「未来からの挑戦」をはじめ、ＳＦ作品のイメージが強い少年ドラマシリーズですが、今回発掘された「白い峠」は違います！

1977（昭和52）年10月から12月にかけて、全20回放送された少年ドラマシリーズの一作品。完全発掘、映像も良い状態です。まずオープニングからご紹介しましょう！

1702年、元禄15年12月14日。赤穂浪士47名は吉良上野介の屋敷へ討ち入った。その中に2名の少年が含まれていた…
というナレーションから始まります。声の主は…

城達也さん！聞き惚れてしまう声です！

“白い峠”とは、塩の名産地である播州・赤穂と、京都や大阪を結ぶ鷹取峠（現在の高取峠）のことです。赤穂から運ぶ塩がこぼれ白く染まっていることから呼ばれるようになったといいます。

ドラマの舞台・赤穂は今の兵庫県、塩はもちろん赤穂浪士でもお馴染みです。
物語は、赤穂の藩主・浅野内匠頭が吉良上野介を斬りつけた刃傷事件によって、赤穂藩の家名断絶、領地没収が決まるところから始まります。

主人公は、赤穂藩の下級武士の息子・池田弦太郎（長谷川裕二さん）。主君、浅野内匠頭の仇討ちに加わりたいと信念を曲げませんが、まだ元服前で子供だということで皆に相手にされません。思いを寄せる町人の娘・千代を杉田かおるさんが演じています。

この弦太郎と対照的なのが兄の新之助。

仇討ちで死ぬことなど絶対にイヤ、酒を飲みバクチに明け暮れています。実はこの新之助役の佐山泰三さんから今回のビデオテープは提供いただきました！

現在の佐山さんのお話は後ほど…

この対照的な兄弟の父親・池田新左衛門を演じるのは谷啓さん！とってもイイ味を出しています！

シリアスなシーンの直後に「クスッ」と笑えるような演技が…。そして大事な場面では人生の先輩として息子たちに語りかけます！

あるときは…

「親は子供が考えているほど立派なことばかりしているわけではないんだ。どうだ、ガッカリしたか？こんな父親で…。ただ、人間、そういつもいつも気持ちを張りつめてばかりで生きておるわけではないんだ…。みんな同じ人間だ。」

またあるときは…

「おなじ刀でも、人間の立場によって重くもなれば軽くもなる。おなじ武士でも、重い武士もいれば軽い武士もいる。身分の上の者もおれば下の者もおる。おなじ刀をさしていてもそこが違うんだな…。」

いつも一直線に信念を貫こうとしてきた主人公・弦太郎は、父の言葉を聞いて…

「人間には立場によって正しいことが違う場合がある。いま、やっと分かったよ。」

少年ドラマシリーズに共通することですが、作り手の“子供たちへのメッセージ”がドラマの随所に散りばめられています。

大和田獏さん

出演者には、大和田獏さんや少年ドラマシリーズ「未来からの挑戦」に出演していたあの人たちも…！

手塚学さん　　　　　　　　　　　　　佐藤宏之さん

そう「未来からの挑戦」で関耕児役だった佐藤宏之さん、そしてラーメン屋の吉田一郎役の手塚学さん。「白い峠」では、主人公・弦太郎の友達を演じています。

物語は、藩の行く末に一喜一憂しながら自分たちは何をすべきか悩み続ける、子供たちの心の葛藤がひとつの見どころです。

主人公の弦太郎は、最初は主君の仇を討つために“命を捨てる”と熱い気持ちを皆にぶつけ続けますが、徐々に変わっていきます。その結末はお楽しみに…！

「番組公開ライブラリー」で皆さんにご覧いただけるよう作業を進めてまいります。

さて、このビデオテープを提供して下さった佐山泰三さんに登場していただきましょう！

佐山さん、今は劇場の経営とともに脚本や舞台の演出を手掛けています。

Ｑ　「白い峠」の思い出は？
「共演した杉田かおるちゃんをからかいながら収録に臨んでいた事を思い出しますね。当時、彼女はまだ幼くても民放ドラマではスターでしたから。」

Ｑ　どんな風にからかったのですか？（笑）
「好きな俳優さんは誰？とか聞くと素直に答えるんですよ、それが面白くて、その方の悪口を僕が言うと本気で怒ってしまうんです(笑)。それでも収録が終わりを迎える頃にはだいぶ打ち解けて本当の妹のような存在になってましたね。」

「僕が演じた少年ドラマ『白い峠』は、幕末における赤穂浪士の子供たちを題材にした文藝作品に近い内容でした。しかし放送された当時の時代背景は、スターウォーズの第1作が公開され新しい文化が日本に普及しようとしていた矢先の事でした。僕もああいうSF作品で少年ドラマに出演したかったんですけど…（笑）

今見返すと「白い峠」は面白く感じる部分に溢れています。どうか少年ドラマはSF作品だけではないという部分を感じて頂けたら嬉しいです。」

失われていた少年ドラマシリーズが、また一つアーカイブスに復活！佐山泰三さん、ありがとうございました！

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