発掘ニュース

No.079

2015.10.30

情報番組

世界の黒澤明監督が30回読んだ名作とは?

若き日の巨匠たちが語る“お気に入りの一冊”。

1978年から4年間にわたり教育テレビ「若い広場」の人気コーナーとして放送されたインタビュー『マイブック』。「ひるまえほっと」の『発掘!お宝番組』で再び特集されました!


山本哲也アナウンサー       松尾衣里子リポーター

聞き手だった女優の斉藤とも子さんからの発掘映像、そして巨匠たちの珠玉の言葉を、今回もご紹介してまいります。

まず小説家の開高健さん。サルトルの「嘔吐」について語りました。


開高健さん

「少年時代後半にたくさんの本を読みましたけれども、すきっ腹でね…食べるものが無くて。すきっ腹で本を読むと大変、本が応えてくるんです。これはその中で一番ショックを浴びせられた一冊で。長い間、その影響から抜けられなかったですね。」

スタジオでウイスキーグラスを傾けながらインタビューを受ける姿も印象的です。


寺山修司さん

「最初僕は、“啄木(タクボク)”って読めなくてね、“石川キツツキ”って読むのかな?なんて思っていたくらいで…」
と語り始めたのは、劇作家で歌人としても知られる寺山修司さん。石川啄木の短歌は3行で書かれ読みやすかったのが、自分も作り始めるきっかけになったとのこと。


山下洋輔さん

ジャズピアニストの山下洋輔さんは、ピアノを弾きながら“わらべ歌”を研究した本について語ります。

斉藤さん「(わらべ歌と)ジャズっていうと関係ないみたいだけど、どこか山下さんの中でつながっているんですね。」
山下さん「自分が自然にやり続けているうちに、中からつながっているものが一緒になって表現される日があるんじゃないか、という希望があるんです。」


北杜夫さん

「カモン、カモン、シットダウン、シットダウン!」
自宅で愛犬と一緒に出演した北杜夫さん。おすすめの一冊は…

手塚治虫さんの漫画・鉄腕アトムです。
「SFの基礎を築いた人ですね、手塚さんは。すごい科学知識とユーモアと博学と兼ね備えている素晴らしい漫画家です。大天才です。」


野坂昭如さん

小説家の野坂昭如さんが選んだのは、明治時代に書かれた樋口一葉の「にごりえ」
「枚数からすると、とっても短編だと思うんですよ。その短編の中にあれだけ凝縮してね、たとえば人間のあわれさというものを、あれほど美しく…なかにはスラスラ流れすぎているところもあるような気はするんですが。…僕なんかの小説は別にそれを真似しているわけではないし、とても一葉さんの才能に及ばないんですけどね。つい、ああいうように書いちゃうこともあるんです。」

『ピカソ画集』を取り上げ自分の原点を語ったのは、多方面で活躍した版画家で作家の池田満寿夫さん。


池田満寿夫さん

「僕はピカソからものすごく影響を受けてるからね。…青春時代って言うのはわけわからんけどね、やっぱりもの凄く力があるね。なんだろう?と思っているんですけど。不安と希望とが入り混じって…そういう力ってあらゆる芸術に必要なんじゃないかって。」


安部公房さん

小説家の安部公房さんは、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」を“絶対に読んでほしい”と力説しました。

斉藤さん「初めて読んだ小説だけど…なんか残ってるものがあるんですよね。」
安部さん「それは良い尺度だと思うよ。これを読んでつまんないと思った人は、その人の人生はきっとつまらないんだよ。あなたはこれ読んで面白かったんだから、あなたの人生はきっと豊かなんだと思って良いんじゃないかな。(笑)」
「ありがとうございます。」

10代のころ聞き手をつとめた斉藤とも子さんは…

「全身“耳”みたいな感じて聞いてました(笑)…編集が無いですから、全部、間があればそのまま放送されるんですよ、沈黙があれば。…皆さん、なんとかこの子に分からせようと思って一生懸命わかりやすく話してくださいました。」

そして最後にたっぷりお伝えしたのは世界的な映画監督・黒澤明さんの言葉です!


黒澤明さん

「こんなに何回も読んだ本ないんですよね。そうねぇ、今まで30回くらい読んだのかな。」
「全編を通してですか?!」

黒澤明さんの一冊はトルストイの「戦争と平和」。登場人物556人、2400ページのご存知超大作です。

「大変面白いんでね。例えばちょっと身体壊して寝るでしょ、するとこれを全部枕元に置くんですよね。最初からまた読み返すわけね。大体全部読むと大抵の病気は治りますよ。」

「分かっても分からなくても、有名な古典の作品ていうのは無理やり読みましたよね。そういう本を本屋でもって買うっていうこと自体がすごく感激的なことでね。」

「『影武者』(の撮影)の時も、これをいつでも読んでましたね。特に戦争の場面の描写なんかはずいぶんこれから学んだというのがたくさんありますよね。」

「あなたはこれ読んだ?」
「全部はまだ読んでないんです、途中までしか…。」
「全部読んでごらんなさいよ。こんな面白い話、無いんだから。そのうちまたなんかの機会があったら読んでいけば、だんだん色々深いところまで読めるようになるから。」

山本アナウンサー、最後に、斉藤さんにちょっと意地悪な質問!
「トルストイの『戦争と平和』全部読みましたか?」

「それがまだ読めてなくて…ゴメンナサーイ!」

さてさて、好評の「マイブック」で語る若き巨匠たち。1月にも第3弾を予定しています。遠藤周作さんや松本清張さん、井上ひさしさんなど、こちらも魅力的な皆さんばかりです!お楽しみに。

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