インタビュー

私はこれからもずっと“おしん”だと思いますが、それは本当にありがたいこと

私はこれからもずっと“おしん”だと思いますが、それは本当にありがたいこと

明治後期から昭和にかけて、山形の貧しい小作農一家に生まれた谷村しん(おしん)が、さまざまな苦難に遭いながらも商売で身を立てていく一代記「おしん」(昭和58年度)。日本のテレビドラマ史上最高の視聴率を記録し、世界70以上の国・地域でも放送されるなど、国内外で大きな人気を博した作品です。
そんなおしんの幼少時代を演じたのは、当時10歳の小林綾子さんでした。計6週の出演ながら、奉公に出るために筏(いかだ)で最上川を下るシーンなど、視聴者の記憶に残る演技で魅せた小林さん。4月から放送されている第100作「なつぞら」で朝ドラへ帰って来るにあたり、原点である「おしん」を振り返ってもらいました。

――「おしん」の視聴率は平均で52.6%、最高で62.9%と歴代の朝ドラでトップです。撮影当時、ここまでの国民的ドラマになると思っていましたか?

もちろん、思いもしませんでした。まさか36年が経った今でも、いろんなところで「おしん」の話をできるなんて……。私は当時10歳でしたが、周囲からの見られ方が一気に変わり、少し戸惑うほどでした。道を歩いても、電車に乗っても、車に乗っても「おしんだ!」と声をかけていただいて。年配の方々からは、「大変だったねぇ」「寒かったでしょう」なんて、すごくいたわっていただきました(笑)。

――おしんの苦難が、それだけリアルに感じられたのでしょうね。演じるのも大変だったのでは?

たしかに、最初の奉公先を飛び出して猛吹雪のなか行き倒れるシーンは大変でした。実際の雪山で、スタッフさんたちが大きな扇風機でスーパーのかごいっぱいの雪を飛ばしてくるんですよ(笑)。足下は素足に藁沓(わらぐつ)ですし、本当に寒かったですね。まつ毛も凍りました。
それが終わると、今度は脱走兵の俊作あんちゃん(中村雅俊)に助けられて、雪山で一緒に暮らすエピソードの撮影。雪山に泊まれる施設がなかったので、麓(ふもと)の旅館に泊まり、朝食を食べたら30分かけて雪山を登っていました。お昼になると山を下りて、温かい豚汁や芋煮をいただいて休憩したら、また登山(笑)。私の胸ぐらいまで雪が積もっていたので、なかなか大変でした。

――小林さんは当時10歳でしたが、おしんの境遇をどのように思っていましたか?

自分の生きている少し前に、こんなに大変な時代があったんだ……とは感じていました。「おしん」が生まれた明治は祖母の世代なので、それほど昔ではないんですよね。そして大人になってしみじみ、この時代の方々が一生懸命に頑張ったおかげで、今の日本があるんだなと感じています。
海外、特に途上国のみなさんが「おしん」を支持してくださるのも、これに近い感覚でしょうね。頑張れば成功できる、元気な国を作れるんだ、と夢を持てるドラマだと思います。

――「おしん」が放送された国を小林さんが訪ねると、熱烈に歓迎されるそうですね。

一昨年、再放送に合わせて久々にインドネシアへ伺ったときもすごかったです。年齢を重ねたので、私だと分かってもらえるのか不安でしたが、行ってみたら全然大丈夫。大歓迎してくださり、握手会も盛況でした。「セルフィ、オーケー!?」と言いながら、スマホ片手に肩を組んでくる方の多いこと(笑)。セルフィ(自撮り)の時代になっても「おしん」を好きでいてくださり、うれしかったですねぇ。
とあるミャンマーの女性との出会いも思い出深いです。その方は「おしん」を見て、頑張ろう、自立しようと思い、魚の行商を始めて今では3店舗を構えたそうで。「おしんに元気と力をもらいました」とおっしゃってくれました。海外の方の力にもなれる作品だったと思うと、改めて、携われたことがうれしいです。

――小林さん自身にとっては、「おしん」はどんな作品になっていますか?

宝物ですね。たぶん、私はこれからもずっと“おしん”だと思いますが、それは本当にありがたいこと。普遍的なテーマを持つ作品ですし、ずっと大事にしていきたいです。
「おしん」は、私の役者としてのベースでもあります。当時は「お芝居はいいからセリフを覚えてきてね」というスタッフさんの言葉を真に受けて、撮影が始まる前に6週分の台本を丸覚えしていて(笑)。セリフの不安がなくなったことで余裕が生まれ、演出の方がおっしゃったことを自分なりに解釈してお芝居ができたんです。この経験が大きな自信になりましたね。何か大変なことが起きても、「あれを乗り越えられたから大丈夫だ」と思えるようになりました。

――小林さんは、放送中の「なつぞら」へ出演されます。36年ぶりの朝ドラ出演はどんな気持ちですか?

朝ドラは、私にとって特別で大切なもの。また出られたらいいなぁと思っていたので、お声がけいただいて本当にうれしかったです。幼少時代のおしんを演じた私が、お母さん役ですよ……。
「なつぞら」の舞台が北海道と聞いたときは、「また雪の世界だ」と思いました(笑)。そして、自宅のセットに入ったらビックリ。土間、囲炉裏、むしろなど、全体的におんぼろで、おしんの生家とそっくりだったんです! まさか本当に帰って来るとは……。この場所ならよく知っているから大丈夫だ、と思いました(笑)。

※視聴率はビデオリサーチ調べ

第31作「おしん」
4月1日(月)から再放送!
[月~土] 午前7時15分~7時30分
<BSプレミアム> 全297回

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