この記事は、明日をまもるナビ「潜入!気象庁 予報や警報はどう出されるのか!」(2022年11月20日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。
これだけは知っておきたい、キキクル活用術
▼キキクルは大雨による災害発生の危険度がどの程度かを予測する情報。
▼危険度が1キロメートル単位で5段階に色分け表示されているため、ピンポイントでわかる。
▼もしもの場合にどう行動するか、事前にルールを各家庭で考えておくことが大事。
キキクルってどう使うの?
「キキクル」の認知度はまだ高くないのが実情ですが、現在の防災情報の中では非常に重要な役割を担うものです。
その使い方を、気象庁大気海洋部気象リスク対策課の坪井嘉宏さんに解説してもらいました。

「キキクルは「危機が来る」ということを表しています。大雨による災害発生の危険度がどの程度高まるかを予測する情報です」(坪井さん)
キキクルは気象庁のホームページで公開しています。パソコンやスマホで、いつでもアクセスできます。
情報は3種類。「土砂災害」「浸水害」「洪水害」から選ぶことができます。
過去30年のデータをもとに災害が起こる可能性を予測。危険度を5段階に色分けして地図上に表示します。1キロメートル単位で細かく表示され、危険度がピンポイントでわかります。
きめ細かな表示を使いこなそう 2017年九州北部豪雨を例に
過去の事例をもとに、具体的にキキクルの情報を見ていきましょう。
これは、2017年7月5日、福岡県朝倉市の河川の状況を表した洪水キキクルの画面です。
この日、朝倉市では、24時間の降水量が545ミリを記録。大雨により河川が氾濫、34人もの命が奪われる大災害となりました。
キキクルの赤い太い線は筑後川の洪水予報の状況を表示しています。警戒レベル3の「高齢者等避難」相当で、危険度が高まりつつある状況です。しかし、それよりも先に支流の赤谷川は黒く表示され、命に危険が及ぶような災害がすでに発生している可能性も高い状況を示しています。
黒く表示された赤谷川は氾濫し、多くの犠牲者が出ました。地域の中でも、筑後川と赤谷川では状況がかなり異なっていたのです。
「自分がいる場所にどういった災害が迫っているのか。気象庁が持つ危機感を速やかに把握できる情報です」(坪井さん)
キキクルの画面は10分ごとに更新。常に最新の情報を知ることができます。
民間の通知サービスを利用すれば、スマホやメールで情報を受け取れます。
地域を登録して、離れた家族や友人の危険度を知ることもできます。
「自ら避難の判断をしていただく、その材料に是非とも使ってほしい」(坪井さん)
キキクルは気象予報官からのメッセージ
キキクルの表示は、警戒レベルの色と同じで、色が濃くなるほど危険を表しています。紫は避難、黒は命を守る行動を呼びかけています。
かつて気象庁で天気予報に携わり、現在は気象情報の活用について研究している竹之内健介さん(香川大学創造工学部准教授)は、キキクルの活用法をこうアドバイスします。
「キキクルで危険を知るだけではなく、あらかじめどう行動するか、事前のルールを各家庭でぜひ考えておいていただきたい」

急な大雨や警報が出たら、気象庁のキキクルにアクセスして状況を確認しましょう。
最後に竹之内さんは気象情報に込められる気象予報官の思いをこう代弁しました。
「スマートフォンなどで見る気象情報の向こうに、気象のプロ集団である気象庁の長年の経験と技術、そしてたくさんの予報官の思いが詰まっていると思うと、情報の見方もちょっと変わるんじゃないでしょうか。まさにキキクルは皆さん一人ひとりに寄り添う予報官からのメッセージ。ぜひ大雨が降った時は活用していただきたい」
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