この記事は、明日をまもるナビ「チャレンジ!BOSAIアクション5」(2023年7月23日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
今回は「チャレンジ!BOSAIアクション」の第5弾。これまで視聴者の皆さんが自ら防災力向上に向けてアクションを起こすヒントをお伝えしてきましたが、今回は夏休みに実践してほしい防災アクションをBOSAIキッズ団の皆さんと一緒にお伝えします。

防災の化身・ヤモリン博士(京都大学防災研究所 矢守克也教授)と一緒に楽しく勉強しましょう。

今回のテーマは「新たなツールで防災」。ツール(TOOL)とは「道具」のこと。
「番組でもさまざまな防災に役立つ道具を学んできましたが、今回はこれまでとはちょっと違うものを紹介していくのが狙いです」(ヤモリン博士)
最新ARで水害を疑似体験~ふだんともしもをつなぐ
新潟市の南西部、周囲に水田が広がる潟東(かたひがし)中学校。この日は、3年生を対象に、講師を招いて行う防災の授業が開かれました。
子どもたちに、「防災のことを考えたことある?」と聞いてみると、「あんまりない」、「家族とはそういう話題が出てこない」という答えが…。
講師を務めるのは、地元で活動する防災士の青柳麻紀さん。子どもたちの防災への関心が低いのは、“地域の特性”に関係があると考えています。
この地域は、かつて鎧潟(よろいがた)と呼ばれる湖でした。大雨で水がたまると、流れ出る河川がなかったために、水があふれて作物に大きな被害が出ていました。その後、干拓で広大な農地に生まれ変わり、排水や水路が整備されました。
青柳さんは「水害が減った」ことで、防災への関心が低くなったと感じています。

「災害を“自分のこと”としてとらえてほしい」。青柳さんは、水害をテーマに授業を進めます。
いざというとき、どんな被害になるのか?ハザードマップを見てもらうと…。中学校のある場所の浸水深を知って、生徒たちは驚いていました。
青柳さんはさらに水害の怖さを実感してもらうため、NHKとコラボして、浸水被害を疑似体験できる「ディザスター・スコープ」を準備しました。
拡張現実=ARの最新技術を使って、浸水の映像をCGで合成。画面上で、水の深さも変えることができます。
さっそく体験!この学校の浸水想定は最大で3メートル。その半分ほどの深さの設定でも…。
生徒「あれ、頭出ない」「やばいですね!大変よね!」「泳げないです!」
川の氾濫で想定される流木なども。怖さを体感しました。
ARで水害を疑似体験することで、生徒たちに災害に備える意識が芽生えたようです。
生徒の一人・笠原瑛人さんは、今回、疑似体験して学んだことを家族にも伝えたいといいます。笠原さんは祖父母も含めて7人家族。災害から命を守るため、向き合って話し合うことが大事だと感じたそうです。

