明日をまもるナビ メニューへ移動 メインコンテンツへ移動

首都直下地震 その時あなたはどこに?(3)外出先で被災

今後30年で70%の確率で発生すると言われている「首都直下地震」。その時、あなたはどこにいるのか考えたことはありますか?もし車の運転中だったら?街を歩いていたら?地下街だったら?外出先で命を守るためにどう行動すべきか。最新の帰宅困難者対策も含めて、遭遇する状況ごとに知っておきたい対処法を学びます。

この記事は、明日をまもるナビ「首都直下地震 その時あなたはどこに?(3)外出先で被災」(2023年9月17日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

今年9月1日で関東大震災から100年。明日をまもるナビでは、3回にわたって「シリーズ首都直下地震 その時、あなたはどこに」をテーマにお伝えしています。今回は外出先で被災したらどうするかを考えていきます。

東京大学先端科学技術研究センター教授の廣井悠さんは、次のように指摘しています。

「外出先が自宅と違う点は、事前に自分で防災対策ができないこと。短時間でその場で臨機応変に安全を確保しないといけないので、事前にイメージしておくことがとても重要です」

東京大学先端科学技術研究センター教授の廣井悠さん
東京大学先端科学技術研究センター教授の廣井悠さん

「近隣の県から通勤や通学をする方が多い東京都心部。行政や経済の中心として、富も知識も人も“集まる”ことはメリットですが、災害時には人が集まることがデメリットになってしまう」ことに留意することが必要です。


車を運転していたらどうする?

多くの車が行きかう首都圏。ここで首都直下地震が起きたら、どんな状況になるのか?

道路やビル群の空撮

国の想定では、主に1981(昭和56)年以前の耐震基準で建てられた老朽化した建物が倒壊し、道路を寸断します。

老朽化した建物が倒壊

電柱が倒れ、看板が落下。がれきが道を塞ぎ、液状化によって通行できない区間が数多く発生するというのです。

がれきや液状化で交通マヒ

■運転中に地震があったら

もしあなたが車を運転していたら、どう行動すればいいのでしょうか?

一般道の場合

運転中に地震があったら

①左側に寄せて停車

国のガイドラインによれば、まず車を道路の左側に寄せて、停車させます。

左側に寄せて停車

②ラジオやスマホなどで情報収集

そして、カーラジオで地震の状況を把握。その情報や周囲の状況に応じ、待機するか、外に避難するかを判断してください。

ラジオやスマホなどで情報収集

③キーと連絡先を残し、車検証を持って避難

外に避難する場合は、車にキーを付けたまま、自分の連絡先を車内に置きます。そして、「車検証」を持ち、ドアをロックしない状態で車を置いて避難します。

キーと連絡先を残し、車検証を持って避難

「車検証」は、所有確認ができるだけでなく、さまざまな手続きをする際に必要となります。

高速道路の場合

①急ブレーキをかけるのは危険

一方、高速道路では地震が起きても、急ブレーキをかけることは非常に危険です。

急ブレーキをかけるのは危険

②ハザードランプを点灯させ、ゆっくり左側に停車

ハザードランプを付けながら、緩やかに速度を落とし、道路の左側に車を寄せて止めます。

ハザードランプを点灯させ、ゆっくり左側に停車

③巡回するパトロールカーの指示に従う

首都高では道路の安全確認にかかるのは3時間ほどといわれています。その間、ドライバーは車内で待機し、ラジオで状況を把握。その後、巡回してくるパトロールカーの指示に従ってください。


一般道でも高速でも左側に停車させる」。実はそれこそが私たちの命を救うのに必要不可欠な行動なのです。

「災害時は人命の救助が最優先。車1台だけでも残っていると、緊急自動車の通行が滞ってしまって、救助活動が遅れてしまう恐れがあります。“緊急自動車の通行の車線を空けること”をしっかりと認識していただきたい」(総務省消防庁・震災対策専門官 櫻井志男さん)


地震が起きた後の車について、よくある疑問をまとめました。

Q.いつ車を取りに行けるの?

A.「避難指示や通行規制などが解除されて、道路や周辺の安全が確認できたら」(櫻井さん)

車が移動されていた場合は、移動が可能なタイミングで、消防や警察から連絡が来ます。そのためにも車には電話番号など連絡先を残してください。

Q.高速道路でのトイレ問題は?

