この記事は、明日をまもるナビ「チャレンジ!BOSAIアクション 第三弾」(2023年3月5日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
ぼうさい探検隊 小学生が実践!身の回りの発見から
▼「ぼうさい探検隊」とは?
「ぼうさい探検隊」は、子どもたちが楽しみながら自分が住むまちを探検し、まちにある防災・安全の施設や設備などを発見してマップにまとめる活動です。
毎年12月に審査が行われ、2022年度は22作品が選出されました。
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仲良し二人組が作った蓮田市洪水危険度マップ
今年度の応募作品1179点の中から、埼玉県蓮田市の小学生が作った、地元の洪水危険地帯のマップを紹介します。
市の中央を大きな元荒川(もとあらかわ)が流れる蓮田市。元荒川に流れ込む磯川(いそがわ)周辺のエリアは洪水のリスクが高く、何度も浸水被害が出ています。
蓮田市に住む小学4年生の蕪木陸(かぶらぎ・りく)くんと、小野統陽(おの・すばる)くんは、統陽くんの母親の勧めでマップづくりを始めました。

夏休みから始め、制作期間は3か月。この大作をどう作ったのか教えてもらいました。
①市の洪水ハザードマップを見て、どの場所が危険なのかを地図に書き込みます。
②地図に書いた危険箇所を現地調査
磯川沿いの住宅街の中に謎のくぼ地を発見。蓮田駅近くの元荒川付近のエリアでも、くぼ地の中に謎のパイプやポンプもあります。とりあえず写真に記録します。


③蓮田市役所でくぼ地や機械について質問
道路課の職員の説明で、ここがポンプを使った水害対策装置「排水機場」だとわかりました。機械は、大雨のときに小さな川から大きな元荒川に水を送る「排水ポンプ」。くぼ地は水をためる「調整池(ちょうせいち)」です。蓮田市のいたるところでこの排水機場が活躍し、洪水を防いでいます。

④現地調査や聞き取りでわかったことを地図に盛りこみ、完成!
最初は謎の存在だった機械やくぼ地の役割が、地域を守る大事な装置だと発見しました。

陸くんと統陽くんは、市役所の防災倉庫の中身なども調査して、いざ避難する時にはどう動くのかということもマップに書き込みました。

「ぼうさい探検隊」の審査員長をつとめる室﨑益輝(むろさき・よしてる)さん(兵庫県立大学特任教授)は、子どもたちが自分で考え、気がつくことが重要だと考えています。

BOSAIキッズ団もマップづくりに挑戦
“BOSAIキッズ団”の徳渕来美さんと鈴木楽くんもマップづくりに挑戦しました。
この「ぼうさい探検隊」のマップづくりは、専用のアプリで手軽にできます。二人はNHKのある渋谷を探検し、災害リスクを探りました。
①スタッフの指導のもと、出発前にハザードマップを使って、洪水リスクのある場所はタブレットの地図をなぞって登録します。
②実際にその場所に行ってみます。
そこにあったのは、お店やマンションなどが並ぶ、整備された遊歩道。見た感じでは危険そうに見えませんが…?
道を進むと、「防災倉庫」を発見。防災に関するものは写真に撮ってタブレットに記録します。


③どうして遊歩道に洪水リスクがあるのか、二人は渋谷区役所の防災課に聞きに行きました。
渋谷区防災課係長の宮島義隆さんの話によると、この場所には昔、川が流れていました。今でも道の下には水が流れ、下水道として使われています。雨が降るとあふれてしまう危険があり、洪水リスクが高いのです。
タブレットの地図と渋谷の古い地図を見比べた二人は、“ハザードマップでリスクの高い場所が、どこも昔は川だった”ことを発見しました。

渋谷駅の近くにも洪水が起きるかもしれない場所があるのを見つけた二人。心配して尋ねてみると…
「洪水が起きないように、渋谷駅の地下に25メートルプール13杯分くらいの雨水が入る貯留施設があります」(渋谷区防災課 月村美咲さん)
その話を聞いて、二人も一安心!

こうして、楽くん・来美さん二人で作った防災マップが完成しました!


