あしたブログ | あの日、そして明日へ

2020年12月11日 (金)

ラジコンカーおじさん 空に挑む

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近年すっかり身近になった、無人航空機「ドローン」。
ドローンで空撮された雄大な映像を見たことがある方も多いのではないでしょうか?
今、この最新技術を人命救助に活かそうと挑戦を続ける人がいます。

 


1.
ラジコンカー技術×ドローン
太陽光発電所のソーラーパネル点検
災害復旧現場の測量
▷農業現場の復興を手助け
2. 震災を経て、人命救助へ
3. 日本初!救助ドローンの夜間捜索訓練

※この記事は、番組「明日へつなげよう『ラジコンカーおじさん 空に挑む』」(20201115日 NHK総合テレビ放送)をもとに作成したものです。


1.     ラジコンカー技術×ドローン

主人公は、岩手県宮古市在住の ラジコンカーおじさんこと古舘裕三(ふるだて・ゆうぞう)さん。無線操縦カーレースの世界選手権に出たこともある達人です。

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古舘さんは、ラジコンカーで培った技術を活かしてドローンを仕事にしています。会社を立ち上げたのは3年前。ドローンに興味を持っていたラジコンカー仲間に声をかけて始まりました。現在はドローンを積んで各地を奔走する日々です。

「空飛ぶ産業革命」と呼ばれるほど活躍の場を広げているドローンを使って、古館さんたちがどんなことをしているのか、少しのぞいてみましょう!

▷太陽光発電所のソーラーパネル点検

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最初は、宮古市の北にある洋野町へ。冬でも晴れの日が多い地の利を生かして建設が進み、三陸の新たな産業として注目されている大規模太陽光発電所(メガソーラー)の点検です。熱に反応する赤外線カメラをドローンに取り付け、ソーラーパネルの上空50メートルから写真を撮影します。

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撮影した写真は、東京に本社を置く発電所の運営会社が解析。すると、発電ができていない部分は、太陽のエネルギーを電気に変えることができず熱として残っているため、他より熱くなっていることが分かります。写真から異常箇所を確認し、速やかに修理につなげることができるのです。人間が直に見回っていた点検作業も、ドローンなら20分の1の時間で完了!

 

▷災害復旧現場の測量

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古館さんの次の現場は、東日本大震災の津波被害を受け、去年台風にも見舞われた宮古市の崎山地区。測量をしようにも木やがれきが折り重なり人が立ち入るのは危険なため、土木建設会社から頼まれて特殊な測量作業を行います。古館さんは、空から地形の測量ができるレーザー計測器を載せたドローンを谷間に沿って飛行。毎秒60万点の地形データを集めていきます。そのデータを解析ソフトにかけると・・・

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たちまち谷間の断面図が描き出されました。地面とその上にある木の形までもがくっきりと見えています。これをもとに高精度な地図を表すことで、復旧工事の設計をより早く行えるようになりました。

 

▷農業現場の復興を手助け

raziozi07.jpg 塩害地域に建てられたトマト栽培ハウス

さらに古舘さんは、農業の復興に立ちはだかる課題解決にもドローンを活用しています。依頼を受けて訪れたのは陸前高田の農業用ハウス。津波による塩害で作物の生産が困難になった田畑に、復興資金を使って建てられた最新式のハウスで、土を使わずにトマトを栽培できます。しかし、夏場の室温が上がりすぎてトマトがうまく実らず、ハウス経営は5年連続で赤字となっていました。そこで、人が登ることが難しい農業用ハウスの屋根に、ドローンで遮光剤をまいてほしいと頼まれたのです。

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3週間後、厳しい暑さの中再びハウスを訪れてみると・・・なんと!遮光剤をまいたハウスの温度は、通常のハウスより3度も低いという結果に!この対策が功を奏し、今夏の収穫量は昨年の3倍に増えました。

 

2.     震災を経て、人命救助へ

震災前、古館さんの家は宮古市の海辺にあり、近くには両親と祖母が営むレストランやガソリンスタンドがありました。しかし、2011311日、津波がすべてをのみ込みました。古館さんは、出張から戻った翌日、家族の行方を捜すためにがれきの中を歩き続けたといいます。

