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津波を知って津波に備える(1)「 “逃げない自分” を知ること」が備えの第一歩

多くの犠牲者を出した12年前の東日本大震災。千島海溝・日本海溝や南海トラフで発生が危惧される巨大地震では東日本大震災を上回る被害の想定も。私たちが命を守るためにどう備えればいいのか?皆さんは、“逃げない自分”について、知っていますか?

この記事は、明日をまもるナビ「津波を知って 津波に備える!」(2023年11月5日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

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沿岸部は要注意 津波の脅威とは?

世界全体のマグニチュード6以上の地震の2割が日本で起こっています。その原因が、日本の周辺にある4つのプレート、岩盤です。
海側のプレートが、陸側のプレートのほうに1年に数センチの速さで動いています。

日本周辺にある4つのプレートを示す地図

プレートの境界付近では、海側のプレートが陸側のプレートの下にもぐり込み、千島海溝日本海溝南海トラフと呼ばれる溝を海底に形づくっています。

そこでは陸側のプレートの先端部分が引きずり込まれ、ひずみが蓄積していきます。
そして限界を超えると元に戻ろうとしてずり上がり、地震が発生。海底が跳ね上がり、津波が起きるのです。

津波発生のメカニズムイメージ
津波発生のメカニズムイメージ
津波発生のメカニズムイメージ

日本周辺のプレートの境界付近では、数多くの地震が発生。2011年の東日本大震災のときなど、多くの津波を引き起こしてきました。

4つのプレートと近年発生した巨大地震の震源域
4つのプレートと近年発生した巨大地震の震源域

千島海溝・日本海溝で想定されている巨大地震が起きた場合、北海道沖から岩手県沖にかけ、東日本大震災を上回る津波が発生する可能性が指摘され、最大の高さは、多くの地域で30メートル近くが想定されています。

千島海溝と日本海溝

そして、「南海トラフ巨大地震」。東海から九州の沖合まで東西700キロに及ぶ南海トラフに沿って発生します。

この地域では、これまで100年から150年の周期でマグニチュード8クラスの巨大地震が発生してきました。それに伴い、大きな津波も発生すると見られています。

100年から150年の周期で起きたマグニチュード8クラスの巨大地震
100年から150年の周期で起きたマグニチュード8クラスの巨大地震

各地を襲う津波。想定される津波の最大の高さは、高知県の黒潮町で34.4メートル。静岡県下田市で33メートル。関東では神奈川県鎌倉市が10メートル

最大津波の高さ(想定)を示すグラフ

また、震源域が陸に近いため、地震発生から津波到達までの時間が短いことも特徴です。地域によっては、わずか2分で津波が押し寄せます。

津波による死者は、最悪の場合、東日本大震災の10倍以上となるおよそ23万人と推定されています。

津波が起こるのは太平洋側だけではなく、日本海側にも津波を伴う地震の発生が危惧されるところがあります。
今から40年前の1983年に起きた日本海中部地震、30年前の1993年の北海道南西沖地震による津波で大きな被害が出ています。

津波を伴う海溝型地震の発生領域は日本海側にも存在
津波を伴う海溝型地震の発生領域は日本海側にも存在

また1960年のチリ地震津波のように、日本のほぼ裏側の南米沖の南太平洋で起きた地震による津波が日本全域を襲ったこともありました。

日本の沿岸部はどこにいても津波の危険はあると考えるべきなのです」(東京大学大学院・片田さん)

■NHKアーカイブスでみる津波被害

「日本海中部地震」1983年5月26日
「1993年 北海道南西沖地震」1993年7月12日
「チリ地震津波 東北を襲う」1960年5月24日


実は難しい?津波からの避難

宮城県気仙沼市は、1896年の「明治三陸津波」で512人が亡くなり、その後の「昭和三陸津波」(1933年)や「チリ地震津波」(1960年)でも犠牲者が出ている津波の常襲地域で、住民の防災意識の非常に高い地域です。

東日本大震災の8年前の2003年に起きた宮城県沖地震では、沿岸部で震度5強から6弱の揺れがありました。この地震のあと、気仙沼市で行われた「避難」に関する調査です。

まず「避難したかどうか」を尋ねたところ、「実際に避難した」と答えた人は1.7パーセント。50人に1人に満たない結果でした。

気仙沼市民の津波避難率(2003年)「避難した」1.7パーセント

一方で、「津波が来ると思ったか?」との質問には、6割以上の人が「来ると思った」「来る可能性は高いと思った」と答えています。

「津波は来ると思ったか?」・来ると思った 25パーセント ・来る可能性は高いと思った 38パーセント ・どちらともいえない 27パーセント ・来る可能性は低いと思った 7パーセント ・来ないと思った 3パーセント

この調査に当たった東京大学大学院情報学環特任教授・片田敏孝さんは、この数字を次のように分析しています。

「気仙沼の住民が津波を意識していなかったわけではないのです。大半の人たちは津波に非常に警戒心を持たれたのは確かです。しかし、『津波が来るんじゃないか』と思ったことと、『自分の命の危険を感じたか』は、また別の話なのです」


避難を妨げる「正常性バイアス」

住民はどうしてそのような意識を持ったのか。
それは「正常性バイアス」という、誰もが持っている心の特性によるものだと片田さんはいいます。

「人間は自分にとって都合の悪い情報や、特に命の危険を伴うような情報を過小評価して、自分は大丈夫と思おうとする心の特性があります。実は非常に不安だけども、そのままの状態でいてしまう。これが『正常性バイアス』なのです。自分の命に関わる最初の情報を無視する傾向が強いんです」(片田さん)

自分の命に関わる最初の情報を無視する傾向が強い

調査では、1.7パーセントしか逃げなかった気仙沼の人たちでしたが、次に取った行動として、不安の中でも「津波が来るのかどうか」という次なる情報を探しに行ったことがわかっています。
テレビの前に座って津波情報を見たり、防災行政無線を確認したりなど、懸命に情報収集を行っていました。

「結果として見れば避難行動は行われていないが、決して防災意識が低いのではないのです」(片田さん)

■“逃げない自分”を知ることが備えの第一歩

片田さんは、「自分を知って、ひとまず逃げておこうと思える自分であること」が、本当の意味で津波に備えることだといいます。

「正常性バイアスで、大丈夫だと思いがちな自分。だけど、逃げていないのは事実だから、ひとまず逃げておこうという行動に移れるかどうかにかかってくる。津波の話をすると、みんな敵を知りたがるが、もっと知らなければいけないのは“己(おのれ)”のこと。本当の敵は自分なのかもしれません」

東京大学大学院情報学環特任教授・片田敏孝さん
東京大学大学院情報学環特任教授・片田敏孝さん

「津波警報が出ても、本当にその通りの津波が来ることは多くない。でも可能性があるのだから逃げておく。今回は来なくて良かったねと言って、また逃げる。それを繰り返した末に、“やっぱり逃げていてよかったね”になるのです」(片田さん)

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