発掘ニュース

No.103

2016.04.22

情報番組

珍しい!お天気専門番組を発掘

今回ご紹介するのは『テレビ気象台』というお天気専門の番組です。毎日、何度も目にする天気予報ですが、気象情報だけをメインに30分番組を放送したのはNHKでも初めてのことでした。現在、数本しか保存がないレアな番組です。

1981(昭和56)年から4年間にわたって教育テレビで放送。今回発掘されたのは1983年4月15日放送分です。司会をつとめるのは3月まで「あさが来た」の語りでお馴染みだった杉浦(清水)圭子アナウンサー(当時入局3年目!)、そして柳川喜郎記者です。

気象キャスターとしてNHKで活躍されていた宮澤清治さんがご意見番として出演。専門的な解説や週末の気象情報を担当しています。まだ気象予報士の資格が出来る以前のことです。

この日、最初の情報は…

今も風物詩として毎年ニュースでお目にかかる、大阪・造幣局の桜の通り抜けです。
清水アナ「今年は、桜の通り抜けが明治16年に始まってちょうど100周年ということで100種類のサクラをそろえました。」
記念の年のサクラだったのですね!今年(2016年)は133周年…造幣局のホームページによると、同じ数字の133品種のサクラが楽しめたそうで、4月8日から14日まで行われていました。

番組恒例だったのが一週間の天気を振り返るコーナー。
宮澤さん「今週の天気はちょうど梅雨のような、ぐずついた天気ですね。晴れたかと思うと一日くらいしか晴れないんですね。すぐまた雨になるということで、今年の春は天気がちょっと不順じゃないでしょうか。」

なんだか今年の4月の天気と似ているような…

この後、気象衛星ひまわりからの雲の写真を連続で動かします。1日8枚、6日間で8×6=48枚の写真で一週間の雲の動きを見せながら天気を解説します。今も連続写真で雲の動きを見せることはありますが、一週間続けてはなかなかありません。お天気マニアには嬉しい企画です!しかも宮澤さんの解説付き。

「10日の日曜日は日本付近を大きな雨雲が通りましてお花見には無情の雨となりました。11日には瀬戸内海に濃霧がかかりまして、空と海の交通が大変混乱しました。これから瀬戸内海ではこのような濃い霧がかかりますのでご注意が必要かと…」
といった感じで、雲の映像だけですが地上の様子が目に浮かんできます。

もちろん天気予報のコーナーも。一番目に留まったのは予報の画面、時代を感じます!

それまではマグネットの天気マークを日本地図に貼り付けて、カメラで撮影するという方式だったものがコンピューターを使った画面に変わってまもなく、最新の技術でした!

そしてメインのコーナーでは毎回、天気に関係する社会現象などを取り上げて気象の面から科学的に分析します。

この日は…

「4月は6月、9月に続いて雨の多い季節です…」という始まりから、雨と車の危険性についての実験リポート。興味深かったのはコーナーをまとめるコメントです。

「車の性能が向上し、最近は雨で動かなくなるといったことはほとんど無くなりました。しかしそれだけに、空気圧やワイパーなど基本的な点検整備が忘れられがちになっています。日ごろの点検整備、そしてスピードは控えめに、十分な車間距離、昔から言い古されたことですが、基本に帰ることが結局雨の日の安全運転のカギのようです。」

雨で動かなくなることが…33年も経つと色んな技術が向上していますね!

さてこの「テレビ気象台」、さらに古い放送分が今から5年前に発掘・登録されていました!

1981年、つまり「テレビ気象台」が始まった年。初代の女性キャスターは広瀬久美子アナウンサー、気象解説は当時まだ気象庁の主任予報官だった倉嶋厚さんです。お二人ともお若い!

そしてメインコーナーは…

「7月14日はパリ祭、フランス革命の記念日です。この『テレビ気象台』でフランス革命の話を取り上げるといいますとちょっと奇異に思われる方もいるかもしれませんが、実は、フランス革命の背後には当時の天候というものがとても大きく関わりを持っていました。フランスからの磯村特派員のリポートをご覧ください。」

磯村特派員といえば…

そう!ニュースセンター9時でもお馴染みだったあの磯村尚徳さんです!
「こちらはご存知パリ郊外のベルサイユ宮殿でございます。きょうは夏だというのに小雨の混じる曇り空で気温はなんと12度たらず。大変に肌寒くて、日本でいえば初冬のような感じがいたします。

ここ数年のパリは、平年並みの気象がむしろ異常と思えるくらいの、いわば異常気象が定着した感じがいたします。…」

193年前に起きた嵐がフランス大革命を起こす引き金になった…という磯村特派員のリポートは続きます。

「大革命の起きた1年と1日前、1788年7月13日 には直径12~3センチもあるような大きなヒョウをともなった台風のような嵐がフランスの穀倉地帯を襲いまして、農作物が全滅するといったような大きな被害を与えました。」

この嵐の前には穀物の生育期にほとんど雨が降らなかったり、パリで真冬日が86日連続で続く記録的な寒さとなったり…異常気象の連続で寒さや凶作によってもたらされた苦しい庶民の暮らしがフランス大革命の原因のひとつであるというリポートです。

リポートの最後、磯村特派員は…
「スタジオの柳川記者は、私とニュースセンター9時をやった仲間なので私のクセをよく知っていると思いますが、最後に一言余計なことを言わせていただきます。…」
と言って磯村流のコラム風コメントを伝えます。

スタジオでは…?

「私は磯村特派員のクセを知らないので、ちょっと最後が分かりにくかったんですけれども。つまり…」
と、こちらは広瀬アナ独特の言葉で。柳川記者は…
「歴史は繰り返すんじゃないかということを、彼独特の表現でいったようですね。」

さらに世界の天気でパリの気温を伝えたあと…

柳川記者「パリが31度、今日はさすがの磯村さんもオーバー脱いだでしょうね。」
広瀬アナ「そうですね、キザにTシャツなどを着て…」

広瀬久美子アナの“ヒロクミ節”はこの頃から全開だったのですね…!(ちなみに磯村さんは『ちょっとキザですが』という著書をこの数年前に出版しています。)

教育テレビで放送されていた珍しいお天気専門の番組、『テレビ気象台』いかがでしたか?30年以上前から“異常気象”がこんな風に取り上げられていたこともに驚きましたが、番組の中のちょっとしたことに時代を感じたり発見のある発掘でした。

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