2019年05月02日 (木)萩原浩司の一度は登ってみたい!日本の山「鳥海山」


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鳥海山 ~山を巡る水が作り出す景色~

 雑誌『山と溪谷』の編集長を務め、日本各地の山々を巡ってきた萩原浩司さんが「みちしる」の動画の中から、一度は訪ねてみたいおススメの山を紹介します。今回は、秋田県と山形県の県境にそびえる水豊かな山、「鳥海山」です。

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萩原浩司

 小学生の頃より父親に連れられて日光・那須の山々に親しみ、高校・大学時代は山岳部に所属。大学卒業後、山と溪谷社に入社し、『山と溪谷』『ROCK&SNOW』の編集長を歴任する。2013年からNHKBS1『実践!にっぽん百名山』のレギュラー解説者として出演。日本山岳会「山の日」事業委員会委員長。著書に『萩原編集長の山塾 実践!登山入門』『写真で読む山の名著』など。


鳥海山
 (2236m/秋田県・山形県)

 東北の名峰・鳥海山は、秋田と山形の県境にそびえる独立峰である。四方におだやかに裾野を広げた秀麗な山容は、麓に住む人々から出羽富士、庄内富士、秋田富士などと呼ばれて親しまれてきた。この山に降る雨や雪は豊かな伏流水となり、湧き水が田畑を潤して人々の暮らしを支え続けている。地元の人たちにとって、鳥海山は恵みの山なのである。

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鳥海山は独立峰として広く大きな裾野を持つ

 山麓を歩いてみると、いたるところに澄んだ水の流れがある。なかでも遊佐町の「丸池様」は、鳥海山から湧き出た水だけで満たされた池で、透明な水を通して池の底から水が湧き出る様子を見ることができる。エメラルドグリーンの神秘的な池そのものを地元の人たちはご神体と崇め、大切に守り続けてきた。近くを流れる牛渡川も清らかな伏流水を集め、澄んだ流れのなかには清流にしか育たないバイカモを見ることができる。地中から湧き出たばかりの水が恐るべき透明度をもって流れるさまは、まさに鳥海山の恵みを象徴しているといえるだろう。

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信仰の対象となっている丸池様。鳥海山の豊かな湧き水が神秘の池を作り上げた

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澄んだ湧き水が牛渡川の梅花藻(バイカモ)をはぐくんでいる

 鳥海山は、夏のお花畑と秋の紅葉を目当てに登る人が多い。ハクサンイチゲの群落を前景にして、残雪から少しだけ顔をのぞかせた鳥海湖、その奥に新山という鳥海山の観光ポスター的な景観が望めるのは6月中旬から7月初旬にかけての初夏。鳥海湖の雪がすっかり消える7月中旬から8月にかけての盛夏には、ニッコウキスゲの黄色が山肌を染める。そして9月中旬から10月中旬にかけては山腹のブナが金色に色づき、山全体が華やかな色彩に包まれる。色とりどりの花に恵まれ、豊かな森に守られた鳥海山の魅力は尽きることがない。

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5月初旬、鳥海山は春スキーの人気の山となる

 その一方で、鳥海山は山スキーが手軽に楽しめる山としても知られている。最もポピュラーな矢島口登山口は、5月の大型連休になると多くのスキーヤーが押し寄せる。鳥海山は裾野がゆったりした山なので、全体の傾斜もそれほど急ではない。この時期にはルートを示す竹竿が所々に立っているため、迷う心配も少ない。そんなわけで、鳥海山は山スキーの初心者でも安心して登れる山として、最近は人気を集めているようだ。

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山スキーを使って頂上をめざす

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日本海を左に見ながらスキーが楽しめるのも鳥海山の魅力だ

 また、この時期には麓の大物忌神社で例大祭が開かれる。鳥海山をご神体として祭る神社の、独特な祭礼を併せて鑑賞するのもまた、5月の鳥海山の楽しみ方といえるだろう。季節を変え、テーマを変えて何度でも訪れたくなる名峰、それが鳥海山なのである。

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山にまつわる神事が今も麓の人々によって守り継がれている

写真撮影:萩原浩司

投稿時間:11時00分


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