A. 「安全点検に3時間かかる見込み。パトロールカーが来るまではさらに時間がかかるので、携帯トイレを常備してください」(櫻井さん)

高速道路では安全が確認されるまで車内にとどまることが推奨されています。
「携帯トイレは私もバッグに入れています。コンパクトな持ち運び可能なものもあるし、100円ショップでも売っているのでぜひご準備ください」(塚原愛アナウンサー)

Q.バイクの場合どうすれば?

A.「バイクは車と同じです。一般道では左側に寄せて停車。キーを付けて連絡先を残して立ち去ってください」(櫻井さん)

とはいえ、車やバイクを置いてその場から逃げることに抵抗がある人は多いかもしれません。

東京大学先端科学技術研究センター教授の廣井悠さんが示したのは、東日本大震災が起きてから1時間後の都心部の交通渋滞を表したもの。赤い太いラインは、1時間に3キロ未満の“超ノロノロ渋滞”が起きたところです。

東日本大震災時の車道状況(再現)
東日本大震災時の車道状況(再現)

東日本大震災での東京は震度5強でした。もし震度6強や7が想定されている首都直下地震で一斉帰宅した場合どうなるかを表したシミュレーション(道路の破断なし、交通規制なし)を見ると、 “超ノロノロ渋滞”を表す赤いラインが増えています。

首都直下地震等 大規模災害時の車道状況(一斉帰宅した場合)
首都直下地震等 大規模災害時の車道状況(一斉帰宅した場合)

こうなると消防車も救急車も動けなくなります。そうならないために、廣井さんは「道路の“負担”を減らす」ことが鍵だといいます。

首都直下地震への備え(1)道路の負担を減らす

「緊急車両を通れる状態にするには、災害時は”道路の負担”を減らすこと。そして道路の容量をきちんと確保すること。それが命を助け、火災を消し、みんなの命を救うことにつながります」(廣井さん)


繁華街にいたらどうする?

人や建物が密集する繁華街。そこで大きな揺れに遭遇したら、どうすればいいのでしょうか?

首都直下地震 外出編 繁華街にいたらどうする?

防災士で日本防災士会理事の正谷絵美(まさたに・えみ)さんは、災害への備えや対処についてアドバイスしています。

「周りの景色を見ることが防災につながります」という正谷さん。林田理沙アナウンサーと一緒に渋谷の街を歩いて、危険な箇所を確認することにしました。(2020年3月取材)

林田理沙アナウンサーと防災士の正谷絵美さん(右)
林田理沙アナウンサーと防災士の正谷絵美さん(右)

まず、ビルが建ち並ぶ繁華街にある危険とは?
視線を上に向けると、そこには看板やライトがたくさんあることに気づきます。
「こういったものが落ちてくるかもしれないのです」(正谷さん)

繁華街にあるたくさんの看板やライト

2011年3月11日の東日本大震災では、看板や外壁がはがれ落ちました。
2005年3月の福岡県西方沖地震では、ビルの窓ガラスが割れて落下。けが人が出ました。

福岡県西方沖地震でビルから落下した窓ガラス
福岡県西方沖地震でビルから落下した窓ガラス

揺れたらビルの真下はとても危険。ビルから離れるべきですが、道幅が狭くて逃げる場所がない場合、どうすれば?
「揺れたら、耐震基準に準じたビルの中に逃げるのがいちばん安全です」(正谷さん)

危険なのは、ビルの下だけではありません。要注意なのがブロック塀です。老朽化した塀や基準を満たしていない塀は、大きな揺れで簡単に倒れます。揺れを感じたら、すぐに離れましょう。

2016年の熊本地震で倒壊したブロック塀
2016年の熊本地震で倒壊したブロック塀

揺れが収まったら、行く場所は自治体が指定する「避難場所」です。自治体が冊子やホームページなどで公開しています。

避難場所や避難所 自治体が冊子やホームページで公開

繁華街の中にある危険をまとめました。

繁華街にある危険 ブロック塀・自動販売機・ガラス・電柱・看板・室外機

「ふだんからこういう危険を頭の中に入れておきたい。できれば一人だけではなくて、いろんな視点が必要です。お子さんや高齢者の方の視点で街歩きをすることで、課題に気付くのではないかと思います」(東京大学先端科学技術研究センター・廣井さん)

大都市の駅周辺にいる時、巨大地震が発生したらどう行動すればよいのか。東京・渋谷駅周辺を例に詳しく解説した記事はこちら。

「エリア防災 生まれ変わるまちの機能を知ろう!」(2023年4月19日公開)
もし渋谷駅周辺で大地震にあったらどうする?

■地下街にいたらどうする?

繁華街以外で、店舗がたくさんあって、人が集まりやすい場所としては「地下街」もあります。

首都直下地震 外出編 地下街にいたらどうする?