▼ヤモリン博士(矢守克也教授)防災アクションのヒント
「まずは身の回りを調べてみよう!」
調べてみると発見があります。問題意識を持って調べて歩いてみて、気付いたことを地図にしてみましょう。

防災教育チャレンジプラン 取り組みが専門家のアドバイスで進化
▼「防災教育チャレンジプラン」とは?
「防災教育チャレンジプラン」は、防災教育に意欲的な団体・学校などから防災教育のプランを募集して選出し、その活動を1年にわたって支援します。
ほかの団体やアドバイザーとの交流やワークショップなどを行い、最後の活動報告会では取組の成果を発表してもらい、優れた取組を行った団体を表彰します。
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「2011team釜石小ぼうさい」の取り組み
2022年度に参加した12団体のうちの1つ、「2011team釜石小ぼうさい」が、この1年間、どのような活動を続けてきたのか見てみましょう。
東日本大震災で死者・行方不明者1000人以上という甚大な被害を受けた岩手県釜石市。
「2011team釜石小ぼうさい」のメンバーは、釜石小学校の元教職員や、震災を生き抜いた児童の有志です。代表を務める加藤孔子(かとう・こうこ)さんは、震災当時、釜石小学校の校長でした。
「防災教育チャレンジプラン」に参加を決めた理由を、加藤さんは次のように語っています。
「震災から11年がたって、人々の嘆きや悲しみが、みんなの記憶からなくなってしまっていると感じていた。まずそれを伝承したい」

釜石小では、東日本震災が起こる3年前から防災教育に力を注いでいました。そのおかげで184人の児童たちは全員、自主避難することができていました。
今回、参加当初のチャレンジ内容は、現在は大人になった元児童たちによる手記と、釜石小で行っていた防災教育を「このたねとばそ」というタイトルの本にまとめて出版するものでした。
そんな取り組みに、防災教育チャレンジプランの専門家からのアドバイスがありました。
「もっと若い人たちの実際の行動が何か出せないか?」(防災教育チャレンジプラン実行委員長 林春男さん)
「確かに、これだけだと大人の世界で終わってしまうかもしれない」と考えた加藤さんは、チャレンジプランの質を高めるため、釜石小の卒業生に連絡を取りました。
「本による記録」に加えて「語り部による生の体験談」で伝承することにしたのです。
震災当時、小学6年生だった篠原優斗(しのはら・ゆうと)さんは2022年8月に、小学生を集めたフィールドワークを行いました。
篠原さんは、海からおよそ300メートルの距離にある友人宅で遊んでいたときに震災が発生。そこから2通りの避難路がある中、自分たちで山へ向かうルートを選択し、避難した経験がありました。
当時、自分たちが何を考え、どう判断したのか。篠原さんは小学生に語り、津波から避難した実際の道のりを歩きました。そして、どのくらいのスピードで自分たちが走ったのかも、体感してもらいました。

パネルディカッションには、当時、小学3年生だった内金崎愛海(うちかねざき・あみ)さんも参加。グループディスカッションでは、災害の時に大切なことは何かを、子どもたちと一緒に考えました。

2か月後の中間報告会では、実行委員から「これだけで終わらせず、継続を考えてネット公開しては?」とのさらなるアドバイスがありました。
これを受けて、加藤さんはその後、釜石市鵜住居(うのすまい)にある「いのちをつなぐ未来館」のホームページで、本の内容を無料公開し、誰でも見られるようにしました。
こうして、当初のプランを実行委員とともにステップアップさせてきた「2011 team釜石小ぼうさい」。プランの達成度に加えて、「他の地域でも使える有用性」が高い評価を集め、「防災教育チャレンジプラン」2022年度の「大賞」に選ばれました。

愛知工業大学名電高等学校の取り組み
「特別賞」を受賞した愛知工業大学名電高等学校の皆さんにも話を聞きました。
取り組んだのは、「学校の避難ルートの見直しと改善」と「校舎のガラスの割れ方の調査」です。

