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連載コラム「お宝発見ニュース」

第15回 感謝状です!

こんにちは。発掘アーキビストの【あ】です。

毎日暑いですねっ!
私は体が頑丈なことが自慢だったのですが、川口アーカイブスの夏イベントの最中、生まれて初めて「熱中症」なるものにかかってしまいました。
今回のイベントは、これまでの最高記録を達成するほどたくさんのお客様にお越しいただいたのですが、「お宝発掘」のPRが十分にできませんでした。まあ、幸い症状は軽くて済みましたが、ちょっと残念です…

8月というのは"お宝"が見つかりやすい季節なのでしょうか。昨年の「『草燃える』全話発見」や、「テープ1万8千本の大量寄贈」もきっかけは8月でした。またうれしいことに今年も立て続けに、NHKの古い番組や戦時中の古い映像、あるいは台本などの提供のお申し出がありました。「8月=お盆=ご先祖様」と関係あるのでしょうか?それとも、8月に大掃除をなさる方が多いからなのでしょうか?

前橋局の外観

さて、本題です。昨年の8月に情報をいただいて以来、この欄でもたびたびご紹介してきた「群馬県桐生市の安部直広さんのコレクション」約1万8千本に収録されている番組のリスト〜「寄贈コンテンツ目録」〜が出来上がりました。

その結果、NHKの番組だけで、テレビ・ラジオ合わせて約9万タイトルの番組が収録されていることが分かりました。特にラジオに関して言えば、単純に計算するとこれまでのアーカイブス保存番組が一気に倍近くに増えてしまうことになります。もっとも、中には本放送と再放送2回収録しているものや、すでに保存のあるものもあり、最終的な数はもう少しへってしまうはずではあるのですが。

コンテンツ目録(上:テレビ分4冊、下:ラジオ分4冊)

「一区切りついたところで、"これだけの番組をお預かりしました"という報告として目録をお渡しするとともに、"感謝状"をさし上げてはどうだろう?」このプロジェクトに関わったメンバーからこんな提案が出され、贈呈について安部さんにご連絡差し上げたところ「こんな嬉しいことはない。何なら川口アーカイブスまで出向きますよ」と、相変わらずお元気なご様子。

安部さんは「川口まで出向く」と仰いましたが、さすがにそこまで甘えるわけにもいきません。また全部で3200ページにもなった目録を持ち帰るのも大ごとです。(荷物として送るというのも味気ないですし…)

出来上がったコンテンツ目録に目を通す安部さん夫妻感謝状の贈呈中村・前橋局長らと談笑する安部さん

NHK前橋放送局に連絡を取ると、「安部さんは群馬の誇り。前橋の番組にも出ていただきたいので、表彰式は前橋放送局を使ってください」と中村放送局長も大乗り気です。
安部さんご自身も「以前は、視聴覚教育の会合やら、通信教育(NHK学園)のお手伝いやらでしょっちゅう前橋放送局には行ってました。久しぶりに、なつかしい局舎を訪ねてみたい。」

そんな訳で、表彰式はNHK前橋放送局で行われることになりました。

8月9日、前日まで猛暑日が続いていた北関東地方ですが、この日は雨が降ったせいか、多少しのぎやすくなっていました。
安部さんは奥さまの運転するクルマで登場です。奥さま曰く「舞い上がって、事故でも起こされたら困りますしねえ。だから私が運転してきました(笑)」

まずは、出来上がった「寄贈コンテンツ目録」を見ていただきます。
安部さん「テープが1万8千本あったという連絡は【あ】さんから聞いていましたが、こうして活字になったものを見ていると、あらためてその"数"を実感します。自分で言うのも何ですが、ずいぶんすごいことをやっていたんですねえ」
奥さま 「これは私たちのもう一人の子どものようなものですね…」
安部さん「これのために家族で旅行に行くこともなかなかできなかったし、昼間の番組の収録のために、定時制での勤務を希望したり、いろいろ苦労をかけたしなあ」

奥さまは時折、目頭を押さえておられました。

そんなお話をうかがいつつ、いよいよ感謝状の授与です。プレゼンターはNHKアーカイブスからの感謝を伝えるために大路幹生ライツアーカイブスセンター長がつとめました。お二人のお顔を拝見していると、まるで引っ越し大作戦の様相を呈(てい)したあの日が思い出されます。

ラジオ番組に出演する安部さん(後ろ姿)

表彰式が終わると、次はラジオ番組の収録です。
収録の中で安部さんは、
「NHKへの思い」「NHK番組の素晴らしさ」をお話しいただくと同時に、「これだけ自分が番組を録りためてきたのは、過去のある時期まで、制作者であるNHKが、しっかり番組を保存してこなかったからである。当時のNHKがやらなかったから私がやったのです」と淡々とお話しくださいました。

多くの文化資産と同じく、放送番組の保存にはたいへんなコストがかかります。受信料で事業運営を行うNHKとしてはその時々の状況で難しい選択を強いられています。それは番組保存の仕組みが整っている現在でも変わりません。しかし、時代背景がかわり、かつては保存されずに終わった番組に視聴者の皆さんから熱い思いを寄せていただくことも多々あります。

視聴者の皆さんが放送局とはことなる視線で保存してきた映像や音声のテープなどをご提供いただき、アーカイブスに保存していくことにつけた「お宝発掘」という言葉は、やや軽い語感ではあるものの、その取り組みをポジティブに伝えていこう、視聴者の方にも強くアピールして協力していただこうと言う意味で選んだものです。

わたくし【あ】も、安部さんの言葉を聞きながら自分が番組制作者だったときを思い出し、番組を愛していただく視聴者の気持ちにあらためて頭が下がる思いでした。その一方で、安部さんが言われる通り、アーキビストとして、安部さんの言葉をしっかり胸に刻みつけて、これからも発掘事業に取り組んでいきたいと思います。

安部さん、本当にありがとうございました!

【あ】

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