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【気象庁に潜入】気になる天気予報の仕組み!どうやって決めるの?

甚大な被害をもたらす自然の猛威を相手に、24時間立ち向かう組織。それが「気象庁」です。全国各地の気象を観測して災害の予兆を捉え、大切な暮らしや命を守る情報を発信しています。私たちがふだん目にする天気予報は、どう作られているのでしょうか?その舞台裏に迫ります!

この記事は、明日をまもるナビ「潜入!気象庁 予報や警報はどう出されるのか!」(2022年11月20日 NHK総合テレビ放送)の内容をもとに制作しています。

これだけは知っておきたい、気象庁の仕事の秘密
▼集めた膨大なデータを専用のスーパーコンピューターで解析。地球の大気の状態をシミュレーションし、未来の天気を予測する。
▼「アメダス」はおよそ17キロメートル四方に1か所。日本全国でおよそ1300か所設置している。
▼気象庁の降水予想の的中率は83%。


気象庁の仕事とは?

私たちがふだん目にしている天気予報は、どうやって作られているのか?
気象庁本庁を訪ねました。

気象庁本庁
気象庁本庁

気象庁は、虎ノ門(東京都港区)にある、最新の耐震構造を備えた真新しいビルにあります。2階には、気象科学館が一般公開されています。津波の発生を再現する模型や、クイズなどの体験型アトラクションがあり、防災に関する知識を楽しみながら身につけることができます。

気象科学館の展示
気象科学館の展示

気象庁に30年以上勤務するベテラン予報官の池田徹さんに、気象庁の仕事を解説してもらいます。

池田徹さん
池田徹さん

まず訪れたのは気象防災オペレーションルーム。通称、現業室です。気象庁の「心臓部」として、さまざまな気象観測システムの運用が行われています。24時間365日、5つの班が交代で勤務しています。

気象防災オペレーションルーム
気象防災オペレーションルーム

オペレーションルームの中央に、天気予報の「司令塔」があります。
「全国予報中枢は、各地の地方気象台に対して、これからこういう天気になると指示を出す発信源です」(池田さん)

24時間365日 5班交代制で勤務

まず、全国予報中枢の予報官が、天気予報の「全体のシナリオ」を作ります。これをふまえ、各地の地方気象台が地形や地域の特性を考慮して、予報や注意報を出していきます。

気象庁(全国予報中枢)→管区気象台(地方中枢)※沖縄気象台も含む→地方気象台(都道府県)


さまざまな観測機器でデータを収集・分析

天気予報を作る上で、必要不可欠なのが観測データの収集です。気象庁は全国の気象台など、およそ160か所に観測機器を設置しています。

地上気象観測の機器
地上気象観測の機器

こちらは雨量計です。どうやって雨の量を量るか、ご存じですか?雨が降ると内部の升に水がたまり、0.5ミリになると傾きます。この升が傾く回数を数えることで雨の量を観測します。例えば、1時間に10回傾いたら、雨量5ミリになります。

雨量計
雨量計

ほかにも、気象レーダーをはじめとするさまざまな機器を駆使して観測データを収集します。

気象レーダー/ウインドプロファイラ/アメダス
気象レーダー/ウインドプロファイラ/アメダス

さらに、宇宙からは気象衛星「ひまわり」が、陸上の観測網では観測できない海上などの場所も含めて、広い範囲の雲や水蒸気などの分布を観測します。

気象衛星「ひまわり」(イメージ図)
気象衛星「ひまわり」(イメージ図)

こうして集めた膨大なデータを、気象庁専用のスーパーコンピューターで解析します。その計算能力はなんと、1秒間に1京8000兆回!地球の大気の状態を再現し、シミュレーションを行うことで未来の天気を予測します。(数値予報モデル)

気象庁のスーパーコンピューター
数値予報モデル
気象庁のスーパーコンピューターと数値予報モデル

ただし、この計算だけで天気予報が完成するわけではありません。実は、スーパーコンピューターといえども、突然の大雨といった局地的な天気を予想するのは得意ではありません。

予報官の知識や経験を反映させることで、ようやく天気予報が世に出るのです。

「データを相手に仕事をしている感覚になることもあります。ただ、気象庁が発表する予報の向こうには、命の危険や財産を失う可能性のある人がいる。そういった利用者に使っていただくことを第一に考えて作業を進めるのが大事だと思っています」(池田さん)

予報官の知識と経験を反映

気象庁はこれ以外にもさまざまな観測機器で、気象だけでなく火山や地震などを幅広く観測しています。それらをまとめた図がこちらです。

気象庁の主な観測機器、設備
気象庁の主な観測機器、設備

よく天気予報で聞く「アメダス」は、いくつかの観測機器がセットになったもので、現在は降水量、風向・風速、気温、湿度を自動で観測しています。

およそ17キロメートル四方に1か所設置されているこのアメダス。東京の23区内には5か所にありますが、日本全国でおよそ何か所設置されているでしょうか?

正解は「およそ1300か所」。
この数が示すように、アメダスはまさに全国を網羅する気象観測で、非常に重要な観測装置の一つです。前線や低気圧の現象を地上の観測でしっかりと捉えることができるのです。


降水の的中率はどのくらい?

ところで、気象庁発表の天気予報のうち、「降水の的中率」は全国平均で何パーセントくらいでしょうか?

正解は「83%」。
かつて気象庁で天気予報に携わり、現在は気象情報の活用について研究している竹之内健介さん(香川大学創造工学部准教授)は、83%という数字について
「結構高い数字と思いますが、予報が外れて洗濯物が濡れたり、外出先で傘がなくて困ったりすると、悪いイメージが残るため、『的中率83%』と聞くと、そんなに高いのかと思われるかもしれないですね」と説明しています。

竹之内健介さん(香川大学創造工学部准教授)
竹之内健介さん(香川大学創造工学部准教授)

竹之内さんは、天気予報が外れたときには、「非常にへこみました」と当時を振り返っています。そんなときは反省会を開き、なぜ外してしまったのかを検証して次に生かしていたそうです。

「気象庁の予報官のそういった地道な努力が的中率の向上にもつながっています」(竹之内さん)

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