避難ルートの見直しでは、階段を降りる人が混雑しないように、上から降りてくる生徒と合流する生徒の間に仕切りを作ることで、渦巻きのように流れていける方法を考えました。
ガラスの割れ方調査については、大学や企業の協力を得て、さまざまな種類のガラスを提供してもらい、一緒に実験を行いました。
▼ヤモリン博士(矢守教授)の防災アクションのヒント
「周りの人をうまく巻き込もう!」
高校生の皆さんが中心になって頑張ったおかげで、周りの大人たちや先生も防災アクションに向けたスイッチが入ります。
ぼうさい甲子園 より高い評価を目指して取り組む
▼「ぼうさい甲子園」とは?
「ぼうさい甲子園」は、阪神・淡路大震災の経験と教訓を未来につないでいくために、学校や地域で防災教育や防災活動に取り組んでいる子どもや学生を表彰します。
小学生、中学生、高校生、大学生、特別支援学校・団体の5部門があり、それぞれ部門ごとに表彰されます。毎年1月に表彰式・発表会を兵庫県公館で開催しています。
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和歌山県立熊野高校「Kumanoサポーターズリーダー」の活動
2022年度の高校生の部のグランプリに選ばれたのは、和歌山県立熊野高校「Kumano(くまの)サポーターズリーダー」の皆さんです。
Kumanoサポーターズリーダーは、高校生のボランティアクラブです。高齢者の見守りネットワークを作るなど、長年地域防災へ貢献している点が評価されました。
受賞につながった大きな理由が「AEDシート」です。
心停止した時に役立つAEDですが、服を脱がすことへの抵抗感で女性への使用率が低いことから、シートをかぶせた状態で使えるようにと、高校生たちが開発しました。

選考委員長の河田恵昭(かわた・よしあき)さん(人と防災未来センター長)は、AEDシート開発の自主性や、高齢者見守りの地域性などを評価したといいます。
「地域ネットワークの形で防災が進んでいます。理想的な形で防災活動が広がっていると評価しています」(河田さん)
●BOSAIキッズ団が熊野高校を訪問
“BOSAIキッズ団”の鈴木夢さんと大前優樹くんが和歌山県を訪れ、熊野高校の取り組みを直接見てきました。
二人は宮本さんたちにAEDシートの作り方を教わりました。
女性にAEDを使う時にためらわないようにと、このAEDシートにはいろいろな工夫が施されています。心臓の位置や電極パットをはる位置、体の中心線などの目印がついていて、心臓マッサージでどこを押せばいいのかも一目でわかります。
このシートは、近くの障害者の就労支援施設から「女性の利用者が多いため、ぜひ使いたい」と依頼がくるなど、熊野エリアで広まり始めています。すでに70か所以上に設置されていて、新たに240か所のお店や施設に置く計画も進められています。
●高校生の見守りボランティア
さらに、熊野高校の取り組みは、世代を超えた結びつきも作っています。
高校生が週に1回、町内の高齢者の家を回って日常生活や災害時の不安などを聞いています。
災害が起きた時の避難経路や、どう行動するかも一緒に確認するなど、いざという時にも高齢者が孤立しないように気を配っています。

●地元のジオパークもPR
さらに新しい取り組みも始まっています。それは地元の「ジオパーク」のPR活動です。熊野高校がある南紀熊野エリアは、自然から生み出された景観や文化を、観光や地域振興に活用することを目指す「日本ジオパーク」に認定されています。
高校生たちは、ジオパークをPRする動画の撮影や、ガイドの会の人たちに地元の歴史を学びながらツアーガイドを行っています。

▼ヤモリン博士(矢守教授)の防災アクションのヒント
「防災の周りにも目を向けよう!」
地域の風景や景観は災害と結びついていて、防災とも関係が深い。地域にたくさんいらっしゃる高齢者の方々と一緒に考えるという姿勢はすばらしいです。
ヤモリン博士のまとめ
どのキーワードにも「まわり」という言葉がありました。アクションには3つの「まわり」が大事だということを勉強できたと思います。
BOSAIアクション「チャレンジ報告動画」 募集中!
チャレンジ!BOSAIアクション、全国から報告動画が寄せられています。
投稿された動画はホームページで公開中!皆さんからの報告動画もお待ちしています。
「チャレンジ!BOSAIアクション」
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