発掘ニュース

No.093

2016.02.12

情報番組

“人生を変えた一冊”、最終章!その2

いよいよ『若い広場』の「マイブック」、“人生を変えた一冊”のフィナーレです!

まずは、ムツゴロウの愛称でお馴染みの畑正憲さん。生物の研究者か小説家か迷った末に、小説家への道を選びました。しかし書くことが定まらず苦しい状況の中で、出会ったのが北杜夫さんの「どくとるマンボウ航海記」でした。

「僕は最低の状態にいながら、その本を読んでゲラゲラ笑った、ホントに笑いました。笑った後に、今度は本当にしみじみしました。なんでもない旅なのにね、本人の絶妙な語り口で読者をぐいぐい引っ張っていくわけです。笑わせ、感激させ連れて行くわけです。読み終わってそういうことに気がついたあとにね、僕はずーっと小説を書きたいと思った…。」

北杜夫さんの自由な作風が、既存の枠にとらわれない文学の幅広さを教えてくれたといいます。

「僕らが普通出す手紙、日記、それから単純な動物の素朴な記録、そんなのも全部文学になり得るんじゃなかろうか…そう思ったの。それを知ったら生きるのが楽しくなりましてね!これこそが自分の生きる道じゃなかろうかって考えましてね。」

児童文学で知られる灰谷健次郎さんは漫画を紹介!

「漫画をここで取り上げるというのは、なんかすごく場違いみたいな感じもせんでもないけど。だけどね、僕やっぱり漫画に対する偏見ってすごくあると思うのね。僕は漫画に対してすごく奥手なんだけど、“食わず嫌い”だったなぁと…。『浮浪雲(はぐれぐも)』なんて、ホンマ面白かった!」

紹介してくれたのは、幕末の江戸で暮らす家族を中心に、その人間模様をユーモアを交えて描いたジョージ秋山さんの「浮浪雲」。1973(昭和48)年にスタートし、今も連載され続けている作品です。

「なにか本音で描いているという気がするわけですね。ホントにふざけたことを描いているんだけど、ずいぶんリアリティーがあって。しかもすごく真実味というか、なんか人間のおかしさ悲しさ、本当らしさみたいなのがあるんです。」

芥川賞作家の中上健次さんは、意外にもサン=テグジュペリの童話「星の王子さま」を紹介してくれました。

「僕は高校時代も、高校を出たばっかりの時も無茶苦茶な男でね…。人が右って言えばすぐ左、人が真ん中って言えば後ろとか(笑)」

「ある意味で非常に恥ずかしいんだけどね…恥ずかしいんだけれど、やっぱり自分の一冊の本ていうとこれ(星の王子さま)を言いたいですね。

想像力を一番解放するジャンルの作品だと思うわけです。非常に透明な部分というのが、子供の心も打つし、大人が深読みもできるというのは、ちょっと稀有な本だと思うんです。

本当の気持ちを伝えたいという欲求がある…、童話はいっぺん書いてみたい。」

そしてラストはこの方!

「僕の専攻は、京都大学でイタリア文学をやっていたんです。そっちに入ったきっかけになった作品ですし、実はSFを書く一つのきっかけにもなっているんです。」

SF小説の巨匠・小松左京さんの一冊。13世紀から14世紀にかけてのイタリアの詩人・ダンテの「神曲」です。

「『神曲』というのは名前だけは有名なんですが、あまり読んだ人がいないんです。しかし僕が18歳の時に“地獄編”くらいは読めたので…。

スペースオペラ、宇宙もの、『スター・ウォーズ』みたいなところがあるんです。
つまり今のSFの原型になるような。宇宙論とか、探検ものとか、それと非常に高級な哲学みたいなものが含まれているところがあるので、多少難しいですけれども、そういうものも、とっついてみると今のSFと大変通じるものがあります。」


松尾衣里子リポーター 山本哲也アナウンサー  斉藤とも子さん
『ひるまえほっと~発掘!お宝番組』(1月15日放送)

山本哲也アナ「いやー小松左京さん、ダンテの『神曲』からスター・ウォーズ!」
斉藤とも子さん「わたしも今、初めて聞いたような気分です!」
松尾衣里子リポーター「発想の仕方が違いますよね、普通の人と!」

斉藤さん「灰谷さんの『浮浪雲』は嬉しかったんですよ…。
毎月、お一人の作家の選ばれた“人生を救ってくれた”というような重い4冊が送られて、プラス作家が書かれた本を一週間くらいで読まなきゃいけない…。難しい本が多かった中で『浮浪雲』。漫画!これだけは全部読めて、ホントに面白かったですし!」

「中上さんは、大きな立派なお身体で、書かれている本もハードなのに、『星の王子さま』を話される時の中上さんが、子供の私から見てもとてもチャーミングというか、細い目の奥がすごくキラキラと少年のような瞳で話されたのを、私はうっとり聞いていた気がするんです、あの時。」

山本アナ「作家の皆さんの知らない面を、斉藤さんが引き出してくれたっていう気がするんですけど?」
斉藤さん「引き出したというか、触れられたというのがすごく幸せでした。」
山本アナ「作家の方々にお話をうかがって、いま振り返ってみて活きていることって何でしょう?」
斉藤さん「その時は夢中で、正直覚えていなかったりするんですね。ところが何十年もたって人生の節々の何かあった時とかに、ふとあの作家の方があんなことおっしゃっていたなとか、とんでもないときに思い出したりするんですよ。そういうものをいただけたのは、私にとって宝です。」

この「マイブック」、もともとは斉藤とも子さんのお父さまが録画していたビデオテープをアーカイブスに提供いただいたところから始まりました。貴重な映像とともに斉藤さんのお話によって、巨匠の皆さんの言葉がさらに輝きを増した…そんな気がいたします。

斉藤さん、“お宝”の数々、そしてご出演、本当にありがとうございました!

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