲を示す立体模型
※一度の噴火で色のついたところ全てに被害が及ぶわけではありません

溶岩が流れ出すとどのようになるのか、それをほうふつとさせることが2018年、ハワイ島キラウエア火山での爆発的な噴火で起きました。

2018年ハワイ島キラウエア火山の噴火

実は富士山でも全く同じことが平安時代に起こっています。「貞観噴火」です。

最近の調査の結果、貞観噴火では、キラウエア火山とほぼ同じ量の13億立方メートルの溶岩を出したことが明らかになっています。この溶岩量は、東京のJR山手線の内側を20メートルの厚さで均等に埋め立てるほどの膨大な量になります。

富士山周辺自治体のドリルマップ
富士山周辺自治体のドリルマップ

溶岩流を示したハザードマップを見ると、噴火口が出来る場所によって溶岩流が届く範囲は異なります。それぞれの地域別にシミュレーションを示した「ドリルマップ」が公開されています。

山梨県や静岡県のホームページで見ることができますので、災害対策にご活用ください。

▼「ドリルマップ」もこちらのサイトからご覧ください
山梨県 富士山ハザードマップ(令和3年3月改定)
https://www.pref.yamanashi.jp/kazan/hazardmap.html
静岡県 富士山ハザードマップ(令和3年3月改定)
https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/fujisanhazardmap.html
※NHKサイトを離れます


溶岩流到達地域の対応は?

ハザードマップの改定により溶岩流の到達地点に追加された自治体では、どのように受け止めているのでしょうか?

富士山の北東、およそ50キロに位置する山梨県上野原市。溶岩の噴出量などを見直し、シミュレーションした結果、場合によっては、溶岩流は桂川の周辺を伝って、153時間で上野原市に到達する見込みとなりました。

富士山と上野原市の位置関係
富士山と上野原市の位置関係

上野原市は、噴火の際、より富士山に近い忍野村の住民の避難を受け入れる取り決めをしています。しかし、市の防災担当者は「逆に今度は上野原市が避難をしないといけない状況になるので、こういった覚書も今後見直しが必要になると思う」と説明しています。

富士山のふもとに位置する富士吉田市では、溶岩流が最短2時間で到達する可能性があることがわかってきました。中でも大きな課題となっているのが、高齢者など災害弱者の避難です。

災害弱者の避難が噴火時の大きな課題に
災害弱者の避難が噴火時の大きな課題に

市街地にあるこの特別養護老人ホームでは3年前、富士吉田市と合同で、噴火を想定した避難訓練を行いました。寝たきりの利用者が、外にある避難車両に移るまでに要した時間は、1人30分ほど。車に乗せるのに6人の職員が必要だった場面もあり、想定していた以上に時間がかかったといいます。

富士吉田市役所にある“富士山火山対策室”では、ハザードマップの改定を受けて、噴火が起きた際のリスクを市民に正しく知ってもらおうと、説明会を開催しました。さらに市内の高校などに出向き、未来の地域防災を担う若い世代への啓発活動を行っています。

協定締結式に臨む境町と山北町の町長
協定締結式に臨む境町と山北町の町長

新しいハザードマップで溶岩流が33時間後に到達するとされた神奈川県の山北町は、150キロ離れた茨城県境町との災害時の相互協定を今年5月に結びました。利根川流域にある境町の洪水など、お互いに大きな災害が起きた場合の支援や職員の派遣、避難者の受け入れなども加えた協定です。

この両町の連携のきっかけは、数年前にある会合で町長同士が隣同士の席になり、交流が続いていたこと。今回のハザードマップ改定を受けて、境町から連携できないかとの申し入れがあったそうです。

取材した二宮徹NHK解説委員は「防災は顔の見える関係からとよくいいますが、それが本当に実を結んだ好例」と紹介しています。

次の記事、富士山噴火(2)はこちら

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