発掘ニュース

No.253

2019.12.13

ドキュメンタリー/教養

『女性手帳』発掘!どんな番組だったでしょうか?

今回の発掘番組は『女性手帳』。そのタイトルから番組内容を推測するのは難しいのですが、いったいどんな番組だったのかを探ってみましょう!

『女性手帳』は1967年から1982年まで放送された番組で、始まった年のNHK年鑑には次のように書かれています。

『女性手帳』総合 月~金 後1:25~2:15 新設 第1回放送 昭和42.4.10
▼編成企画としては『午後のひととき』の曜日別編成から1週間連続するシリーズ編成を考え、新しい形の教養講座番組とした。
▼番組の構成:①「ニュースの窓」、②「話の招待席」、③「ことばとわたし」、④「音楽」。
▼おもなシリーズ:「万葉のこころ」、「作品にみる明治の女性像」、「奥の細道を語る」、「川と文学」、「ことばとしつけ」ほか

平日のお昼過ぎに在宅している可能性が高い主婦を対象にした教養番組といったところでしょうか。ただ初期の『女性手帳』はアーカイブスに映像が残っておらず内容を確認することが出来ません。発掘された回は1970年代のもので、この説明とは少し番組構成が違います。たとえばこちら…

1973年放送の「陶芸口伝」という一週間です。陶芸家の加藤唐九郎さんをゲストに月曜から金曜まで毎日テーマを変えてインタビューをする演出。ちなみに(1)茶碗(2)陶壁(3)壺(4)陶片は語る(5)土と炎…というラインナップで、唐九郎さんが自分の作品作りや陶芸について5回にわたって語っています。名古屋市の「唐九郎陶芸記念館」で保管されていた録画テープを提供いただきました。

『女性手帳』の番組紹介の移り変わりをNHK年鑑で調べてみると…

【1971年】
家庭の婦人をおもな対象に、文学、美術から科学までの幅広いテーマで、1人の出演者に5回連続でわかりやすく話していただく教養番組。

【1974年】
文学、美術、歴史、科学などの分野からテーマを選び、新鮮な視点で解説する番組。シリーズごとに出演者の個性を引き出し、味わい深い内容とするように工夫。

【1980年】
家庭婦人向け教養番組。文学・芸術・科学・芸能など幅広いジャンルから各界一流のゲストに登場してもらい、新鮮な視点でその人物像と話題を浮き彫りにする。主として1人のゲストに5回連続して語ってもらい、その個性を十分引き出す。

というように、少しずつ言葉は違いますが70年代に入ってからは、
5回にわたってじっくり一人のゲストから話を聞くというのが共通した演出。
インタビュー番組として貴重な言葉が残されている可能性がある番組です。

発掘された2人の方の放送をご紹介しましょう。まず児童文学作家椋鳩十さん。5回にわたり語っている一週間、椋さんのご家族から提供いただいた映像です。

「奄美通いはアメリカから復帰した年からだからね、昭和28年ころからになるんじゃないかね。もう30回以上は行っとるね、もっと行っとるかもしれん。今は飛行機で行けるようになったでしょ、その頃は船で13時間以上揺れて行ってますからな。町の様子もずいぶん違っちゃった、奄美大島も近代的になりましたな。」

「こっちから船に乗っていくと朝着くんです。空の色がまことに南国というのはギランギラン光って、この辺の空とは違ってうんと空自身が華やか。そして海も色が違うね、全然。海の色が澄んで相当深い底まで見えるくらい。そして色が緑を帯びてるね。」

映画監督の木下惠介さんは、ご自分の作品で描いた「夫婦」や「母」を振り返りながら、自分自身が考える“理想像”を語っていきます。灯台守の夫婦を描き大ヒット作となった『喜びも悲しみも幾年月』がテーマとなった回では…

「灯台守の映画もそうですが、お互いを尊敬というと大げさですが、人間的に認め合っていればよいんです。仲の良い夫婦というのはしょっちゅう甘えあっているということでは無い。広瀬さんもそうだと思いますが、自分に対してだけの良い夫とは考えないんじゃないでしょうか。つまり誰かにやさしい言葉をかけてあげたり、子供が転びそうになった時に危ないって手を出したり、やっぱりうちの亭主はイイ人だと。…自分にだけ、ああしてくれた、こうしてくれないということで判断するものではなく、他との接し方で。」

こちらは浜松市にある「木下惠介記念館」からの提供でした、ありがとうございました。

平日のお昼過ぎの放送ということで、主婦の皆さんが一番の視聴者であろうと付けられた『女性手帳』というタイトル。実は平日午後のインタビュー番組で、各界で活躍する一線の皆さんの貴重な言葉を残す番組となりました。

しかし発掘された『女性手帳』はまだわずかです。皆さんのご自宅にも録画テープが残っていませんか?情報をお待ちしています!

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