地下は、一般的には揺れには強いと言われています。ただ、いろんな危険性もあります。
火災・天井からの落下物・ガス漏れ・浸水・津波の危険がないと分かるまでは、基本的に地上へ避難しましょう。


「群集事故」を避ける

繁華街や地下街で、地震の際にもう一つ非常に危険な要素になると考えられているのが「人」です。

2011年の東日本大震災当日の東京都内では、鉄道が全て止まり、駅周辺は人であふれ、大混乱に陥りました。特に歩道橋などは人が集中し、危険な状態に。道路は歩いて帰宅する人であふれて、車道を歩く人たちもいました。こうした帰宅困難者は首都圏で515万人に上ったと見られています。

東日本大震災時 都内の様子
東日本大震災時 都内の様子

これが首都直下地震になると、都市の構造物が大きく壊れ、火災が発生する中で帰宅することになり、大きなリスクが生じます。最悪の場合、命を落とす可能性も否定できません。

■地震時の帰宅リスク

①余震での落下物による被害
②火災に巻き込まれる
③人の一定以上の密集による”群集事故”に巻き込まれる

では、群集事故とはどのようなものなのでしょうか。

「将棋倒し」は、後ろの人が前の人を倒すなど“一方向”ですが、さらに過密状態のときに起きる「群集雪崩」は全方向の人が巻き込まれます。

「将棋倒し」は1方向のみ(1平方メートルあたり3~5人以上)「群集雪崩」は全方向(1平方メートルあたり10人以上)

2022年10月に韓国のソウル市の繁華街・イテウォンで起きた転倒事故では、159人が亡くなりました。2001年7月21日には、兵庫県明石市の花火大会で群集雪崩が発生。11人が死亡、247人が負傷しました。

密集状態で、人の体にはどのくらいの力が加わるのか。明石の事故の2年後に大阪工業大学特任教授の吉村英祐さんが実験を行いました。

群集雪崩が起きるとされる、1平方メートルあたり10人以上の状態が再現されました。実験では、1人あたり270キロもの力がかかっていることがわかりました。3人に1人が呼吸困難に陥ったといいます。

1人あたり270キロの圧力

「もともと東京には高密度という群集事故が起きやすい条件が、どこにでもそろっている。そういうリスクが、首都直下地震になると一斉に吹き出てくるのではないか」(吉村特任教授)

大阪工業大学特任教授・吉村英祐さん
大阪工業大学特任教授・吉村英祐さん

国の内閣府中央防災会議は、首都直下地震での帰宅困難者は、最大で800万人にのぼると推定しています。もし、群集雪崩が発生すれば、多数の被害者が出てしまうのです。

首都直下地震 帰宅困難者 推定最大800万人

街の中にいるときに注意しなければならないポイントは「群集事故を避ける」ことです。

首都直下地震への備え(2)群集事故を避ける

群集事故には、「将棋倒し」「群集雪崩」のほか「崩壊転落型」があります。

群集事故には「将棋倒し」「群集雪崩」「崩壊転落型」がある

「崩壊転落型」とは、橋の手すりや壁が人の圧力によって壊れ、そこから川に落ちたり、地面に叩きつけられたりするもの。
「関東大震災では橋から川に多くの人が落ちた記録もあります」(東京大学・廣井さん)

災害時には道路上のいろいろなものが壊れる上、雑踏の警備もないため、突発的に事故が起こりやすい問題もあります。

「人がいるところに行けば、安全で落ち着くかも」と思うのは、かえってリスクを高める行動になりかねません。他の人について行くことを「追従行動」といい、実は100年前の関東大震災でも見られて、群集事故が起きる原因になっています。

事故に巻き込まれないために、行ってはいけない「群集事故が起きやすい場所」があります。

群衆事故が起きやすい場所 ターミナル駅・歩道橋・橋

ターミナル駅は多くの人が交通情報を求めて集まってくるので、かなり高い確率で過密空間になることが予想されます。また、歩道橋や橋は逃げ場のない空間です。

「お子さんや高齢者は群集事故で被害に遭いやすいので、一緒にいる場合は、こういう場所にはなるべく行かないように気をつけながら、避難先に向かうのが正しい行動なのではないかと思います」(廣井さん)

外出時の3つ目の備えは「帰らない・迎えに行かない」です。

首都直下地震への備え(3)帰らない・迎えに行かない

「家族を心配して自宅に帰る、自分の家族を迎えに行く行為は、人間として家族として当たり前で、この感情だけは否定できません。ただ、それをみんながやってしまうと、大混雑や大渋滞が起こるのは、過密都市の宿命なのです」(廣井さん)

