No.240
2019.08.02
情報番組
昭和8年ラジオ放送をレコードで発掘!音源公開!
今回の発掘は、この1枚のレコードです!といっても、何か普通のレコードと様子が違いませんか?色も真っ黒ではありません。
確かによく見るとレコードの溝が見えます。これは『アルマイト盤』と呼ばれるレコードです。アルマイトとはアルミニウムの表面に特殊な処理を施して耐久性を増したもので、お弁当箱や給食の食器などでご存知の方もいるかと思います。
ラベルを見てみると赤字で『昭和8年8月7日 JOAKヨリ放送』と書かれています!JOAKとはラジオ放送をしていた当時の「東京放送局」つまりのちのNHKです。ラジオで放送した音源が録音されているということです!
内容を確認してみると、『防空演習』を前にした東京府知事・香坂昌康(こうさか まさやす)の演説でした。詳しい内容は是非お聞きいただきましょう!
では、デジタル化した86年前の音源。下の写真をクリックしてください!
約4分50秒です。
「各地において予行演習を重ねて待ちに待った本演習を、いよいよ明後9日より開催せらることになりましたことは誠に愉快に感ずる次第であります。今回の関東防空演習は一府四県にわたり、誠にその規模の大なる、今日までいまだかつて見ざるところであります。
(…中略)
非常の際における帝都民の心がけをただ一語をもって言い表したいと思います。いわく沈着にして機敏。私の挨拶はこれにて終わりです。」
いかがでしたか?86年前にアルマイト盤のレコードに録音された音で少し聞き取りづらい所もありますが、軍国主義に向かって進んでいこうとする日本の当時の様子を東京府知事の演説から垣間見ることができます。
このレコードを提供してくれたのはこちらの方!
三星 樹さん、現在21歳の大学4年生です。埼玉・川口のNHKアーカイブスまでレコードを届けてくれました!古いレコードを集めるのが趣味だという三星さん。
Q どうやってこのレコードを手に入れたのですか?
「地方のリサイクルショップを廻っていたとき、束になって売られていたSPレコードの中に偶然混ざっていました。普通のレコードよりも小型で厚みがないので、買ったときは他のレコードに埋もれていて気付かず、家に帰ってチェックしている時に発見しました。レーベルに書かれた“昭和8年”“JOAKヨリ放送”の文字を見て『これはとても貴重なモノなのでは』と思い、すぐに針を落として内容を確認したのを覚えています。」
三星さんが自分でデジタル化した機材
Q 実際に音を聞いてみていかがでしたか?
「聴く前は、私家録音なので雑音の中から微かに音が聞こえる程度だと思っていましたが、実際に聴いてみると荒削りながらも明瞭な音質でした。演説の中に『我々は実際の戦争に於いては我が海陸軍の絶大なる威力に依りまして帝都に敵機の来襲を見るが如きのことは絶対に此れ無きを信ずるものであります〜』という文句がありますが、その十数年後本当に帝都が空襲されることになるとは府知事も思わなかったのではないでしょうか。」
レコード収集が趣味だという三星さん、コレクションの一部はこちら!
左は蓄音機!もちろん現役、しかも3台もお持ちだとのこと。右はレコードコレクションのほんの一部。SPレコード400枚、EP・シングルレコード300枚、その他当時の歌詞カードなども収集しているそうです。
Q なぜ、古いレコードや蓄音機などに興味を持ち集めているのでしょうか?
「元々昭和の文化やモノに興味があったのですが、祖父母の家を整理してるときに祖父の遺品の蓄音機に触れたのが直接のキッカケです。最初は電気を使わずに音を出す不思議さに惹かれていましたが、次第に戦前の流行歌やジャズソングなどレコードの曲の方に興味が移り、ぼちぼち集めていたらいつの間にか部屋を圧迫するまでに(笑)」
Q どういうところで蓄音機などの機材やレコードを手に入れているのでしょうか?
「主に骨董市やリサイクルショップです。インターネットオークションも時たま利用しています。」
Q NHKのアーカイブスに登録させていただくことに関して何か感想があればお願いいたします。
「元々JOAK(NHK)が放送した音なので、寄贈というよりも落し物を拾って持ち主に返したような気持ちです(笑)」
Q 今後はどんなコレクションをしていきたいと考えていますか?
「貴重なレコードを手当たり次第に揃えるよりも、自分の好きな歌手のとっておきの1枚を時間をかけて見つけて行く、自分だけのコレクションを作りたいです。」
三星さん、貴重なラジオの音源を提供いただきありがとうございました!
もし今後も珍しい音源を発掘したら是非ご連絡ください。
86年前のラジオから流れていた音をお聞きになって皆さんはいかがでしたか?