(古館裕三さん)
「釘が刺さらないように足の裏に鉄板を入れたりして、歩いて(家族を)捜していたんですよね。人が入っていくと二次災害が起きるような状況の中で捜索をしていて、ドローンのようなものがもし当時あれば、もう少しできることがあったのかなという思いはありますね。」

古舘さんは、一緒に暮らしていた両親と祖母を失いました。

小学生のときに父の和男さんからクリスマスプレゼントでもらったのをきっかけに、どんどんラジコンカーにのめり込んでいった古館さん。和男さんもそんな古館さんの姿を見て、「いつかこれが仕事になったらいいな」と言っていたといいます。いま、その言葉は現実のものとなり、古館さんはさまざまなニーズに応えて地元の復興を支えながら、仲間とともにドローンを使った人命救助に挑んでいます。

(古舘裕三さん)
「震災前は、自分のことしか頭になくてラジコンしていたというか、自分中心的な考え方で生きてきて、震災後、ボランティアの皆さんなどいろいろな人と知り合って、自分たちも人に何かをしてもらうだけではダメだなと気付いたんです。」

raziozi09.jpg ドローンが上空から浮き輪を落とした瞬間

日本ではまだ実績がありませんが、海外では報告事例が出ています。オーストラリアでは、波にのまれた人をドローンが発見し、積んでいた浮き輪を投げ入れ、世界で初めて人命救助に成功しました。

日本でも4年前から、北海道で山の遭難者をいち早く救助するロボットコンテストが開かれており、古舘さんも毎年参加して技術を磨いてきました。全国的に山での遭難が増える傾向にある中、ドローンによる捜索への期待は高まっています。

今年は、これまでのような技術を競うコンテストではなく、実践的な夜間訓練を消防と一緒に行います。やはり、ドローンを使えば夜間も含めた24時間の捜索体制が組めるということが大きな利点です。戦略会議では、ドローンの新技術を試したいという提案が次々と上がりましたが、古舘さんの思いは異なっていました。

(古舘裕三さん)
「やっぱり大事なのは、我々が捜索できるということではなく、消防や自治体の方々にそのノウハウを落とし込んでいくことにあります。今まで行ってきたドローンでの捜索を、地元の人でもできるような形で標準化していきたいと思っています。」

話し合いの結果、過去のコンテストで有効だった技術に絞って、訓練に臨むことになりました。

 

3.     日本初!救助ドローンの夜間捜索訓練

raziozi10.jpg 地元の消防やドローンパイロットらが集結

そしていよいよ始まった北海道上士幌町での合同訓練。体温と同じぐらいの熱を発するようにカイロを貼った人形を、広さ300ヘクタールもの森の中において見つけ出そうというのです。夕方になると、地元の消防やドローンのパイロットを含めた50人が集結しました。

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古舘さんのチームも、農業で活用している自動操縦機能や赤外線カメラなど、培った技術を総動員して捜索します。

raziozi13.jpg 入力された飛行経路

あらかじめ入力した捜索経路に沿ってドローンを自動飛行。その間に撮影した赤外線写真を東京のチームが解析ソフトにかけると、わずかな熱源が抽出されました。古館さんは再び手動でルートを捜索。

raziozi14.jpg 赤外線カメラが人のような形の熱源をキャッチ!

すると、赤外線カメラが人のような形のわずかな熱源を捉えました!捜索開始からわずか1時間で、古舘さんの発見した熱源が遭難者である可能性が高いという判定が出て、詳しい位置情報が解析チームから届きました。

夜間の救助は二次災害の恐れがあるため原則行われませんが、今回は「安全が確保されるなら向かおう」という判断が下されました。消防を誘導するためのライトをドローンに取り付け、遭難現場と思われる座標の上空でホバリングしていると、その光を目印に消防の救助隊が到着。

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隊員はドローンの真下に遭難者を発見し、初の訓練は見事に成功!ドローンを活用した捜索の有効性が証明されました。

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(古舘裕三さん)
「安易な気持ちでドローンが見逃したら、その方は死んでしまう。あと1時間早く見つかったら助かったかもしれないけど、我々が見逃したから亡くなられたということは現実としてあり得るわけです。まだまだ無力だなと思いますので、謙虚に取り組んでいかないと。」

「大切な命を救いたい」その思いをドローンに託して、古舘さんの挑戦は続きます。