ご両親もARを体験してみると…。
「こういう技術を使って自分の家がこうなったらと知っておくのはよいことですね」(お父さん)
「この辺は(水害が)少ないと言っても絶対ないとは限らないので、家族でどうしたらいいか相談しておくのは必要だと思いました」(お母さん)
「デジタルとかはおじいちゃん、おばあちゃんは疎いので、『やばいよ』というのを教えてあげたら、本当に水害になったときにいいんじゃないかと思う」(笠原瑛人さん)
■スタジオでもAR拡張現実を体験
スタジオではBOSAIキッズ団の皆さんもAR拡張現実を体験しました。
まず来美さんにタブレットを操作してもらって、水の流れが来た場合、どう見えるのかを体感してもらいます。
ヤモリン博士「大人でも水深50センチの高さだと歩けない。子どもだと20、30センチで歩きにくい。なるべく両手をあけ、傘ではなくリュックやレインコートを着て、こうなる前に逃げてください」
今度は楽くんが挑戦。水がにごって、下がどうなっているか見えません。
その場でしゃがみ込んで見てみると、足元の水中にはポリバケツが沈んでいました。
「本当の水害の時も、こういうものが浮いたり沈んだりしていて、歩くと危ない。洪水のときには、マンホールのふたも浮いて、穴に落ちてしまいます」(ヤモリン博士)
このような場合には「傘などをつえ代わりに足元を確認できる」ことを覚えておいてください。ただこの状態になる前に避難することが大事です。
■キーワードは「ふだんともしもをつなぐ」
ARの一番大きな特徴は、ふだん自分がいる場所が、もしものときにこんなになってしまうということを疑似体験できること。“ふだんの様子”と“もしもの様子”がミックスされてよく分かります。
「紙のハザードマップも大事なツールですが、ARは映像がリアルで、一歩進化した感じがしますね」(ヤモリン博士)
AR拡張現実を今ではさまざまな民間企業が開発したアプリがあります。ぜひ、こうしたツールを活用して、自分と周りの防災意識を高めてください。
マンガで伝承 “地震峠”と地域の若者たち~昔と今と未来をつなぐ
皆さんは「自然災害伝承碑」を見たことがありますか?
洪水になりやすい場所や、土砂崩れが起こりやすい場所。そういう弱点を持った場所で、昔、災害が起こったことがあることを石碑などで伝えています。
国土地理院では、このような「自然災害伝承碑」がどこにあるかを示す地図を作っています。今、分かっているだけで数はおよそ1900。一個一個のマークをクリックすると、伝承碑がどんな内容なのかがわかるようになっています。
【参考】
国土地理院「自然災害伝承碑」のホームページ
※NHKサイトを離れます
大事な伝承碑ですが、「伝承碑」という名前や、石碑に漢字がたくさん並んでいるのは、少しなじみにくいところがあります。
そこで、伝承を今風にアレンジして伝える活動をしている若者たちがいます。
マンガを描いているのは、相模原市の津久井高校のマンガ研究部。今、OBの大学生と一緒に100年前の関東大震災を題材に作品を描いています。
相模原市緑区には、地元の人たちから「地震峠」と呼ばれる場所があります。
関東大震災では神奈川県各地も激しい揺れに襲われました。この場所は山が崩れて土砂が堆積して小高い丘となったことから「地震峠」と呼ばれています。
ここで、小さい子どもを含む16人が犠牲になりました。そのうち8人は、行方不明のままです。

しかし、地震峠のことを地元の人に聞いてみると、長年住んでいても詳しく知らない人がほとんどです。
ここで起きたことを広く知って欲しいと活動する「地震峠を守る会」の秋本敏明さんは、当時の証言を遺族などから聞き、この被害と教訓を次の世代に伝えていきたいと考えています。
秋本さんたちの調査で、当時の状況が分かってきました。
「それぞれに皆さんがいろんな情報を持っている。その情報を共有すると思いも共有できます。つながって教えてもらって、自分も同じ思いになれるのが価値」(秋本さん)
広く情報を発信するためのツールとして、秋本さんが目をつけたのが「マンガ」。
趣旨に賛同したマンガ研究部の若者たちを、地震峠へ案内しました。

「実際に地震が起きて、土砂崩れで亡くなった方がいるんだなと実感させられました」(元マンガ研究部の大学生)
秋本さんたちの話を聞いて、100年前にこの場所で起きたことを、ありのままに描き始めました。

「ただマンガを描いてもらうだけではなくて、この思いを受け継いでもらい、すごくよかったと思います。私の期待が100だとしたら、あの子たちは何十倍にもして、活動してくれている」(地震峠を守る会・秋本さん)
今回、地震峠のマンガ制作に携わった高校生も思いを話してくれました。
「後世に語り継いでいきたいって話だったので、マンガという形でいろんな世代に伝わっていけばいいなと思います」(マンガ研究部の3年生)
過去の災害を伝えるマンガは、他にもたくさん出版されています。
中でも江戸時代に起こった大きな地震津波の教訓を伝える「稲むらの火」の物語は、フィリピンやインドネシアなどアジアの国々でも翻訳され読まれています。