そのためには、いざというときにどうするか、あらかじめ家族で話し合って決めておくことが必要です。


地下空間を帰宅困難者対策に

「帰らない・迎えに行かない」対策の一つとして注目されているのが「地下空間」です。

火災や浸水などのリスクがなく安全が確認された後の地下スペースを、「揺れに強い」という利点を生かし、帰宅困難者対策に活用しようという取り組みが始まっています。

東京駅周辺の地下街

一般的に地震の揺れは、地下深くなるほど小さくなります。地震の時、地上の建物には巨大な力がかかりますが、地下の構造物は周囲の地盤と一緒に動くため、地上と比較して揺れが小さくなります。

地上と地下での揺れの大きさを比較

東京駅周辺に広がる地下街も帰宅困難者対策を進めています。地上のビル群と合わせ、多くの人を収容する計画です。
しかし、運用にあたって、東日本大震災の際に露呈した課題の解決が必要でした。

東京・丸の内にある大手不動産会社で、当時ビル安全管理室の室長だった久保人司さんは、およそ2500人の帰宅困難者を受け入れる指揮を執りました。

「(帰宅できずに)ただ立っている方、廊下にそのまま座っている方がいたので、もうこれはブルーシートを敷いて差し上げる時間だと。ビルの暖房を24時間運転、毛布・飲料水・非常食をお配りした」(久保さん)

東日本大震災当日の丸の内の地下街には多くの帰宅困難者が滞在
東日本大震災当日の丸の内の地下街には多くの帰宅困難者が滞在

帰宅困難者の数は想定以上。これに対応するには、「地区全体の連携」が必要という課題が浮かび上がりました。この地区は、地権者が多く、一元的に避難を統括する指揮系統がなかったのです。

もう一つが、「帰宅困難者への情報提供」です。
「個々に帰る方向も、帰ろうという意識も違う。とどまるのか、どこかへ移動するのか。移動先もどっちがいいのか。選択できるよう情報提供を行うことが必要」(大手不動産会社 澤部光太郎さん)

そこで2019年1月、東京駅周辺に地下空間をもつ企業が一堂に会し、バラバラに行ってきた防災を連携して進めることを決めました。

その際、地区で情報共有するために開発したのが「災害ダッシュボード」というシステムです。

災害ダッシュボード

①デジタルサイネージのモニターを採用

帰宅困難者に情報を伝えるツールとして、各所にあるデジタルサイネージのモニターを採用しました。

デジタルサイネージのモニターを採用

NHKや自治体・鉄道会社が発信する災害情報や交通機関の復旧状況を表示。また、千代田区と協定を結んだ帰宅困難者受入施設の位置情報が示され、色によって混雑具合も分かるようになっています。

NHKの災害情報や自治体・鉄道の公式SNS、帰宅困難者受入施設の位置情報を表示(デモ画面)

こうした情報を提供することで、人々の不安を少しでも解消しようと考えています。

スマホなどでも情報確認が可能
スマホなどでも情報確認が可能

②協定を結んだ巡回バスが病院へ運ぶ

さらにけが人などへの対応策も作りました。救急車がすぐ来ないことを想定し、協定を結んだ巡回バスが緊急車両となり、病院へ搬送する仕組みです。

協定を結んだ巡回バスが病院へ運ぶ

地下空間を使った帰宅困難者対策は、首都圏や他の地域の地下街でも進められています。

もし外出先で地震が起きたら…。首都直下地震に備えて、東京大学先端科学技術研究センター教授の廣井悠さんはこうまとめます。

「10万5000人が亡くなった関東大震災から100年が経ちます。いちばんの違いの一つが、都市の拡大です。非常時は集積の負の効果が非常に大きくなってしまいます。もう一つは、この100年間、首都圏は大きな地震の直撃を経験していないので、何が起きるかわからず、みんなが不安なのです。まずは、『周りの困っている人に声をかける』。お子さんや外国人、高齢者に声をかけ、そして『助け合う』。外出先だからこそ、ぜひやっていただきたいと思います」

東京大学先端科学技術研究センター教授の廣井悠さん
東京大学先端科学技術研究センター教授の廣井悠さん
こちらの記事や動画もあわせてチェック
帰宅困難 :命を守る対策は「帰らない」
避難場所の探し方 :東京・渋谷の事例から
車での避難 :知っておきたい「原則は徒歩」
NHK防災・命と暮らしを守るポータルサイト
NHK防災・命と暮らしを守るポータルサイト