No.261
2020.04.10
アニメ/人形劇
昭和43年、リアル人形劇『黒姫ものがたり』!
こちらの映像が今回の発掘番組。今から52年前、1968(昭和43)年お正月、元日の夕方に放送された子供たちへの“お年玉”のような人形劇『黒姫ものがたり』です。この人形劇の一番大きな特徴は、セットも演出もドラマのようにリアルだということです!
1968年度ミュンヘン国際テレビ青少年賞を受賞した作品。竹田人形座で当時人形操演を担当した鈴木友子さんからビデオテープを提供いただきました。
オープニングは、人形劇としては珍しくヘリコプターの空撮映像から始まります。語りは名調子でお馴染みの中西龍アナウンサー。
「信濃富士とも呼ばれる黒姫山。黒姫山は長野県と新潟県の県境にある。春の遅い信濃の山々は多くの伝説を秘めてひっそりと静まり返っている。黒姫山にも一つの伝説がある…
まだ自然と人間とが、それほど隔ての無かった遠い昔、この沼に住んでいた龍の若者と人間の姫にまつわる、昔々の物語である。」
★そして人形劇の世界に…
ジオラマのような黒姫山のセット、そして沼。実写よりもリアルに見えるから不思議です。
まず登場するのは動物たち…
リス、クマ、シカ、そしてカエル…、どの生き物も出来るだけ本物に近い動きを意識して人形を操作しているように思えます。
『糸操り(いとあやつり)』と呼ばれる、十数本の糸を上から操って人形を操作する伝統の人形劇で、操っている人間は最初から最後まで一切画面に出てきません。
★登場人物は…
森の奥、深い青い沼に住む龍の若者。彼は自分の気持ちをいつも笛の音に乗せて奏で、動物たちとも仲良く暮らしていました。
龍の若者は城に住む人間たちを嫌っています。森に狩りに来ては動物たちを殺していくからです。そんな彼が心を奪われてしまった女性…
城の姫です。彼女もまた、いつも笛を奏でています。
ヘビに化けて近づいてきた龍の若者に対しても優しい心をもって接し、狩りで動物たちが殺されることにも心を痛めていました。
その姫の父親、城主です。豪快で狩りが大好き!
この城主に龍の若者が「姫を妻にいただきたい」と願い出たことから物語は展開していきます。城主は可愛い娘を龍に取られまいと、次から次へと若者に難題を課します。
★絶壁に咲く白ゆりを…
龍では無く人として生きていくと誓った若者に対し、城主は「人ならば妻となる姫に花を贈らなければならない」と、城から8里離れた崖の上に咲く白ゆりを取って来いと命じます。
崖に続く吊り橋を渡る若者、しかし途中で切れてしまいます。龍の力をもってすれば空を舞って絶壁の白ゆりのもとへ飛ぶことも簡単ですが、人として生きていくことを約束した若者は龍の力は使いません。
絶体絶命のピンチに登場したのは森のサルたち、龍の若者を仲間たちで助けます!
★見どころたっぷり、結末は…?
人形操作はもちろんのこと、セットや小道具も注目ポイント、さらに…
終盤には大河ドラマさながらの火を使った迫真のシーンも登場します!いったいどんな大きさのセットや人形なのか?色んなことが気になりながら、あっという間の45分間あまりです。
★当時のお話が聞けました!
ビデオを提供してくれた鈴木友子さんは現在71歳、いまも現役で人形操演をされている鈴木さんに『黒姫ものがたり』制作のエピソードをうかがいました。
「東京都内の倉庫を借り切って1か月かけてセットを作りました。最後の火事のシーンは千葉県のグラウンドにセットを組んで燃やしながら撮影を続け、最後に燃え尽きる様子を撮影したんです。映画と同じように1シーンずつ丁寧に撮影していました。あれだけきめ細かい作品はもう作れないのではないでしょうか。ちなみに私は当時18歳で、動物たちなど主役級以外の人形を担当していました(笑)」
★竹田人形座といえば…
実は「発掘重点番組」の中の、『空中都市008』(1969年放送)や『プルルくん』(1970年放送)も竹田人形座が人形操作を担当していました。アーカイブスには『空中都市008』は1本だけ、『プルルくん』は全く保存がありません。鈴木さんが関係者の皆さんにも声をかけてくださったのですが、今のところ新たな発掘には至っていません。
現在は活動を休止している竹田人形座、鈴木さんはいまも竹の子会という人形劇団をはじめ各地で人形操演の指導を続けています。伝統の技や技術を残すためにも映像の発掘は極めて大切だと『黒姫ものがたり』の発掘からも感じます。
NHKならではの番組の一つ、“人形劇”の歴史を何とか発掘できるよう皆さん、ご協力をお願いいたします!