■キーワードは「昔と今と未来をつなぐ」
「昔と今をつないでくれたのがあの伝承碑。昔の災害を今に伝えてくれているわけです。今度は皆さんなりのアクションで未来につないでいく。ぜひこれを新しい防災アクションにしてほしい。
ちょうど夏休みなので、自分たちの周りにある伝承碑を調べてみたらどうでしょう。その上で絵や音楽など、みなさんが得意な「何か」で伝えていくことを考えてみては」(ヤモリン博士)
歌とダンスで災害に備える~自分とみんなをつなぐ
NHK「みんなのうた」には、「こわがりヒーロー」という防災をテーマにした歌があります。この歌詞はヤモリン博士=矢守克也教授が監修しています。
今回は、大雨や台風が迫った時のための「水害編」を紹介します。
「普通は『怖がるな』『俺についてこい』というのがヒーローのイメージだと思いますが、ヘルメットに『こ』と書いてある、怖がりの『こ』なのです。防災だけは、強がっていてもダメ。災害には人間はなかなか勝てないので早く逃げようと誘うのが本当のヒーローです」(ヤモリン博士)

前回の放送では、夢さんと優樹くんが動画クリエイターでバレエダンサーのあたろーさんに振り付けを習いながら、「地震編」の歌詞の一部を自分たちなりに考えて歌とダンスを披露してくれました。
チャレンジ!BOSAIアクション4「こわがりヒーロー」になろう
「こわがりヒーロー」の歌とダンスにチャレンジしたいという小学校があります。
東京都足立区の長門小学校では、6年生が集まって防災の授業が行われました。
先生が「6月にあった災害を覚えていますか?」と話しかけます。
実は今年6月3日の大雨で、この小学校の身近に危険が迫っていました。学校は一級河川・中川からおよそ100メートルの位置。氾濫した際の浸水予測は、最大3メートルとされています。
6月3日未明、中川に「氾濫危険情報」がでました。でも、水害の危険を感じた人は多くなかったようです。

先生「それでは、ゲストのみなさんが来ています!」
ここで登場したのがBOSAIキッズ団!夢さんと優樹さんが応援団となって「こわがりヒーロー」の替え歌にチャレンジします。ダンスが得意なあたろーさんも応援に加わります!
グループに分かれて、それぞれのテーマを決めて、水害から命を守るための歌詞を考えます。
次は、ダンスの振り付け。考えた歌詞にポーズをつけて仕上げていきます。
さぁ!いよいよ、発表タイムです♪
それぞれのグループが自分たちで考えた歌詞とダンスを発表します。
3つのグループは、“いざというときの確認”の必要性を表現。ダンスの息もピッタリ!

そして、最後のグループの替え歌のテーマはズバリ「お金」!
「見どころはお金について真剣に考えたことです!」
①火のもとを確認!②やばい!財産が消える!③まだローンが残っているのに!④そんなのいいから逃げよう!
先生「財産はとっても大切ですよね、でも何がいちばん大切か改めて感じさせてくれるダンスでした!」
夢さん「みんな一生懸命、振りを覚えることからやってくれて、しかもみんなの年だから出てくるおもしろい案がすごく楽しかったです」
優樹さん「みんなすごく個性的でおもしろい案が集まっていて、楽しかったです」
「この地域は川が近いとのことで今回は水害の観点で歌詞を考えましたが、それぞれの地域の弱点や災害を考えて歌詞を作ってみるといいかもしれません!」(ヤモリン博士)
■キーワードは「自分とみんなをつなぐ」
「東日本大震災が起きた後に作られた、『花は咲く』という歌があります。同じ歌を共有することで、復興に向けて思いを一つにすることができます。これから起こるかもしれない災害についても、同じ歌、同じダンスで思いを一つに準備しましょうという気持ちになれます」(ヤモリン博士)
■BOSAIアクション チャレンジ報告動画も募集中!
「みんなで助かるために思いを一つにする。昔の人から思いを受け取る。それを工夫して伝えていくアクションすることが大事だとわかりました。この『チャレンジ!BOSAIアクション』で、ぜひ自分たちなりの表現でたくさんの動画をお寄せいただきたい」(ヤモリン博士)
この夏休み、皆さんもぜひそれぞれの“BOSAIアクション”にチャレンジしてみてください。
「チャレンジ報告動画」も募集中です!投稿された動画はHPなどで紹介します。「こわがりヒーロー」の歌詞を考えてもらってのダンス動画も大募集!
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